平成19(2007)年度「展覧会・文化財を見てきました。」

4月2日
法隆寺大宝蔵殿
法隆寺秘宝展―法隆寺の建立とその時代を考える 調査と保存 ―
(3月20日~6月30日)
若草伽藍出土遺物や、五重塔・金堂の建築部材、金堂壁画・板装飾、仏像の模造や復元などから、創建期法隆寺の
実像に迫る。日本古代の美術史や考古学は、法隆寺研究によって深化し、発展した経緯がある。研究の足跡と、日本
の文化財行政の足跡をたどるかのごとく。完成したばかりの金堂安置の毘沙門天・吉祥天復元像を展示。鮮やかな彩
色は圧巻。図録なし。

4月7日
奈良国立博物館
特別展 神仏習合
(4月7日~5月27日)
前近代の日本社会における神と仏の密接な関係のあり方を、表象・思想・歴史などの視点から、時系列に、また多義
的に提供する。御調八幡宮女神像2躯(重文)は9世紀の作、初公開。多田寺薬師如来立像(重文)は、面相部の印象
が写真とは違って、確かに神秘的。近時進展している各分野での神仏の接近や習合に関する研究に目配りし、神と仏
の関係史がとても一口では捉えきれない複雑な様相を呈していることを提示している。内容が多岐に渡るので決して平
易ではないが(というか神仏習合という問題自体が明確な解答が得られにくく難解だからしょうがない)、神と仏をめぐる
事象は局面局面では絡み合って紐解けないことが多いので、切り口を多く提示したことは有益。図録あり(336頁・1500
円)。安い。

4月16日
帝塚山大学附属博物館
特別展示 左桟瓦
(4月3日~5月31日)
現在瓦として一般的に見られる、丸瓦と平瓦を組み合わせた桟瓦(さんがわら)は、たいてい向かって左側の瓦に接続
していくので桟がそちらにあるが、松江・高知・秋月・足守など地域によってはその桟が逆に付いていることがある。そ
の左桟瓦を紹介。桟瓦を発明した園城寺の西村半兵衛銘の瓦も展示。リーフレットあり。

4月26日
京都国立博物館
金峯山埋経1000年記念特別展覧会 藤原道長―極めた栄華・願った浄土― 
(4月24日~5月27日)
藤原道長の時代の絢爛たる文化の実像を、同時代の資料、あるいは道長時代の文化の影響を確認・推定できる資料
から、照射していく。康尚作・同聚院不動明王坐像(重文)が本館中央展示室に鎮座。周囲の円柱を四明王と想像しな
がら鑑賞。展示室天井の高さもあいまって、当初安置空間に思いをはせる。こういうイメージの転換ができるのは展覧
会ならでは。この部屋には道長経筒・御堂関白記・小島曼荼羅も。栄花物語・御堂関白記・小右記・権記・書巻等が並
ぶ第一室も、圧巻。図録あり(320頁・2500円)。常設には大覚寺不動明王(明円)、東寺西院不動天蓋、粉河寺縁起、
藻塩草。

4月28日
和歌山県立博物館(宣伝)
特別展 文人墨客―きのくにをめぐる―
(4月28日~6月10日)
江戸時代、紀伊徳川家が支配した「きのくに」は、文化の一大拠点として、多くの文人を輩出し、様々な墨客が訪れまし
た。きのくにを代表する文人である祇園南海や桑山玉洲は、全国的にもよく知られていたため、池大雅や木村蒹葭堂
などの有名な文人たちも、彼らを訪ねてきのくにを目指しています。また、長沢芦雪は師である円山応挙の代わりに紀
南の寺院を訪れ、多くの作品を描きました。このように、きのくにが多様な文人墨客をひきつけた背景には、紀伊半島
が海上交通の要所であった点や、那智滝や和歌浦などの名勝に恵まれていた点が挙げられます。さらに、文化に造詣
の深い紀伊藩主の徳川治宝・斉順が文人や陶工を呼び寄せた点も見逃せません。この特別展では、主に江戸時代の
中期以降に活躍した、きのくにゆかりの文人墨客を取り上げ、彼らの作品や交流を通して、輝かしいきのくにの文化を
紹介します。図録あり(1200円)。

