平成20(2008)年度「展覧会・文化財を見てきました。」

4月7日
帝塚山大学附属博物館
 特別展示 描かれた仏教美術の世界―宝物図絵に込められた信仰と美の姿―
(4月7日~5月10日)
宝物図類と実物のパネルを組み合わせて展示。法隆寺宝物図(江戸時代~明治時代)、法隆寺面之図(江戸時代)、
正倉院御宝物図(明治時代)、醍醐寺三宝院并遍智院灌頂道具絵様寸尺等2巻(鎌倉時代本、江戸時代本)など。図
録なし。

4月12日
法隆寺大宝蔵殿
 平成20年 法隆寺秘宝展─斑鳩宮と東院伽藍─ 
 特別展示 飛鳥・白鳳時代の至宝
(3月20日~6月30日)
金堂四天王像(国宝)のうち持国天像・増長天像を展示。金銅仏の優品や蓮池図など盛りだくさん。玉虫厨子の復元模
型も展示。図録なし。金堂内陣須弥壇修理のため上御堂に移坐された釈迦三尊像(国宝)、薬師如来坐像(国宝)は、
とっても明るい環境で、近くで拝観でき、新たな感動を得る。

奈良国立博物館
 特別展 天馬―シルクロードを翔けた夢の馬―
(4月5日~6月1日)
聖なる馬・天馬表現の種々相を集約。中近東、中国の文物が3分の2。MOA美術館の巨大な赤像式クラテルや、馬を
織り表した中近東の染織品が多数(法隆寺四騎獅子狩文錦(国宝)などなど)。中国・茂陵博物館の鍍金馬も。朝鮮仏
画の最教寺釈迦涅槃図(重文)、本土寺観音経絵(重文)は初見。根津美術館金剛界八十一尊曼荼羅(重文)も。彫像
では豊財院馬頭観音立像(重文)のほか、浄瑠璃寺馬頭観音像(重文)は納入品も展示。展示替え後の再訪を期す。
図録あり(256頁・1500円)。

4月20日
歴史館いずみさの
 企画展 泉南地域のほとけたち―仏画を中心に―
(4月12日~5月25日)
泉南に残る仏画等を展示。貝塚市・吉祥園寺の十六羅漢像は、鎌倉後期の和様羅漢図という評価。確かにどれも面
貌表現に中国風の厳しさがない。泉佐野市・七宝瀧寺の不動明王二童子四十八使者図(室町時代)は、群像を描きき
った珍しいもの。仏画は照度を極端に絞っているので、単眼鏡で見ても細部の把握が厳しい。岸和田市・泉光寺十二
神将像のうち康永2年(1343)がある未神像は根来寺勢力が像造したもの。図録なし。ただし一部作品の図版が掲載さ
れている『泉佐野の文化財』(50頁・1000円)と『葛城修験と犬鳴山七宝滝寺展』(40頁・500円)を購入。

貝塚市郷土資料展示室
貝塚市の市指定文化財展
(4月5日~5月18日)
吉祥園寺十六羅漢像については、こちらにパネル展示していると歴史館いずみさのの展示室に書いてあったので来
訪。おお、そんなに大きなパネルではないがよく見える。事務室で平成14年の展示リーフレット「貝塚市内に残る仏教
絵画―絵画にみる祈りと表現―」をいただく(4頁)。吉祥園寺本の図版をゲット(1幅のみ)。

4月26日
金峯山寺
 護良親王生誕700年記念慶讃 吉野南朝を偲ぶ特別展
(3月29日~5月6日)
吉野山に名残の桜見学。蔵王堂後方本地堂内で展観。釈迦如来坐像(平安時代前期(9c)、県指定文化財)、吉野曼
荼羅(南北朝~室町時代)、仁王像内納入品(南北朝、県指定付)など展示。

如意輪寺
宝物殿で蔵王権現立像(嘉禄2年(1226)・重文)、吉野参詣曼荼羅(安土桃山時代)など鑑賞。

栄山寺
奈良県五條市。本尊薬師如来(永享3年(1431)・重文)の特別開扉(4月25日~5月18日)。境内八角堂(奈良時代・国
宝)の内陣も公開。内陣装飾画(奈良時代・重文)のほか如来形坐像(平安後期)、天部形立像(平安後期)など。境内
には梵鐘(延喜17年(917年)・国宝)、石造七重塔(奈良時代・重文)などあり。

和歌山県立博物館(宣伝)
特別展 田辺・高山寺の文化財
(4月26日~6月1日)
 田辺市稲成町に位置する高山寺には、真言宗御室派の寺院として、仏教美術に関わる文化財が伝来していますが、
境内には有名な高山寺貝塚があり、また近世・近現代においては、田辺地域の文化活動の中心として、様々な芸術作
品・学術資料などが次々と収蔵されました。この特別展では、田辺地域の文化財が集積する拠点として、高山寺所蔵
の資料を初めて総合的に紹介します。図録あり(80頁・1300円)。

4月28日
高野山霊宝館
企画展 童子とほとけ
(4月26日~7月6日)
聖なる存在としての童子に注目して資料選定。正智院・八字文殊曼荼羅図(重文・鎌倉時代)、金剛峯寺・八大童子像
のうち恵光童子立像(国宝・鎌倉時代)、西南院・覚禅鈔巻三十二<童子経>(重文・鎌倉時代)など。金銀字一切経のう
ち大集経巻二十五(国宝・平安時代)は表紙に描かれた蓮から浄土に生まれた童子が愛らしい。図録なし。

5月1日
大阪市立美術館
 特別展 聖徳太子ゆかりの名宝―河内三太子 叡福寺・野中寺・大聖将軍寺―
(4月26日~6月8日)
聖徳太子信仰を軸に、叡福寺・野中寺・大聖将軍寺の文化財を一堂に展観。叡福寺聖徳太子絵伝の修理完成を契機
とし、第一室に諸家の絵伝を集めていて、中世における聖徳太子信仰の広がりを実感する。河内国の寺院に残されて
きた地域性豊かな資料を一望できることは重要で、中央―地方の枠組みではない価値の提示は、ミュージアムの場で
こそ実現が容易であり、また美術史の新たな展開への契機となりうる。資料の現在的な評価の軸は多様でありうるの
だ。図録あり(196頁・2200円)。

5月10日
和泉市久保惣記念美術館
 特別陳列 美との出会い―久保惣コレクションの名品―
(4月8日~5月25日)
コレクション展。胎蔵八葉曼荼羅刻出龕(重文)を単眼鏡でじっくり。平安後期。刀が鎬立たない「おおらかな」檀像。清
拙正澄讃のある達磨図(重文、鎌倉時代)、蘭渓道隆筆上堂語(重文、鎌倉時代)、十王経図巻(重文、五代~北宋時
代)など。図録なし。

5月12日
建仁寺
 妙光寺特別展
(5月8日~5月14日)
建仁寺の末寺、妙光寺伝来の文化財を本坊内で展示。俵屋宗達筆風神雷神図屏風(国宝)は、妙光寺伝来とのこと。
妙光寺は藤原師継が弘安8年(1285)に山荘を寺とし無本覚心(法燈国師)を招いて開山。法燈国師像は3点。永仁6
年7月15日の自賛像(絹本墨画・鎌倉時代)、楚石梵琦の賛文を貼り付けた像(絹本著色・鎌倉時代)、像高40㎝ほど
の木造(室町時代)があり。方丈正面にも江戸時代のものがかかる。

清凉寺
霊宝館特別公開
(4月1日~5月31日)
恒例の春秋の特別公開。阿弥陀三尊像(寛平8年<896>、国宝)、十代弟子像(11c、重要文化財)、四天王立像(10c、
重要文化財)などなど鑑賞。

大覚寺
名宝展
(3月20日~5月19日)
明円作の五大明王像(12c、重要文化財)、大きな大威徳明王像(鎌倉時代、重要文化財)のほか、古文書類、近世絵
画など。

5月24日
大和文華館
 高僧と美術―聖をめぐる人々―
(5月23日~6月29日)
館蔵品の中から、僧侶をキーワードに資料選定する。仏画類のほか、墨蹟類や書状、僧侶の肖像など、多様。新聞主
要5紙に記事が出た、従来六道図とされていたマニ像が目玉。本図は元時代の寧波仏画で、ちょうど学芸員古河氏の
列品解説がありお話を聞くと、世界で唯一現存する完全なマニ像の絵画であるとのことで、なるほど話題になるわけだ
と納得。マニ像であることを特定した京都大学吉田豊教授の講演会が6月8日に行われるとのこと。秀吉・秀長の母大
政所の病気平癒祈願に関する6月22日附若王子宛の聖護院道澄書状がおもしろい(が鉛筆忘れて内容記録せず)。
ほか一字蓮台法華経(国宝)や笠置曼荼羅図(重文)など。図録なし。

奈良国立博物館
 特別展 天馬―シルクロードを翔けた夢の馬―
(4月5日~6月1日)
再訪。一遍聖絵から展示替えされた、錦織寺の熊野本地仏曼荼羅(重文)を鑑賞。滝下の千手堂、拝殿等の描写が細
かい。図録あり(256頁・1500円)。子どもが腹を空かせてややこしいので本館の展示は切り上げて奈良博前鹿鳴荘で
ソフトクリームを買う。ベンチの後ろから鹿に角で小突かれる。みんな空腹の午後。

5月29日
東京国立博物館
国宝 薬師寺展
(3月25日~6月8日)
薬師寺本尊薬師三尊像のうち、日光・月光の両脇侍像と、聖観音立像を間近で鑑賞できる希有な機会。それぞれ側
面・背面をしっかり確認。特に寺では正面しか見られない聖観音を。しかし、それにしても展示では聖観音像の影が薄
く、贅沢だが、もったいない。本館に聖観音像のレプリカが2体展示中であることとももう少しリンクさせられたのでは。
特別展-平常展の連携の中で館の存在意義や活動の重要性を伝えることにこそ、数十万人を動員する「特別」展の
積極的意味は見いだせるのでは。そんなことを求めるのも、博物館が「いる」か「いらない」か、といった話題さえ府県レ
ベルで巻き起こっている現在であるからこそ、です。図録あり。