4月29日
大阪府立近つ飛鳥博物館
特別展 河内古代寺院巡礼 
(4月21日~7月1日)
河内国(摂津東南部・和泉含む)では古代寺院が約100ヶ寺確認できるそうで、それらを瓦から紹介。瓦の文様や製作
技法、同笵関係などから、他寺院とのつながり、瓦窯、豪族との関係性などなど、古代史を紐解く内容。瓦による古代
寺院研究の現在の到達点を展示している。お目当ては野中寺弥勒菩薩半跏像(5月17日以降は複製展示)。評価の
揺れ動く作品については、まずは素直な自分の答えを持ってから、研究史と対峙してみようと。モノ資料は確実に歴史
資料たりうる。瓦の研究がまさしくそうだ。多くの文献史学者が持つ様式論(美術史)への懐疑、揶揄(どちらかといえば
こちらだ)を払拭するためにも、彫刻史という立場から美術史の可能性を探っていきたい。図録あり(150頁、1300円)。

叡福寺
近つ飛鳥博そばの叡福寺にも立ち寄る。宝蔵館で仏像等みる。飛鳥時代の裂や伎楽面も。

今月の感想
博物館・美術館が、難しいテーマ、壮大なテーマに果敢に挑戦して構築した展示でも、現状では人が入ったらよい展
示、そうでなければ悪い展示、という風潮。親切な展示であらなければならないのは当然としても、ビジョンのない安直
な展示は博物館人としては受け入れがたい。定量評価はその安直さに直結する。一般受けしないテーマでも、やらね
ばならぬことがある。ところで、滅多にないことだが、ブログなどで担当した展覧会が取り上げられているとたいへんう
れしい。足りないのは、展示評価なのだ。

5月2日
和泉市久保惣記念美術館
特別陳列 名品に出会う―日本の絵画を中心にして―
(4月7日~5月27日)
館蔵品の中から、絵画の優品を選んで展示。展示替え後の後期展示を観覧。国宝・歌仙歌合、重文・熊野懐紙(藤原
範光筆)、重文・山王霊験記、重文・枯木鳴鵙図(宮本武蔵筆)など。図録なし。

5月5日
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
特別展 山の神と山の仏―山岳信仰の起源をさぐる―
(4月21日~6月17日)
山における祭祀や築墓、山地に構えられた寺院について、発掘資料から設定できるいくつかのトピックスから展示。タ
イトルから受けるイメージとは違って、展示のメインは山中の古墓についての話と、山寺の分布を瓦で示すことにあり、
山という「場」が宗教的環境にあったことを提示する。仏像類では岡寺菩薩半跏像(重文)、神野寺菩薩半跏像(重
文)、岡寺天人文セン(重文)、南法華寺鳳凰文セン(重文)、長谷寺銅板法華説相図(複製)など。宗教文化を直接示す
資料から飛鳥・奈良時代の「山岳信仰」のあり方を何か示唆してほしかった。観音とか法華経とか。図録あり(88頁・
800円)。

葛城市歴史博物館
企画展 ここは葛城、江戸時代
(4月28日~6月24日)
葛城地方の江戸時代を、当麻・高田・御所・新庄といった拠点都市に視点をおいて展観。当麻寺の古絵図など。子ども
用のパンフレットは、手作りながら、内容、構造とも工夫されたもの。図録あり(26頁・300円)。

5月13日
MIHO MUSEUM
開館10周年記念特別展 中国・山東省の仏像―飛鳥仏の面影―
(3月15日~6月10日)
山東地域の北魏から隋初までの仏像72点を展示。メインはやはり龍興寺出土資料。彩色やキリ金が残る作品群に、
改めて嘆息。北斉時代の菩薩立像(彩色・金箔が良好に残り、屈臂して掌を前にした右手の指が全部欠ける像)、間
近で側面もよく見ることができる。じっくりと鑑賞。図録あり(180頁、2900円)。豆腐(450円)買って帰る。

企画展 小さきもの みな 美し
(3月15日~6月10日)
コレクションのうち優品の展示。善派の地蔵菩薩立像(重文)など。

平等院ミュージアム鳳翔館
円相と花形の美―国宝『円蓋』―
(3月31日~7月31日)
修理中の鳳凰堂内陣荘厳具を特別展示。円蓋部の宝相華唐草の彫りの深さと、複雑な立体構成を実感。こういった
浮彫のあり方は雲中供養菩薩とも通じる。一事は万事で、当然中尊の阿弥陀如来坐像も、実は極めて繊細な立体表
現がなされており、「平面的」「絵画的」という評価は、実態を示すものではない。彫刻家としての定朝は立体感覚に秀
でた人物だ。その工房の継承者たちは次第にその感覚を失っていくけれども。

5月24日
神奈川県立金沢文庫
特別展 金沢文庫の仏像
(4月19日~6月10日)
称名寺伝来の様々な彫刻資料を一堂に展示。解体修理によって納入品が確認され、建保4年(1216)、運慶の作と判
明した称名寺光明院大威徳明王像をじっくり鑑賞。端正かつ量感に富んだ立体造形を記憶。左側面の立体がもうすこ
しみられればなおうれしい。運慶に関係する史料として、讃仏乗抄の東大寺総供養表白や東寺講堂諸尊修理関係史
料も展示。金沢文庫にはなんでもあるなあと感心。「吾妻鏡」の版本を用いて、運慶関係記事と大威徳明王願主大弐
殿に関する情報をピックアップしているのも丁寧な目配り。図録あり(64頁・1300円)。

町田市立国際版画美術館
開館20周年記念展 中国憧憬―日本美術の秘密を探れ―
(4月14日~6月24日)
東アジア文化圏の中で、常に中国・朝鮮半島からの文化的影響を受ける環境にあった日本美術。その媒体として版本
資料が重要な位置にあったことを仏画・狩野派作品・文人画の枠組みで提示。醍醐寺金翅鳥王及び大輪明王図像
は、大海の中の岩山に龍を踏んで立つカルラを描く特殊な図像。画を囲む枠線と、名称を示した題箋は、本図がもとも
と中国伝来の版画であったことを示すとする。異国的な作風とも併せて、納得。文人画の部屋では、構図やパーツなど
直接的・間接的に影響を与えた中国の画譜が並べて展示されていて、わかりやすい。この部屋はまさに中国憧憬。図
録あり(216頁・3000円)。充実の執筆者陣。

5月28日
相国寺承天閣美術館
足利義満600年忌記念 若冲展
(5月13日~6月3日) 
相国寺と宮内庁三の丸尚蔵館に分蔵される伊藤若冲の釈迦三尊像3幅(相国寺)と動植綵絵30幅(三の丸尚蔵館)
の、明治時代以来の合わせての御披露目。若冲ブームであり、関西ではTVCMも頻繁にやっているので、たくさんの
人が殺到。開館時間にあわせていったものの、メインの部屋まで2時間の行列。多分日中は3~4時間かかったので
は。並んでいる間に論文3本読めた。それはそれとして、大多数のお客さんの忍耐力に敬服。図録あり(232頁、2500
円)。

黄檗山萬福寺文華殿
特別展 黄檗と道儒の世界
(4月24日~5月31日)
儒教・仏教・道教の三教の精神は一致するという考えにまつわる道釈画などを展示。百寿群仙図は、寛文11年(1671)
11月4日、隠元隆琦に法嗣慧林性機が80歳の祝いに贈ったもの(月潭道澄筆「心華剩録」所収の記事による)。百種
の様々な自体の「壽」の字を周囲に配し、画中には山水に遊ぶ100人の仙人を描く。文人画的。黄檗僧周辺の画事とし
て興味深い。ここもまさに「中国憧憬」の場。というか明国。大雄宝殿ほかの黄檗彫刻の立体を見ておく。