東京藝術大学大学美術館
芸大コレクション展
(4月10日~7月21日)
芸大コレクションをお蔵出し。孔雀明王像(鎌倉時代)、鮭(高橋由一、重要文化財)、靴屋の親爺(原田直次郎、重要
文化財)、鳳凰香炉(香取秀真)など。

黒田記念館
特集陳列  写された黒田清輝
(11月15日~5月31日)
たまたま開館日で入館。黒田清輝の古写真を、東文研がホンモノそっくりに再現した複製で展示。ほかに、智・感・情
(重要文化財)、湖畔(重要文化財)、昔語り下絵(舞妓)なども。

国立科学博物館
ダーウィン展
(3月18日~6月22日)
進化論の創始者、チャールズ・ダーウィンを回顧する特別展。その生涯をたどる内容で、ダーウィンを身近に感じられ
る。図録あり。

5月30日
サントリー美術館
KAZARI 日本美の情熱
(5月24日~7月13日)
日本美を「飾る」ことに見いだすコンセプトのもとに作品を集める。飾りの美学が日本特有かどうかは別にして、縄文土
器や宗教美術など飾りでそのモノを荘厳するもの、モノによって場を飾るもの、芸能に関する道具、人体を飾る装飾品
など、「飾り」という括りでいろんなベクトルが結びつくことは納得。図録あり。

国立新美術館
モディリアーニ展
(3月25日~6月9日)
アメデオ・モディリアーニ(1884-1920)の画風変遷を眺める回顧展。作品数も多く、ずらりと独特の人物像が並ぶ展示
室は壮観。並んでいると、作品ごとに抽象化の程度が異なることにも気付く。図録あり。

6月2日
唐招提寺
仏像修理所公開
(5月31日~6月8日)
唐招提寺金堂の修理事業も終盤にさしかかり、覆屋の解体が急ピッチで進む中、最後の修理所公開。盧舎那仏(国
宝)を間近で、細部まで見られる人生最後の機会なのだろう。結局この修理所公開には通算4回ぐらい来たかもしれな
い。奈良時代末期の立体表現をしっかり心に留める。

6月7日
和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 紀伊藩主をめぐる文雅
(6月7日~7月13日)
 紀伊藩の初代藩主となった徳川頼宣(よりのぶ)の愛用品や、頼宣が父の家康から受け継いだ遺品は、そうした文化
的な素養の高さを物語る貴重な資料と言えます。また、歴代の藩主の中には、みずから書や絵画・茶の湯や陶芸など
を制作した人物もいました。こうした紀伊藩主と関わる資料の中には、中国や西洋の影響を受けた作品も多く、世界に
目を向けた先進的な藩主の姿も浮かび上がってきます。この企画展では、紀州東照宮や長保寺など紀伊藩主ゆかり
の寺社に伝えられてきた作品を中心に、代々の藩主の文化活動をご紹介します。図録なし。

6月28日
細見美術館
特別展 祈りの美・かざりの美―仏教美術と工芸―
(6月6日~7月27日)
館蔵品の中から宗教美術や工芸品を展示。愛染明王像(重文・平安時代)、普賢菩薩像(平安時代)など仏画の優品
をたくさん鑑賞。千手観音二十八部衆像は、福琳寺(和歌山県紀の川市打田町)伝来で、表層裂は熊野速玉大社伝来
とのこと。図録なし。

泉屋博古館
住友コレクション 能の彩―面と装束―
(4月26日~6月29日)
館蔵の能面・能装束類を展示。童子は天下一是閑焼印あり(西本願寺伝来)。泥真蛇は貝塚・願泉寺伝来。斑女は因
州池田家伝来の大名面。出目満栄の極書があるのがあったがどれか忘れた。図録なし。

京都国立博物館
特別公開「修理完成記念 山形・熊野神社の神像
(4月2日~6月29日)
寒河江・熊野神社の伝十王像2体の修理完成を期に公開。等身大の作例。大昔東北歴史博物館の開館記念展で拝
観した際はぼろぼろでテグスで縛っていたような気がするが、すっかり安定した状態となっている。随神像ではないかと
思うが(2体だし)、十王像なら最古作例。常設の護法神立像(重要文化財・来迎院)は初見。鎌倉前期の佳品。

特集陳列 杉本哲郎 アジャンタ・シーギリア模写―70年目の衝撃―
(6月25日~7月27日)
杉本哲郎(1899~1985)が昭和12~3年にアジャンタ、シーギリヤで行った壁画模写事業での模写作品は恩賜京都博
物館(現京都国立博物館)に一括寄贈された。その壁画模写全点を展示。鮮やかな色彩は、現存の壁画ではもう見る
ことのできないもので(ニスを使用した保存処置で燻煙に燻されたような色になってしまっている)、資料価値の高さがう
かがわれる。図録なし。

6月30日
帝塚山大学附属博物館
企画展示 博覧会を楽しむ―わが国における博覧会の歩み―
(6月23日~7月21日)
世界と日本の博覧会の歴史をコンパクトにまとめる。奈良博覧会物品目録(明治8年<1875>)など。図録なし。

7月7日
大福寺
板絵両界曼荼羅特別展示
(6月25日~7月27日)
修理完成した大福寺(奈良県北葛城郡広陵町的場80)の板絵両界曼荼羅(奈良県指定文化財・応永31年<1424>)の
特別公開。普段は本尊後壁にあって鑑賞が難しいが、今回の公開では壇上諸仏を移動し、拝観の便を図っている。も
と田原本町・楽田寺潅頂堂に納置されていたもの。壇上諸仏のうち十一面観音・雨宝童子・難陀竜王の三尊は宿院仏
師源次一門による永禄3年(1560)の造像。本尊薬師如来は室町時代、等身大の不動明王立像は鎌倉時代の作。曼
荼羅右方には額装された鎌倉時代の絹本著色弘法大師像。ちなみに境内大師堂の弘法大師座像は寛正5年(1463)
の制作。大福寺は近鉄田原本線箸尾駅から徒歩7分、法隆寺へは車で15分ぐらいのところです。

7月13日
奈良国立博物館
国宝 法隆寺金堂展
(6月14日~7月21日)
法隆寺金堂の阿弥陀三尊像と台座・天蓋、釈迦三尊像の台座・天蓋、薬師三尊像の台座、四天王像、復元壁画がず
らりと並ぶ。会期終了間際にようやく鑑賞できてほっ。展示空間にも工夫が凝らされていて、荘厳な趣き。今回は金堂
須弥壇修理に伴う展示で、こういった機会は生きているうちにあるかないかかも。朝からたくさんの来館者で、10時過ぎ
の段階で入場制限がかかっていて、ご同慶の至り。四天王像をじっくりと思ったが、子が30分ほどで飽きてしまい、後ろ
髪引かれながら退散。もう一度いけるかどうか。図録あり(202頁・2300円)。

特別陳列 建築を表現する―弥生時代から平安時代まで―
(6月14日~7月13日)
建築を切り口にした珍しい展示。瓦塔(静岡 浜松市三ヶ日町宇志出土)、宝塔形経筒(伝福岡県出土、永久4年
(1116))、信貴山縁起絵巻〔飛倉巻〕(朝護孫子寺・国宝)、華厳五十五所絵巻(東大寺・国宝)など。図録あり(48頁・
1000円)。常設では特集展示「繍仏と染織の美」も同会期で。

奈良県立美術館
特別陳列 庶民の祈り 志水文庫 江戸時代の仏教・神道版画
(6月7日~7月27日)
個人コレクションによる、刷り物の大規模展示。普段展覧会ではまずみないが、調査先ではしょっちゅう見る類の作品
群で、新鮮な気持ちで鑑賞。江戸時代後期の籠細工仮寝姿当振舞絵からくりは、文政2年(1819)に四天王寺の本尊
開帳の際、見せ物として設置された籠細工の釈迦涅槃図を描いたもの。一枚の紙にたくさんのパーツが描かれてい
て、切り離して貼り合わせるもの。その他膨大な作品群。近世の信仰史の広がりを実感できるよい機会。不明だった資
料の画題の手がかりも得られた。図録なし。すべての作品解説を記したリーフレット(18頁)をもらえるものの、いかん
せん図版が数点しかないのが残念。

橿原市昆虫館
オオカブトムシや蝶とか、最大の蝉とかの標本や、大温室とたくさんの蝶の生態展示。展示ケース内のキャプションが
大きくゆがんでいたり、虫の死骸(標本ではない)があったりするのはかなり気になるが、館種が異なると新鮮な視点を
もちえて楽しい。

和泉市いずみの国歴史館
松尾谷の歴史と松尾寺
(7月12日~9月15日)
『和泉市の歴史2 松尾谷の歴史と松尾寺』の刊行を記念した展覧会。仏教美術では、松尾寺の孔雀経曼荼羅図(重
要文化財、鎌倉時代)。特殊な曼荼羅図を鮮やかな彩色と謹直な描線で描く。彫刻は一体。新出の観福寺・弥勒菩薩
坐像で、展示では奈良時代の制作とする。ただし髻・両手・膝前は鎌倉前期頃の後補。面相部も鎌倉風(懐中電灯忘
れてあまり見えなかったが)。ただ耳の形状は確かに古そうではある。腕釧が天平風だとしているが、両腕とも後補に
みえる・・。条帛は乾漆盛り上げとのことだが、細部がよくわからない。側面や背面写真など基礎データは市史には掲
載されておらず判断がつかないが、体幹部が古い可能性はある。全体の印象は鎌倉初期の慶派風。『和泉市の歴史
2 松尾谷の歴史と松尾寺』((和泉市史編さん委員会編、2008年3月)を購入(570頁・3000円)。この手の本にしては
随分安い。中身はぎっしりつまってるし。

7月19日
和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 奇跡の仮面、大集合!―紀州東照宮・和歌祭の面掛行列―
(7月19日~8月31日)
 紀州東照宮の春の例大祭・和歌祭では、神事のクライマックスである神輿渡御の際に、神輿の後ろにさまざまな芸能
を行う行列が連なります。その中に、仮面をつけて仮装し、にぎやかに練り歩く、面掛(めんかけ)、あるいは百面などと
よばれる仮面行列があります。 この面掛で使用されてきた仮面は、古い神事面や能面、狂言面、神楽面など97面か
ら構成され、全国的にも類例の少ない大変珍しいものです。今日までこれだけの数の古面が継承されてきたのは奇跡
的ともいえるでしょう。近年、これら古い仮面の保存のため、新しい仮面も作成、奉納され、その価値の重要性に注目
が集まっています。この企画展では、和歌祭・面掛行列で使用されてきた古い仮面や、新たに制作された仮面の全て
を集め、その全貌を初めて明らかにします。あわせて142面の多種多様な仮面の魅力に身近に接して頂くことで、仮面
が語りかける和歌山の歴史に思いをはせる機会となりましたら幸いです。図録あり(56頁・1200円)。

7月22日
北野天満宮宝物殿
新指定 重要文化財(木造鬼神像) 神々の群像―一千年の時をこえて―
(7月19日~8月3日)
平成18年に新たに重要文化財に指定された、北野天満宮本殿に安置されていた鬼神像13駆を展示。天神信仰の原
型となる御霊の像。蔵王権現と同じ体勢のもの、尖った帽子のようなものなど、ほかのカミとの接点もあり興味深い。図
録なし。

大報恩寺(千本釈迦堂)
北野天満宮そばの大報恩寺にも立ち寄る。収蔵庫の定慶作六観音像(重文)、快慶作十大弟子像(重文)ほかを拝
観。

引接寺(千本えんま堂)
ついでに「京の夏の旅」のキャンペーンで特別公開中の千本えんま堂へ。長享2年(1488)定勢によって作られた大きな
閻魔像と司録・司命像を拝観。

7月27日
高野山霊宝館
第29回高野山大宝蔵展 高野山の名宝
(7月19日~9月15日)
恒例の大宝蔵展。今年も豪華なラインアップ。主なものを列記すると、金剛峯寺の孔雀明王像(快慶作・重文)、八大
童子像(運慶作・国宝)、沢千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃(国宝)、仏涅槃図(応徳涅槃・国宝)、聾瞽指帰(空海筆・国宝)、普
門院の勤操僧正像(国宝)、釈迦如来及諸尊像(壇像・重文)、西禅院の阿弥陀浄土曼荼羅(重文)、四社明神像(4人
が武装しているもの)、珍しいものでは親王院の天河弁財天像、星供曼荼羅図(重美)など。快慶作四天王像(重文)も
もちろん。見応えたっぷり。図録あり(42頁・1200円)。

8月2日
奈良国立博物館
特別展 西国三十三所―観音霊場の祈りと美―
(8月1日~9月28日)
花山法皇崩御千年の記念展。西国三十三所の各寺院が所蔵する文化財を主として、「ほとけ」「縁起」「秘宝」「法華
経」「霊験像」「浄土」「巡礼」の各テーマを設定し多彩な資料を展示する。華厳寺十一面観音立像、毘沙門天立像(重
文)は初見。ともに9~10世紀の特徴的な作例。清水寺奥院の千手観音坐像(重文)は鎌倉時代初期の優品。先日見
たばかりの快慶作金剛峯寺孔雀明王坐像と類似する。参詣曼荼羅は那智参詣曼荼羅(補陀洛山寺本)、紀三井寺参
詣曼荼羅、清水寺参詣曼荼羅、善峯寺参詣曼荼羅が並ぶが、粉河寺・施福寺・葛井寺・中山寺・成相寺・松尾寺・長
命寺は展示替えでの登場。ほか絵画・経典類は多数が細かく展示替えされるので、もう何度か訪れる必要あり。ゆる
やかなテーマ設定でありとあらゆる文化財を展示することができるのは、博物館という「場」の強みである。学術論文の
ような緻密な問題設定を超えたところで、モノが自ら主張する声を観者が選び取っていけるフレキシブル性も大事だと、
改めて気づく。図録あり(308頁、2400円)。子が、今日は色々質問してきて、ちょっとうれしい。千手観音なのに手が千
本ないよ、とか。混んでいる展覧会は帰りたがるようだ。すいているうちに来てよかった。

奈良教育大学教育資料館
仏教世界のいきものたち展
(7月28日~8月10日)
奈良教育大学大学院の「地域と伝統文化」教育プログラムの一環として企画された展示。滋賀・菅山寺の狛犬1対(鎌
倉時代)を実物展示。ほか東大寺図書館所蔵の法華堂諸像装飾文様復元模写図など。パネル展示では、空想上の花
とされてきた宝相華とアオギリ(青桐)の花・葉の類似を指摘していておもしろい。リーフレットあり(26頁)。大学自体は
オープンキャンパスの日で、多数の父兄らに混じって学食を利用させてもらう。サラダバーや総菜が1g1円の量り売
り。安っ。さすがに幼児と乳児連れは浮いていたかもしれないけれど。

8月10日
西宮市立郷土資料館
特別展 西宮市の寺院縁起
(7月19日~8月31日)
西宮市内の古代・中世開基縁起を持つ寺院について、その縁起を紹介。神呪寺の神呪寺縁起絵巻は江戸時代前期
(17世紀後半)の三巻本。さらに古い一本も展示。浄橋寺の善恵上人伝絵は享禄4年(1531)、堺の絵師の絵、三条西
実隆の詞書。ややおおらかな作風は戦国期参詣曼荼羅にもつながる要素。永福寺の丹生高野四社明神像(室町時
代)はライティングが暗すぎて画面が見えないのは難。鎌倉時代前期に高野山鎮守天野社にあって活躍した僧行勝の
出身地は西宮とのこと。へえ。図録あり(14頁・200円)。

神呪寺
神呪寺の縁起を見たので、甲山を登って立ち寄る。本尊如意輪観音坐像、弘法大師坐像、不動明王坐像、聖観音立
像(全て重文)の拝観はかなわないが、像容の確認には西宮市立郷土資料館のウェブサイトの紹介ページ(西宮市内
の指定文化財)が便利。本尊は5月18日に開帳とのこと。

兵庫県立人と自然の博物館
三田市まで足を伸ばす。自然史博物館で山の植生の変遷と人の関わりをチェック。流行りの環境史に目配りしておか
ねば。フロアー係員によるデジタル紙芝居を拝見して、現在発掘進行中の恐竜化石に関する展示などみる。事務所脇
を通ると、ここには館の組織として生涯学習課があり、多様な来館者に対応しているようだ。うらやましい。

8月16日
奈良文化財研究所飛鳥資料館
企画展 飛鳥 古寺巡礼
(8月1日~8月31日)
飛鳥の寺院をパネルを中心に紹介。檜隈寺出土飛天断片など。リーフレットあり(4頁)。

葛城市歴史博物館
企画展 当麻寺大師堂
(7月26日~8月31日)
当麻寺大師堂(江戸前期・県指定文化財)の修理に際して寄託された仏像を展示。秘仏弘法大師坐像は高野山よりも
たらされたと伝えられる江戸時代の像。ほか大師堂棟札など。リーフレットあり。

8月17日
橿原考古学研究所附属博物館
速報展 大和を掘る26―2007年度発掘調査速報展―
(7月19日~9月7日)
恒例の速報展。法隆寺旧境内(若草伽藍)出土の鴟尾、大安寺旧境内塔跡出土の巨大な水煙残欠など。図録あり
(500円、40頁)。

8月19日
大津市歴史博物館
企画展 石山寺と湖南の仏像―近江と南都を結ぶ仏の道―
(7月13日~8月24日)
湖南とそこに至る道筋に点在する仏像を紹介し、文化の伝播を面としてとらえる内容。快慶作大日如来坐像(重文)な
ど石山寺の仏像群のほか、禅定寺四天王立像(重文)、正寿院不動明王坐像(快慶、重文)などずらりと並ぶ。和束町
観音寺の乾漆菩薩形坐像は小品ながら優れた造形。金銅仏も多数集められている。図録あり(96頁・1000円)。

8月28日
和歌山市立博物館
特別展 南紀男山焼―その歴史と美―
(7月19日~8月31日)
文政10年(1827)に有田郡広村に開窯された南紀男山焼の作品とその変遷を展示。広八幡神社の焼物の狛犬(県指
定文化財)など。図録あり(80頁)。

8月30日
大阪歴史博物館
特別展 大阪府・大阪市指定文化財展―大阪の祈り さまざまな美と形―
(7月19日~9月1日)
終了間際に滑り込み。想像以上に仏像が多く驚き。特に江戸時代の傑僧・湛海とその周辺の仏像が多く、いい勉強に
なる。快慶作の大圓寺阿弥陀如来立像、照明が暗くてよく見えない。スポットライトの球切れか?。懐中電灯を持ってく
ればよかった(係員におこられるかもしれないが)。西国巡礼三十三度行者関係資料のセタ(笈)も普段見る機会が少
なくありがたい。図録あり(82頁・1300円)。

交通科学博物館
蒸気機関車や新幹線など見る。子が走り回るのでぐったり。

9月2日
岩湧寺
(大阪府河内長野加賀田)
 担当展覧会が終了し、疲れた気持ちをリフレッシュするため、休みの月曜日に寺社拝観。河内長野市・岩湧山中の
岩湧寺を参拝。境内には重要文化財の多宝塔あり。天文年間(1532~55)の建立とされる。多宝塔本尊大日如来坐像
(平安時代)も重要文化財。境内や周辺では秋海棠が満開。別名瓔珞草ともいい、お寺にぴったり。境内には杉・檜の
大木のほか、樹齢400年の榧の老樹(大阪府指定文化財)もあり。外観はまるで似ていない檜と榧なのに、なんで年輪
の表情は似ているのだろう。
 
流谷八幡神社
(大阪府河内長野市流谷)
 岩湧山からあえて山中の細道をたどって下界へ降る途中、石清水八幡宮領甲斐荘の故地に建つ八幡神社に遭遇。
社宝の鉄製湯釜は延元5年(1340)銘を持ち、大阪府指定文化財。社殿脇の樟の樹勢がみごとで、境内の樹齢400年
の銀杏は大阪府指定文化財。現地では気づかず見逃したが勧請縄の習俗があるとのこと。梅雨頃切れるらしいので
なかったのかも。

9月6日
和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 古文書が語る紀州の歴史
(9月6日~10月5日)
 古文書は、私的なやりとりを交わす手紙のようなものから、必要に迫られて意図的に偽作されたものまで、実に様々
な目的で作成されます。一通の古文書や典籍など、書かれた文字から無限に広がる紀州の奥深い歴史の世界を紹介
します。

9月7日
岡崎市美術博物館
岡崎市文化財保護条例制定50周年記念 文化財―守り、伝える
(7月19日~9月28日)
文化財の種類や修理に関する情報を、岡崎市内に所在する実物の文化財をふんだんに展示して伝える内容。内容の
まとまりがよくとても参考になる。大樹寺・如意輪観音図(鎌倉時代・重文)、円福寺・善導大師坐像(鎌倉時代)など。パ
ネルへライトを当て照度の違い(50ルクス・100ルクス・200ルクス)での見え方の比較をする展示、わかりやすい。会期も
長く、力が入っている。タイトル通り、なぜ文化財を守り伝えるか、どうやって守り伝えるかという「目的」と「手段」を伝え
る機会は頻繁にあるべき。無料のリーフレットあり(カラー20頁)。

徳川美術館
企画展 神仏に祈る―尾張徳川家伝来の仏教美術―
(9月6日~9月28日)
徳川美術館収蔵品中、多数ある仏画・仏像・経典類を一堂に展示。これは尾張徳川家十代斉朝が、本丸小天守に収
蔵されていた歴代念持仏等を城下万松寺宝蔵に納めていたものが、明治になって尾張徳川家に返還されたものと、名
古屋城天守や土蔵に収蔵されていたものを合わせた資料群。八幡大菩薩像や石清水八幡遷座縁起、春日曼荼羅、
十一面観音・不動明王・毘沙門天像など中世の仏画のほか、高麗仏画の優品や朝鮮仏画、法華曼荼羅蒔絵経箱(鎌
倉~南北朝)など工芸資料、室町~江戸期の小仏像群など、見所満載。一部優品のみ館蔵品図録に掲載されている
が、図録はなし。残念無念。

名古屋市蓬左文庫
妖怪絵本 もののけ・お化けの世界
源氏千年紀 源氏物語の世界
軍記物―歴史とものがたり―
(7月24日~9月28日)
新装成った蓬左文庫展示室は徳川美術館と渡り廊下で接続され、一体化されている。軍記物の展示は、あらゆる歴史
資料が作る立場・見る立場によって評価が変わること、真偽の判断基準も時代によっても変わることなど、資料に向き
合う心構えを説く内容。解説が丁寧。

トヨタ博物館
企画展 世界の名車展―あなたの大好きなクルマ、ここに集まる
(4月8日~9月28日)
車好きの長男のために、遠くまで連れ出したお詫びに車を見に行く。といっても、さすがにクラッシックカーを見ても喜ば
ない。トヨタ2000GTやデロリアンを格好いいねーと振っても、賛同を得られず。もっと最近の車も展示すればいいのにと
の弁。実際に乗れるかどうかが大事らしく、屋外のボンネットバスがお気に入り。

9月18日
東京国立博物館
特別展 スリランカ―輝く島の美に出会う―
(9月17日~11月30日)
 表慶館での展示。仏像が多く、また中国唐様式の源流を考える上で興味深い作例多し。装飾的な高髻や眼への水
晶嵌入など、日本の鎌倉初期彫刻を考えながら見て回る。「宋風」は「唐風」ってことかなど、スリランカと全然違うこと
ばかり考える。図録あり(256頁・2300円)。

特集陳列 六波羅蜜寺の仏像
(7月10日~9月21日)
 六波羅蜜寺宝物館改修に際し、東博でのお披露目。運慶様式の地蔵菩薩坐像と、伝定朝作の地蔵菩薩立像、薬師
如来坐像などを堪能。長快作の弘法大師坐像を見ていると、大師像の制作時期推定の困難さに挫けそうになる。運慶
像と湛慶像は作風がやや違う。

特集陳列 二体の大日如来像と運慶様の彫刻
(7月10日~9月21日)
 今年初めにはたいへんな騒ぎだったが、なにごともなかったように坐る真如苑の大日如来坐像。光得寺像と並んでそ
れぞれ独立ケースに展示され、側面も背面も比較しながら鑑賞。光得寺像により引き締まった印象があるのは小像ゆ
え?

特集陳列 那智山出土仏教遺物
(7月29日~11月16日)
 和歌山県那智勝浦町の那智山は日本最大の落差を誇る那智滝で有名。その滝への参道入口付近で、大正時代に
発見された経塚遺物や仏像類の優品の大半は、東京国立博物館に所蔵される。以前一部を借用・展示したが、ずらり
と並ぶ今回のような機会はとても貴重。勉強勉強。

特集陳列 仮面
(9月17日~10月26日)
 館蔵、寄託の仮面で特集展示。和歌山県かつらぎ町の丹生都比売神社(天野社)伝来の行道面・舞楽面は、最近考
える機会があったのでちょうど良い機会。兵庫県小野市の浄土寺行道面は、各面の違いを細かく捉えたキャプションが
つく。乾漆の伎楽面・酔胡従は初見かも。根来寺の能面も久しぶり。その他、狂言面の狐は有名なお面で、見られてな
んだかうれしい。


東京藝術大学大学美術館
特別展 狩野芳崖 悲母観音への軌跡―東京藝術大学所蔵品を中心に―
(8月26日~9月23日)
 芳崖の〈悲母観音〉とその下絵を核に、生涯の事跡を追う。作品点数はおさえられているが、若いときのいかにも狩
野派という絵から、西洋画への対抗で描かれて大変カラフルな〈仁王捉鬼図〉、大迫力の〈大鷲〉など代表作が押さえら
れている。〈悲母観音〉は、単眼鏡がないと楽しめないかも。図録あり(186頁・2000円)。

御霊神社(神奈川県鎌倉市坂ノ下)
面掛行列(神奈川県指定文化財)
 今日のメインイベント!のはずであったが、雨天のため行列は中止。残念。せめてお面をそばでみたいと思い、お世
話役の人に無理をいって、宝蔵に入らせてもらう。このお面は、1爺、2鬼、3異形、4鼻長、5烏天狗、6翁、7火吹男、
8福禄、9阿亀、10女の十面からなり、江戸時代中期頃の製作で、それぞれ独特な形状をしている。従来伎楽面との関
わりを言われるようだが、爺は武悪、鬼は飛出、鼻長は舞楽面、火吹男は鼻筋を歪ませた神事面ないし祖父というよう
に、その原型は舞楽面・能面・狂言面にあるようだ。御霊神社の祭礼は鶴岡八幡宮の放生会を移植したもので、鶴岡
八幡宮でも仮面行列があった。『鎌倉三五記』では面掛に陵王・小飛出・釣眼・大べし見・顰・福禄寿・末社(?)・ウソフ
キ・おふく・天女を用いたことが記される。これも舞楽面・能面・狂言面からなり、両者の親近性は高そうだ。和歌山の
面掛行列は徳川頼宣によって創始されたものだから、あるいは東国の面掛との影響関係を見るべきかもしれない。
 
長谷寺
 帰りの新幹線まで、随分時間が余ってしまったので、せっかくなのですぐそばの長谷寺へ。巨大な長谷寺式十一面観
音像を拝観。14世紀頃だろうか。宝物館で三十三応身も拝観。

高徳院
 鎌倉大仏を十年ぶりぐらいで拝観。像内にも入って鋳からくりや首まわりの補修を確認。

鎌倉国宝館
特別展 国宝鶴岡八幡宮古神宝
(9月4日~10月5日)
 国宝古神宝のほか、弁才天坐像など仏像、仏画も展示。舞楽面は陵王・散手・貴徳鯉口を展示。菩薩面も。浄光明
寺の僧形八幡神と弘法大師のセットが興味深い。図録なし。

鶴岡八幡宮宝物殿
 住吉神像をみる。ほかに仮面が4点、能面若女・小尉・べし見と舞楽面退走徳。舞楽面と能面って、ひょっとして面掛
の仮面ではなかろうか?

神奈川県立近代美術館 鎌倉
岡村桂三郎展
(9月13日~11月24日)
 東北芸術工科大学教授岡村桂三郎の作品展。巨大な木製パネルが林立し、屏風の形態をとる。動物を幻想的にや
や野趣を伴って描く。日本画ってなんだろう、どこにいくんだろうと思う。

神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
小宇宙への情熱 三浦康重版画コレクション展
(9月13日~12月14日)
 共通チケットだったことに気づいて、初めて別館を訪れる。展示は柄澤齊の細密な版画を中心に。作者の世界観と共
感できれば楽しかろうとは思う。鎌倉駅まで歩いて、鳩サブレー買って、帰る。おつかれさまでした。

9月21日
法隆寺大宝蔵殿
法隆寺秘宝展―斑鳩宮と東院伽藍
特別展示 飛鳥・白鳳時代の至宝
(9月11日~11月30日)
 春秋恒例の秘宝展では、善女竜王像(重文)や南無仏大師像、初見の10世紀阿弥陀如来坐像、蓮池図(重文)な
ど。特別展示では金堂四天王立像(国宝)をじっくりと鑑賞。奥二体を背中合わせに、手前二体を並列に安置すること
で、四天王の正面と側面を同時に視野に納められ立体把握が容易。 配置の妙。

奈良国立博物館
特別展 西国三十三所―観音霊場の祈りと美―
(8月1日~9月28日)
 再訪。展示替えされた仏画が目的だったが、やはり彫刻を中心に。清水寺の千手観音坐像(重文)、松尾寺の快慶
作阿弥陀如来坐像をじっくり。ほか醍醐寺の五重塔羽目板絵断片(国宝)も。図録あり(308頁、2400円)。

水平社博物館
特別展 被差別部落にとって「解放令」とは何だったのか
(5月1日~9月28日)
 1841年8月28日発布のいわゆる「解放令」発布後の実態を捉える。全国水平社発祥の地である柏原(現・御所市)で
は、解放令に反対する住民側から施行は「五万日の日延べ」であるとする流言が発生した。その五万日目が2008年9
月3日。今なお差別事件は絶えないし、ネット上など差別の嵐だ。他者の尊厳を侮辱することで成り立つ自我がいかに
醜いか、ここを訪れるたびに思う。

9月29日
高野山霊宝館
企画展 高野山に伝わる書
(9月27日~12月7日)
高野山の文化財を書の観点から展示。空海筆の聾瞽指帰(国宝)は何度みても唸る。 ほか、細字金光明最勝王経
(国宝)、紺紙金銀字一切経(中尊寺経・国宝)、紺紙金字一切経(荒川経・重文)など経典の優品や、武田信玄や北条
政子の書状など。

10月14日
葛井寺
西国三十三所結縁開帳で、葛井寺本尊千手観音坐像(奈良時代・国宝)がご開帳。今回は10月1日~10月20日の期
間。12月18日?21日にも開帳されます。といっても、毎月18日にも開帳されていますが、なかなか18日に休みの巡りが
重ならないのでいい機会と、展示替えの中休みに拝観。拝観料300円。千手観音像の詳細な図版を多数掲載した寺宝
の図録を購入(40頁・1500円)。中身は1995年に大阪市立美術館で開催された「国宝 藤井寺千手観音」展図録と同じ
だが、持っていなかったので大変ありがたい。

10月18日
和歌山県立博物館(宣伝)
特別展 没後400年 木食応其―秀吉から高野山を救った僧―
(10月18日~11月24日)
 木食応其(もくじきおうご)は、戦国時代から江戸時代初頭に活躍した真言宗の僧侶で、豊臣秀が天下統一を行って
いくなかで、重要な役割を果たしました。また、天正13年(1585)に行われた秀吉の紀州攻めの際に、高野山を救った人
物としても有名です。この特別展では、さまざまな角度から応其の事蹟を明らかにし、同時に活躍の舞台となった高野
山周辺地域に残る貴重な文化財なども紹介します。 図録あり。

10月26日
元興寺総合収蔵庫
特別展 近世律師の肖像―その姿とこころ―
(10月26日~11月9日)
 主催は元興寺と元興寺文化財研究所。鑑真、叡尊、覚盛ら古代・中世の律僧は著名だが、近世においても再び戒律
の復興があり多くの僧侶が輩出されており、それら律僧の肖像を多数集める。大阪・放光寺の真政圓忍律師像は面貌
表現に優れる。ほか、仏師名が判明する像が多数。大阪・光明院の快圓慧空律師像は寛文12年洛陽大宮方大仏師
法眼祐勢作、大阪・松林寺の聆堂秀栄律師像は享保庚戌年大仏師法橋宮内作、大阪・野中寺の慈門信光律師像は
元禄14年京大宮通蛸薬師上ル大仏師五兵衛作、黙翁源無禅師像は文政2年定朝上人二九世孫仏工田中主水作(こ
の像は像内に慈雲尊者の小像を納める)、法隆寺北室院の僧護叡辨律師像は文政8年大仏工職清水定運良慶作、
大阪・高貴寺の光雲海如律師像は明治15年大阪仏工春日有慶作。とっても勉強になる。図録あり(36頁)。

奈良県立美術館
国立能楽堂コレクション展―能の雅(エレガンス) 狂言の妙(エスプリ)―
(10月25日~11月30日)
 国立能楽堂の開場25周年を記念した巡回展。閉館間際に入館したので仮面を特にじっくり見て、装束は流し見。能
面では天下一友閑焼印のある小面・小尉、天下一大和の焼印のある泣増、天下一河内焼印のある小渇食、出目栄満
の銘がある神躰など。狂言面では登髭、祖父、尼など、さすがに堅実な作風の面ばかり。前後期で大幅に展示替えが
あるようで、半数ほどしか見られず残念。子にそれぞれの面の意味を教え、角度によって見え方が変わることを伝える
と興味を持ったよう。登髭と獅子口が好きとのこと。渋い。図録あり(224頁、2200円)。

10月27日
荒神谷博物館
企画展 ふるさとの御仏―斐川・出雲を中心に―
(10月4日~11月24日)
 出雲地方の中心、斐川町と周辺の仏像9体を集める。松江市・仏谷寺の聖観音菩薩立像(重文)が圧倒的な存在感
を見せる。厚みがあって重量感あふれる体躯、背をそらした抑揚ある姿勢、翻ってW字を描く天衣とリズムある衣紋
線、連眉と突き出た上唇による異国的な風貌。9世紀彫刻の特徴を示す。成相寺の神像群は夫婦神と御子神に女神
二体がつく。11世紀頃。ほか万福寺月光菩薩立像、持国天立像(ともに重文)も。図録はないが、A3二つ折りのリーフ
レットに全ての像の図版は掲載されている。

出雲文化伝承館
企画展 日本女性の美の変遷―江戸三〇〇年 美人画とその時代
(10月18日~11月24日)
 肉筆浮世絵や化粧道具、飾りなどを展示。全国から集めている。常設展示では26体の神像群あり。日御碕神社末社
や同社宮司家小野家の邸内社にあったもの。最も古く大きいのは10~11cの男神像。他もほとんど平安~鎌倉のも
の。

島根県立古代出雲歴史博物館
企画展 秘仏への旅―出雲・石見の観音巡礼―
(10月4日~11月30日)
 出雲・石見の観音霊場に伝えられてきた仏像・仏画を集める。鰐淵寺観音菩薩立像、清水寺十一面観音立像、禅定
寺観音菩薩立像などなど、重文をはじめ、島根を代表する仏像や、新たに見いだされたものなど多数展示され、バラエ
ティーに富む。浄音寺十一面観音立像(重文)は院豪による13世紀後半の像だが、平安前期彫刻が林立する中では
少し影が薄い・・・。図録あり(262頁、2300円)。

神々のイメージ
(9月17日~12月15日)
 常設展示の一角に、神像の特集展示。益田市・櫛代賀姫神社の僧形神像は、解説では室町時代(16世紀)とする
が、12世紀でよいのでは。奥出雲町・伊賀多気神社随神像は12世紀、県指定。大田市・喜多八幡宮の神像には、「誠
証殿」「薬師」「千手」の墨書があり、熊野の神を表している。室町末期ごろ。施設もとってもキレイ。

出雲大社
 博物館は出雲大社に隣接しているので、参拝。宝物館も見学。10年ぐらい前に来たときは、一体古い仏像があった
はずだが、無くなっている・・・。境内絵図、刀などのほか、近代彫刻も。

大山寺
 出雲から米子へとんぼ帰りして、大山寺へ。4時過ぎに到着したが、宝物館霊宝閣はちょうど閉めたところのようで残
念。本堂参拝のあと、山の上で息が白くなるほど寒いが、せめて阿弥陀堂(重文)は見ようと、あたりも暗くなって不安
ではあったが山登り。なんとか見つけてほっ。堂内には天承元年(1131)良円作の阿弥陀三尊像(重文)が安置される
(事前予約しなければ拝観できないが)。山上の大神山神社奥宮も行き残したので、必ずや再訪したい。

10月28日
鳥取県立博物館
企画展 はじまりの物語―縁起絵巻に描かれた古のとっとり―
(10月4日~11月9日)
 鳥取県にゆかりの寺社の縁起・縁起絵巻にスポットをあてる。因幡国から飛来したと語られる京都・因幡堂の本尊薬
師如来立像(重文)や、最澄が因幡国岩井温泉で造ったと語られる岐阜・延算寺の薬師如来立像(重文)、大山寺の観
音菩薩立像や十一面観音立像、鉄製厨子(重文)のほか、豊乗寺の楊柳観音像(重文)など。人は過去と現在をつな
ぐために物語を作る。縁起のテクストは、その縁起が必要となった時代のコンテクストとともに読み解くことで、史料性を
獲得できることを改めて考える。図録あり(192頁・850円)。常設展示で青龍寺の持国天・多聞天像(重文)、観音菩薩
坐像(鎌倉時代)も展示。

兵庫県立歴史博物館
特別展 ふるさとの神々―祝祭の空間と美の伝統―
(10月18日~12月7日)
 兵庫県の神道美術を一堂に集める。神像では、淡路市・伊弉諾神宮の新出女神像2躯が注目される。特に古い方の
像は、ウロを持つクスノキを用材とし、重量感ありやや背を反らした体型、鎬立つ衣紋など、10世紀初め頃の作で、今
後の神像研究の上で無視できない重要作例。もう一体は12世紀ごろ。淡路国一宮。豊岡市・気多神社は但馬国総社。
本展の事前調査で見いだされた随神倚像はケヤキの一木からなる量感あふれる像。鎌倉時代。鳥飼八幡宮の新出
の掛仏12面中、平安時代のものが4面含まれており、驚き。豊岡市・西光寺の春日曼荼羅図は、上部に春日社の景
観、下部に興福寺の諸尊像が描かれる。市指定ながらほとんど知られていなかった一幅で、鎌倉時代にさかのぼる善
本。姫路市・八正寺の鬼面2面は文保2年(1318)銘がある堅実な作風。神戸市・長田神社の黒漆塗金銅装神輿(重
文)も展示。こういう機会は大変ありがたい。図録あり(144頁・2000円)。

11月2日
栗東歴史民俗博物館
特別展 創造と継承―寺院復興―
(11月1日~12月7日)
 現在に伝わる信仰の所産が、寺院の復興という形でつながり、あるいは新たに生み出されたことの意義に注目し、縁
起、仏像、肖像を多数集める。東方山安養寺の薬師如来坐像(重文)は、13世紀第2四半世紀の造像。湛慶のごく周
辺の仏師と見られ、半丈六の大きさながら完成度の高い洗練された作行。ほか彫刻では、今年年輪年代法で用材の
伐採年が判明した善勝寺千手観音立像(重文)や、同じく善勝寺の薬師如来坐像(重文)、日光菩薩・月光菩薩立像、
建久7年(1196)作の来迎寺阿弥陀如来坐像(重文)など。仏画では平安仏画の浄厳院阿弥陀聖衆来迎図(重文)な
ど。墨跡では正明寺の即非如一による寺号額字や、来迎寺の独吼性獅による寺号額字といった、黄檗僧の作品は雄
渾かつ清新で心動かされる。資料と対峙する際、造られた時代のみに絞ってコンテクストから切り取るのではなく、伝
来の過程を等価値で評価しようとする本展の試みに強く共感を覚える。図録あり(116頁・1000円)。

滋賀県立安土城考古博物館
特別展 天下人を祀る―神になった信長・秀吉・家康―
(10月11日~11月16日)
 死後、神として祀られた戦国武将の特異性に注目。金の使用・不使用で神と俗人の差異を表するとして、神としての
信長・秀吉・家康を描いた画像を多数集める。仏画では浄厳院山王権現像(重文)。桃山~江戸初期の神像研究が今
後進められる上において、目配りが必要なジャンル。図録あり(100頁・1500円)。

愛荘町立歴史文化博物館
秋季展示会 太鼓形の酒器―金剛輪寺の太鼓樽―
(10月18日~12月7日)
 金剛輪寺で新たに見つかった中世の太鼓樽(太鼓形酒筒)を紹介する。関連資料として全国の中世太鼓樽も集める
(福井県舟津神社、兵庫県津田天満神社、岡山県遍明院、広島県大願寺)。太鼓樽を集約する初めての機会かもしれ
ない。図録あり(20頁・1000円)。

11月4日
神護寺
大師堂内陣板彫弘法大師像公開
(10月31日~11月9日)
 大師堂本尊の正安4年(1302)定喜作板彫弘法大師像(重文)が公開。あまり近寄れないので細部の鑑賞までは至ら
ず。単眼鏡を持ってくれば良かったと後悔。その分本堂で薬師如来立像(国宝)をじっくりと。

仁和寺宝物館
名宝展 仁和御流と法親王展
(10月1日~11月24日)
 御室の法流に関する聖教類や肖像を中心に展示。三十帖冊子(国宝)や別尊雑記(重文)も。薬師三尊像(国宝)など
彫刻も鑑賞。本堂・観音堂も特別公開中だったがさらに800円必要とのことなのでやめておく。

泉屋博古館
仏の形 心の姿―東アジアの仏教美術―
(10月4日~12月7日)
 館蔵品と奈良国立博物館所蔵品による仏教美術展。新収蔵資料の鎌倉時代の毘沙門天立像や大治5年(1130)銘
を持つ阿弥陀如来坐像、中国の金銅仏など。図録なし。

熊野若王子神社
 泉屋博古館そば、禅林寺脇の若王子社に立ち寄る。中世、京都における熊野信仰の拠点の一つ。

豊国神社宝物館
 先日、安土城考古博で豊国祭礼図屏風の複製を見、昨日はこの屏風について担当講座で触れたので、思い立って
現品を鑑賞しに行く。それ自体文化財といっていい宝物館内で、狩野内膳筆の屏風(重文)を鑑賞。眼福。慶長5年辻
与二郎実久作の鉄燈籠(重文)も優れた出来映え。

東寺宝物館
東寺の大師信仰
(9月20日~11月25日)
 弘法大師行状絵(重文)や古文書など展示。目玉はなんと言っても国宝の天蓋。翻って飛ぶ天人の豊かな姿とやわら
かな彩色をしっかり確認。図録なし。講堂諸尊を見たあと、金堂の七条仏師康正の薬師三尊十二神将像(重文)をゆっ
くり鑑賞。他の康正作品と、やや面貌表現の特徴が違うのはなぜだろうか。

奈良国立博物館
第六十回正倉院展
(10月25日~11月10日)
 第60回目の記念展。平螺鈿背八角鏡、紫檀木画双六局、白瑠璃碗、黒柿両面厨子など。大勢のお客さんの肩越し
に、ざっと見る。図録あり(128頁、1200円)。国民共有の財産である正倉院宝物が「文化財」とははばかられてよばれな
いことや、鑑賞者には着物で正装したご婦人が登場することや、普段見られないものを見せて頂くという上下関係から
逃れられないことなど、作品をじっくり見られない分、「正倉院展」自体の文化史について考えてしまう。ある種の宗教的
な文化環境とも共通するところでもあり、神秘化ともいえる。ま、それに自覚的であればよいと思う。

11月9日
九州国立博物館
特別展 国宝 天神さま―菅原道真の時代と天満宮の至宝―
(9月23日~11月30日)
 太宰府天満宮に隣接する九博で、菅原道真と天神信仰に関する資料を集約して展示。縁起絵巻の諸本を集めること
に力点を置いたよう。彫刻資料は多くはなく、かつ展示替えで数体しかないが、道明寺の十一面観音立像(国宝)一体
あれば充分、という気分。ただ、側面が完全には見えず、背面も見られないことは残念。この一体を中心に見るような
展示室作りでもよかったぐらい。全体と細部の鑑賞でじっくり時間を過ごす。図録あり(240頁・2000円)。常設展示でも、
いろいろ特集展示を開催中。

11月10日
功山寺
国宝仏殿開扉と秘宝展
(4月 1日~11月30日) 
 山口県下関市の功山寺仏殿は鎌倉時代・元応2年(1320)建立、国宝に指定される。会期中は堂内が開放され、本
尊千手観音坐像(鎌倉~南北朝)、二十八部衆像(永正17<1520>年作)が公開。元船大工というおじいさんの解説を拝
聴。幕末、三条実美ら五卿が潜居した庫裏には鎌倉~南北朝の韋駄天立像。

11月11日
山口県立美術館
特別展 運慶流―鎌倉・南北朝期の仏像と蒙古襲来―
(11月11日~12月21日)
 西国に残る鎌倉~南北朝期の慶派仏師の仏像を、より狭義に「運慶流」と位置づけ、その一流による造形の諸相と
展開を一望する。13~14世紀の歴史・文化を考える上で、「蒙古襲来」に象徴される対外交流と戦時体制下における
内政の転換は極めて重要で、仏師と仏像を考える上でも今後押さえていかねばならないキーワード。西国に「運慶流」
の仏像が多数分布する意味をモンゴル(元)との緊張関係の中に見る見解は妥当。文永・弘安の役後も戦時体勢はし
ばらく続いている。展示台等に、その仏像を造った仏師が運慶から何代目かを示しているのも、本展のコンセプトとよく
マッチしている。数多く並ぶ仏像からは、新たなに気づくことばかり。光得寺大日如来坐像(重文)、瑞林寺地蔵菩薩坐
像(重文)、東妙寺釈迦如来坐像(重文)、三岳寺薬師・大日・十一面観音坐像(県指定)などのほか、康俊の新出資料
も。本展は山口県立美術館と佐賀県立美術館の共催で、佐賀会場は1月1日~2月15日。一方の開場にしか出陳され
ない資料もあり、両方鑑賞したいところ。図録あり(126頁)。

広島県立歴史民俗資料館
特別企画展 優美なる百花繚乱の世界―表現された植物を見る―
(10月3日~11月24日)
 ウェブには持光寺普賢延命像(国宝)が展示期間の情報無しに掲示されているが、展示替えで見られず。告知してお
いてほしい。尾道浄土寺の仏涅槃図(重文)、仁王経曼荼羅(県指定)、出雲大社の秋野鹿蒔絵手箱(国宝)が見られ
たのでよしとする。図録あり(48頁・1000円)。

11月16日
歴史館いずみさの
特別展 日根荘と根来寺―戦国を生きる人びと―
(10月18日~11月30日)
 戦国時代の泉南地域の歴史を、地域権力として強い影響力を持った紀伊国・根来寺との関わりから概観する。古文
書、考古資料を中心に。慈眼寺所蔵の束草集の大井関社再興願文部分の写や大木村太郎兵衛講文書など、初見史
料多く勉強になる。図録無し。

河内長野市立滝畑ふるさと文化財の森センター
特別展 葛城修験―河内長野をとりまく山々の信仰―
(10月11日~11月30日)
 大阪・奈良・和歌山連なる金剛山地に二十八宿を設定し縦走する葛城修験に注目し、河内長野市内に残る文化財や
史跡を紹介する。勉強になる。図録あり(30頁・500円)。

大阪市立自然史博物館
特別展 地震展2008―今わかっていること・知ってほしいこと―
(10月25日~12月7日)
 地震のメカニズムやその痕跡を紹介。地層の断面剥ぎ取りが多数並ぶ。3D眼鏡でみる日本海溝の実体視地図に感
動。図録あり(64頁・800円)

11月17日
高山寺
 (社)和歌山県文化財センターの文化財めぐりに随行。石水院本堂(国宝)内で明恵上人樹上座禅像と子犬像のレプ
リカを前に解説。十六羅漢の写真をもってくればよかった。

西明寺
 高山寺から歩いて西明寺へ。本尊の釈迦如来立像(清凉寺式・重文・鎌倉時代)、脇室の千手観音立像(重文・平安
時代)のほか、本尊厨子脇の観音菩薩坐像(南北朝時代)などを拝観。

神護寺
 昼食後神護寺へ。本堂内にて本尊薬師如来立像(国宝・平安時代)、脇侍日光・月光菩薩立像(重文・平安時代)の
解説、拝観。少し時間があったので和気清麻呂の墓所に行き、さらに文覚上人の墓を目指して一人山中に入るが時間
切れでたどり着けず。往復30分は見ておくべきのよう。

11月22日
大阪市立美術館
智証大師帰朝1150年 特別展 国宝 三井寺展
(11月1日~12月14日)
 三井寺と宗門の名宝をそろえる。智証大師坐像(御骨大師、国宝、9世紀)、智証大師坐像(中尊大師、国宝、10世
紀)、新羅明神坐像(国宝、11世紀)を、この眼で見てしまった…。すべて側面・背面も鑑賞できる。御骨大師の面相の
迫真性、重量感、うねる衣紋をしっかり確認。新羅明神の怖さは尋常でない。翁のルーツを見た。五部心観(完本、国
宝、9世紀)のインド的な面相表現、線描の全くぶれのない謹直さ、伸びやかさに震える。奇跡的な展覧会だと言いた
い。サントリー美術館(2月7日~3月15日)、福岡市博物館(4月1日~5月10日)に巡回。黄不動は26日から。再訪を
期す。図録あり(336頁、2300円)。

11月23日
和歌山大学紀州経済史文化史研究所
特別展 文字と絵図の世界―和歌山大学附属図書館の貴重資料―
(11月17日~12月19日)
 和歌山大学附属図書館には、前身の和歌山師範学校と和歌山高等商業学校の資料が引き継がれており、和歌山
藩校の学習館・明教館・紀伊国学所・蘭学所・兵学所・洋学寮などの旧蔵書が含まれる。それらから51点を展示。鈴木
芙蓉挿図の熊野名勝図画や文化10年の高野山細見絵図などがあることを知る。図録あり(14頁・無料)。

11月24日
和歌山市立博物館
特別展 岩瀬広隆―知られざる紀州の大和絵師―
(10月18日~11月24日)
 紀伊国名所図会の挿絵を描いたことで知られる幕末の画家・岩瀬広隆の、浮世絵師・大和絵師としての画業を初め
て一望する充実の内容。粉河寺縁起の模写(個人本、粉河寺本)や、徳川治宝の命によって冷泉為恭らと作成した春
日権現験記絵巻模写(東京国立博物館蔵)を堪能。図録あり(108頁・800円)。すぐそばなのに最終日に滑り込んでたら
いけませんね。

11月29日
妙法院(三十三間堂)
 和歌山県立博物館友の会バスツアーに随行。伏見の寺田屋に行ってから三十三間堂へ。林立する千手観音は、見
るたびに新たな感慨を呼ぶ。湛慶の穏健な作風の意義を強調して解説。運慶銘を持つ千手観音像を紹介したら、「あ
んまり上手でないねえ」との声。そうですよね。10代の運慶作か否か!?

京都国立博物館
特別展 JAPAN 蒔絵―宮殿を飾る東洋の燦めき―
(10月18日~12月7日)
 安土桃山時代以降大量に輸出された蒔絵に注目し、海外所在の作品を多数集約。蒔絵の様式的、技術的展開を考
える上で、国内需要だけでなく、海外での需要が重要な意味をもっていたことを知る。近世蒔絵の様式のものさしを大
きく揺るがせる。図録あり(360頁・2500円)

国宝への道 いざ!京都国立博物館へ
(11月6日~12月7日)
 京博新館の立て替えのため、寄託品の優品がお蔵出し。(伝)源頼朝像、(伝)平重盛像が並ぶ。それぞれ足利直
義、足利尊氏と見る新見解を説明。この新見解の方が説得力があるように思うが、一度作ったものさしを変えるのは
大変。優品中の優品だけに。

11月30日
京都府立丹後郷土資料館
特別展 丹後丹波の薬師信仰―麻呂子皇子鬼退治伝説の源流を求めて―
(10月18日~11月30日)
 丹後・丹波の薬師如来像と、麻呂子鬼退治伝承を持つ寺院の縁起類を集める。宮津市・金剛心院の如来立像(重
文)、亀岡市・国分寺の薬師如来坐像(重文)、京丹後市・成願寺の薬師三尊像(府指定)、福知山市・上野条薬師堂
の薬師如来坐像、亀岡市・安楽寺の薬師如来坐像など、個性的で優れた仏像が多く見応えがある。図録あり(58頁・
600円)。

成相寺
 本尊ご開帳とのことで、拝観。江戸時代の像のよう。壇上四天王は平安時代(10~11c)、左側の地蔵菩薩坐像は平
安時代後期(重文)。

12月4日
大阪市立美術館
智証大師帰朝1150年 特別展 国宝 三井寺展
(11月1日~12月14日)
 再訪。不動明王像(黄不動、国宝、9世紀)と五部心観(前欠本、国宝、11世紀)を見る。

12月5日
橋本市あさもよし歴史館
高野山麓橋本市の六斎念仏展―野地区を中心として―
(11月29日~12月20日)
 橋本市域に残る六斉念仏関係資料を実物、パネルで展示。鉦鼓や古文書、本尊像、石碑など、紀ノ川流域で高野聖
が唱導した六斉念仏の、中世後期から近世にかけての資料の分布状況を把握する初めての機会。図録なし。

12月6日
和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 新収蔵品展
(12月6日~1月25日)
県立博物館では、和歌山の歴史や文化に関わる資料収集方針に基づいて、購入あるいは寄贈により館蔵品の収集を
おこなっています。この企画展では、近年新たに収集した資料のうち、絵画・書跡・典籍・古文書・歴史資料などを中心
に、その資料の位置づけについて紹介いたします。

12月14日
奈良国立博物館
特別陳列 おん祭と春日信仰の美術
(12月6日~1月18日)
 春日若宮おん祭りの時期にあわせ、恒例の展示。春日曼荼羅の諸本や、春日信仰に基づく舎利厨子、おん祭の光
景を描いた絵画資料など。春日曼荼羅の図像の多様性はどんな要因によるのだろうか。図録あり(80頁、1500円)。

1月5日
安倍文殊院
 大晦日から3日まで妻が風邪でダウンし、子の飯作りに追われた新年。4日は勤務で、ようやく5日になって実家に年
賀の挨拶をし、観音さんにもどーもと挨拶をして、ついでに奈良県桜井市の安倍文殊院へ。承久2年(1220)快慶作の文
殊菩薩騎獅像及び眷属像(重文)を久しぶりに拝観。今年初秋の担当展覧会が無事開幕できるよう文殊の知恵にすが
る。多武峰妙楽寺伝来の釈迦如来坐像も拝観。椿井仏師春慶作で、室町時代彫刻史上重要な像、なのだがほとんど
認知されていない…。

1月17日
奈良県立橿原考古学研究所附属博術館
特別陳列 牛にひかれて博物館―十二支の考古学 丑―
(12月13日~1月18日)
 特別陳列 七支刀の復元
(12月5日~3月31日)
特別陳列 高松塚古墳出土品の展示
(1月17日~2月15日)
「牛にひかれて…」は牛をキーワードに、考古資料だけでなく民俗資料や写真などを展示。やや散漫。リーフレットあり。
七支刀と高松塚はロビーで開催中。石上神宮の七支刀(国宝)の復元は、鍛造か鋳造かを考証するもの。鋳造のよう
です。先般新聞報道されていた橿考研倉庫に埋もれていた高松塚古墳出土品、漆喰片はかなりもろそうで粉が落ちて
る。壁画保存に関わる人の気苦労が推し量られる。

1月19日
美術館「えき」KYOTO
 四大浮世絵師展 写楽・歌麿・北斎・広重
 (1月2日~1月21日)
なんでも勉強だと、浮世絵を見る。よく知られた作品が並んでいるので、興味が持続する。「写楽の謎」が多くの人の関
心を引くのもよくわかったが、役者絵よりも北斎・広重の風景の方が好き。図録あり(2000円)。

1月23日
安楽寿院
重文阿弥陀如来坐像公開
(1月10日~3月8日)
 京都市観光協会の恒例京の冬の旅で、安楽寿院本尊像を公開。新しく建てられた大きな収蔵庫で、絵画、古文書も
公開。保延五年(1139)造像の阿弥陀如来坐像は、1991年に開かれた京博の「院政期の仏像」展で見て以来。高校生
の頃。

1月24日
円成寺
 月末に佐賀県美の運慶流を見に行くので、奈良での用事のついでに安元2年(1176)運慶作の大日如来坐像を拝観
して目慣らし。あまりに寒くて多宝塔に5分といられない。本堂の建保5年(1217)作の四天王立像も見ておく。

般若寺
 これもついでに立ち寄って、元亨4年(1324)康俊・康成作の文殊菩薩騎獅像をご拝観。

西大寺
 ええいついでに、と西大寺へ。本堂の元亨2年(1322)康俊作の弥勒菩薩坐像を拝観して、建長元年(1249)善慶作
清凉寺式釈迦如来立像、秘仏開帳中の宝治元年(1247)善円作愛染明王坐像等々も鑑賞。

1月31日
福岡市博物館
特別展 平泉 みちのくの浄土
(1月16日~2月22日)
 平成23年に世界遺産登録をめざす平泉の文化を総合的に紹介(本当は登録記念展で準備していた?)。中尊寺金
色堂西北壇の諸尊像(国宝)を間近で見られるほか、東北地方の仏像も多数展示。中尊寺若女・老女の仮面を見られ
たのも収穫。なんといっても勝常寺薬師三尊像(国宝)の大迫力の造形に圧倒される。重量感だけでなく、緊張感あふ
れる緻密な立体造形と衣紋表現、厳しい面相表現は、まさしく唐代後期様式の正統につらなる。立ち去りがたい魅力。
図録あり(280頁・2300円)。

徴古館
冬の名品展―国宝 催馬楽譜と雅楽の世界―
(12月1日~1月31日)
 鍋島家と雅楽のつながりを、鍋島報效会の所蔵資料から示す。国宝・催馬楽譜(11世紀)、重文・東遊歌神楽歌譜
(12世紀)とともに、近時コレクションの中から新たに発見された東遊風俗歌譜(12世紀)を併せて展示。古代歌謡の四
譜(催馬楽・東遊歌・神楽歌・風俗歌)が全てそろったとのこと。図録なし。

佐賀県立美術館
特別展 運慶流
(1月1日~2月15日)
 先に山口県美で開かれた「運慶流」展の二会場目。多くの資料は九州に所在するので、こちらがメイン会場。彫刻史
研究会の見学会に参加して、いろいろとディスカッションでき、得るものが多かった。三岳寺薬師如来坐像の、力感あ
る体躯の造形と中国風の面相部のギャップある融合は、だれが求めたものだったのか興味深い。図録あり(126頁、
2000円)。同会期で「新発見 肥前の神像」も展示。南北朝~室町時代の小像10躯。

和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 根来寺の“内”と“外”
(1月31日~3月8日)
根来寺は、高野山上における金剛峯寺方と大伝法院方の確執を経て、12世紀半ばに大伝法院方を率いる僧・覚鑁に
よって、現在の岩出市根来の地に開かれた寺院です。根来寺の呼称は、覚鑁の死後、およそ13世紀初頭からみられ
ますが、その後、16世紀までの間に紀北および泉南地域で着々とその勢力を拡大し、これらの地域の公権力として大
きな役割を果たしていました。また、こうした寺院の「外」における活動の一方で、「内」においては、聖教の書写活動を
はじめとした教学活動の隆盛によって、根来寺は幅広い地域の僧侶たちの学問の拠点としても機能していました。 天
正13年(1585)、豊臣秀吉の紀州攻めにより、根来寺は大きな打撃を受けますが、根来寺の当時の隆盛ぶりは、旧境
内域を対象とした30年に及ぶ発掘調査の成果によってきわめて具体的に知られるようになりました。今回の企画展
は、こうした発掘調査によって出土した資料とともに、根来寺における教学活動の展開にも光を当て、現在の最新の研
究成果によって、根来寺の全体像を来館者の皆様に紹介します。(図録あり)。

2月1日
普光寺
 前日の懇親会で飲み過ぎて、二日酔いで青息吐息。ふらふらになりながら、事前に拝観のお願いをしておいた福岡
県大牟田市の普光寺へ。法要のある日で信者さんたちがたくさんいらっしゃる中、恐縮しながら観音堂に安置されてい
る等身大の仁王像をご拝観。文明5年(1473)東寺大仏師康永の作。これも「運慶流」だ。境内に臥龍梅という県指定
天然記念物の梅の木があり、その管理の大変さを先代住職から聞く。少し色づいた蕾は、もうまもなくの開花のよう。

2月8日
京都国立博物館
特別展覧会 御即位二十年記念 京都御所ゆかりの至宝―甦る宮廷文化の美―
(1月10日~2月22日)
 御所においてはぐくまれた宮廷文化の美のかたちの諸相を展観。会期後半の日曜日なので随分混んでおり30分待っ
て入館。水無瀬神宮の後鳥羽天皇像(国宝)、長福寺の花園天皇像(国宝)、妙法院の普賢菩薩騎象像(重文)をしっ
かり見て、あとはさらっと。常設展がない分、1300円に割高感を感じる。財布が寒い…。図録あり(2500円、324頁)。

泉涌寺心照殿
泉涌寺の仏画と仏具
(1月27日~5月24日)
 京博で天皇家の美の世界を鑑賞したので、御寺へも拝観しておく。心照殿では所蔵の仏画等を展示。仏涅槃図は天
文8年(1539)土佐国綱兄弟の筆。描表装の豪華なもの。釈迦三尊像(室町時代)は近年の修理で明兆筆の墨書が発
見されたとのこと。日本に残る宋代彫刻の代表作である観音菩薩坐像(重文、通称楊貴妃観音)も拝観。

戒光寺
 せっかくなので、塔頭のいくつかにも立ち寄る。まず戒光寺で鎌倉時代造像の本尊釈迦如来立像(重文)を拝観。宋
仏画を元に造像された異国風あふれる一丈八尺の巨像。

即成院
 続いて即成院で、平安時代後期に造像された本尊阿弥陀如来像(重文)と二十五菩薩像(重文)の群像を拝観。併せ
て公開中の来迎会で使用する仮面も拝見させてもらう。紙製とのこと。今熊野観音寺もちょっと立ち寄る。

2月12日
奈良国立博物館
特別陳列 お水取り
(2月7日~3月15日)
 平成20年度美術館等運営研究協議会初日の昼休みに鑑賞。恒例のお水取り展。二月堂再建に際して作られた大き
な指図や古文書、典籍類が充実。読経の音声がちょっと音飛びしていた。図録あり(80頁・1000円)。常設展では仏画
が充実。ケース狭しとぎっしり涅槃図の優品が並ぶ。涅槃講式も数種展示していて、特集陳列などと銘打ってもよいぐ
らい。本館では特集展示「とてもよく似た二つの仏像―金峯山寺の釈迦如来像と兵庫県所蔵の天部像―」(1月14日~
5月17日)を開催。平安時代前期の作例で、同一仏師といい得る事例が紹介されたことは重要。

2月13日
春日大社宝物殿
神道美術の華 春日曼荼羅と鹿の名品
(1月15日~3月29日)
 協議会2日目終了後急いで宝物殿へ。春日大社所蔵の春日曼荼羅の諸本を展示。鎌倉時代の春日社寺曼荼羅
は、肉眼ではほとんど図様をみることができないが、赤外線写真をあわせて展示。確かに古様を示す。南円堂本尊の
下に弁財天があるように見えるが・・。掛仏や鏡像の優品も展示。図録なし。

興福寺国宝館
 何となく、国宝館にも立ち寄る。阿修羅展の前に阿修羅像を見ておこうかな、と。でも結局、国宝仏頭の前にずっとい
ましたとさ。「精神性の高さ」という用語は限定的に使わなければいけないと自分を戒めつつ、その造形美に心を研ぎ
澄ます一日の終わり。翌日の桃山時代彫刻についての研究報告(於奈良学学会例会)を一時忘れながら。

2月22日
室生寺
国宝 金堂内部特別拝観
(1月10日~3月1日)
 久方ぶりに室生寺拝観。金堂の国宝釈迦如来立像ほか諸尊を内陣で拝観。奥院まで登っておく。龍穴神社にも参拝
し、ついでに元室生寺金堂安置の地蔵菩薩像を拝観しようかと三本松の安産寺にも寄るも、集会所で地区の会合を行
っている途中で、邪魔をするのもなんだしと、退散。

奈良文化財研究所飛鳥資料館
企画展 飛鳥の考古学2008
(2月3日~3月1日)
 飛鳥資料館と明日香村教育委員会の合同展。明日香村における昨年度の発掘調査の成果を報告。仏教美術関連
では、檜隈寺跡出土の金銅仏手と銅製飛天残欠、「呉」というへら書きのある軒丸瓦。図録あり(14頁・300円)。

3月14日
市立五條文化博物館
企画展 五條のお遍路さん-大和新四国八十八ヶ所の寺巡り-
(2月21日~3月22日)
江戸期成立・五條市付近の寺院をめぐる大和新四国八十八ヶ所を取り上げる。転法輪寺の絹本著色弘法大師像は鎌
倉時代の大幅。その他安生寺の追儺面4面は江戸時代。図録なし。

和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 絵図をよむ2―和歌山再発見 お城に殿様がいたころ―
(3月14日~4月19月)
 絵図は、その時代の景観や地理的環境を伝えてくれる貴重な歴史資料です。精密な測量に基づいて作られ、等高線
で土地の高低を表現する現在の地図に対して、近代以前に作られた絵図は絵師(画家)よって描かれることもあり、絵
画的な描写で立体感を表現しています。また、絵図は特定の目的のために作られたこともあって、部分的に強調され
て描かれることも多かったようです。また写実的な描写で表現されることもありました。この企画展では、(1)和歌山城
下町、(2)景勝地和歌浦、(3)安楽川庄と三船神社という三つのコーナーを設け、さまざまな目的で描かれた絵図と関
連する資料を紹介し、江戸時代の和歌山の姿を明らかにします。(図録なし)。

3月16日
本願寺
 京都府京丹後市(旧久美浜町)の本願寺本尊阿弥陀如来立像は建久3年の作と推定される三尺像。京都府指定文
化財。本堂は鎌倉時代後期の建物で重文。

3月19日
那智山青岸渡寺
 花山法皇御遠忌による三十三所巡礼札所の本尊開帳の一環で、和歌山県南東部、青岸渡寺の秘仏本尊ご開帳
中。詳しい調査はいまだかつてされたことはない像。等身を超える六臂如意輪観音坐像。おそらく天正期の那智山造
営の一環として造像されたもの。下御門仏師作か(蔵田蔵『秘宝熊野』に図版あり)。

3月22日
桜井市立埋蔵文化財センター
企画展 忍坂街道を行く
(12月10日~4月5日)
 桜井から宇陀へと行く街道沿いの古墳群の出土遺物を展示。忍坂(おっさか)は難読地名の一つ。仏教美術系のも
のとしては、国史跡粟原寺(おうばらでら)跡出土の蓮華文軒丸瓦あり。粟原寺の塔の伏鉢は現在談山神社に所蔵さ
れ、国宝。粟原も難読地名。泊瀬(はせ)も。リーフレットあり(7頁)。

巻向遺跡第162次調査現地説明会
 桜井市埋蔵文化財センターが桜井市大字辻で発掘中の、3世紀前半頃の建造物・柵についての現地説明会。新聞
報道では卑弥呼の神殿などとなっています。現在のところ、三棟の建物が東西にならび、うち中央の建物と東の建物
が柵で囲まれ、さらに中央の建物部分が凸状に出っ張る特殊な配置。神殿かどうかは分かりませんが、特別な建物の
ようです。

長岳寺
 巻向遺跡を辞して、箸墓古墳(倭迹迹日百襲姫尊命陵)、景行天皇陵、崇神天皇陵を横目に見て長岳寺へ。仁平元
年(1151)銘を持つ阿弥陀三尊像をしばし拝観。修論でこの三尊像にぶつかっていった頃より、少しはすっきりとした視
点で見られるようになってきたように思いますが、まだまだわからないことだらけ。いつかその造形性の特質と源泉、背
景をクリアーカットに解明して、すっきりしたいものです。

3月28日
MIHO MUSEUM
特別展 ユーラシアの風、新羅へ
(3月14日~6月7日)
 MIHOMUSEUM、岡山市立オリエント美術館、古代オリエント博物館、韓国国立慶州博物館の所蔵資料を中心に、新
羅文化のアジア内での位置付けを眺める内容。慶州博物館所蔵の金製冠飾など金製品が目玉。天馬塚出土の瑠璃
杯もきれい。ホームページでの案内がチラシの表裏をスキャンしただけで、情報がほとんど得られないのは残念。図録
あり(128頁・1700円、山川出版)。同展は岡山市立オリエント美術館(6/13~7/16)、古代オリエント博物館(8/1~9/6)
にも巡回。

滋賀県立陶芸の森
特別企画 やきもの動物パラダイス―バーナード・リーチから形象土器
(9月21日~4月12日)
 外国の形象土器や現代作家の作品など、動物をモチーフにした陶器を並べる。露出で並べているものが多く、子ども
がさわったり壊したりしないかと、作品鑑賞どころではない。
今年度訪問した館・寺院はのべ141ヶ所、鑑賞した展覧会は113本でした(うち和歌山県博分8本)。