今月の感想
結果的に、他界(見知らぬモノ・他国・あの世など)への憧れ(と恐れ)というメンタリティーについて考えることが多かっ
た一月。

6月2日
総本山善通寺宝物館
特別展 四国の懸仏―神仏混淆の造形―
(4月29日~6月17日)
四国でこれまでに確認されている懸仏の大多数を集積した展示。平安時代に遡るものも多い。建久5年(1194)銘の天
部形懸仏は鎌倉初期らしい緊張感ある造形。関連展示として神像も出陳。今治市竹林寺の僧形立像はうろ・ふしのあ
る霊木で作られた10世紀の像。同じ竹林寺の男神立像は長髪・有髭の相貌に六角形の柱状のものを頭頂に載せた、
道教の神像を思わせるもの。修験の行者的ともいえる。新種の神像の出現にびっくり。10~11世紀頃の作。図録なし
ですが、後に報告書を作る方向性とのこと。

6月3日
屋島寺宝物館
重要文化財・千手観音坐像(平安時代初期)鑑賞。源平合戦に関わる絵巻なども。慶長期の屋島寺再興勧進に際して
「源平合戦縁起」を作製するあり方がおもしろい。

藍住町歴史館 藍の館
阿波藍の製造・販売・染めのあり方を、旧藍商屋敷(奥村家)を利用して展示。藍の製造の難しさをしる。発酵が大事で
した。

徳島県立博物館
部門展示 阿波古式打毬の道具と衣装
(4月3日~7月1日)
古式打毬は馬に乗って行うホッケー(ポロと同根)で、徳島では昭和初期まで行われていたとのこと。実態が忘れられ
つつあるその競技のあり方を、残されている道具から提示する。リーフレットあり。『徳島の指定文化財』(1992年、50
頁、1000円)購入。

徳島県立文書館
資料紹介展 人物写真に見る徳島の近代
(4月24日~7月29日)
文書館所蔵の古写真(及びその複製)を展示。幕末維新期の若者の意志的かつ精悍な表情に感慨。阿波の人形師天
狗屋久吉の写真は、阿波人形浄瑠璃研究者久米惣七により撮影されたもの。写真が撮影されるということのコンテク
ストに注意が必要と実感。リーフレットあり(8頁)。

シンポジウム がんばるミュージアム
―四国ミュージアム研究会編『博物館が好きっ!』発刊によせて―
四国ミュージアム研究会の編集による『博物館が好きっ!―学芸員が伝えたいこと―』の発刊にあわせたシンポで、四
国の学芸員の奮闘ぶりを拝聴。発表者は相生森林美術館東浦博史氏、伊方町町見郷土館高嶋賢二氏、観音寺市郷
土資料館久保田昇三氏、春野町立郷土資料館徳平晶氏。経済性という一面から博物館という器のあり方が揺さぶら
れている現在、資料の収集・保存・研究・活用という博物館機能の効果的な運用は学芸員ひとりひとりのヒューマンパ
ワーに託されている。であるからこそ、宝のような学芸員諸氏の情熱を維持し支える、仲間・ネットワーク作りが大事。
博物館は施設とモノがあれば成立するというものではない。公共に資する人員の配置によって初めて、地域における
ネットワークの核として機能する。施設という器を維持するために人員・組織を削減・整理するのは全く本末転倒だ。博
物館という公共的空間・人的環境と結びつくさまざまなネットワークに自覚的となり、博物館に関わり結びつく市民の姿
を具体化することで、その存在の「重さ」を示して行くことが必要なのだろうと、考える。『博物館が好きっ!―学芸員
が伝えたいこと―』は、41人の学芸員等によるトピックスを、「あつめる/まもる」「みせる/つたえる」「むすぶ/ひろ
げる」の3つのテーマに分類したもの(250頁)。四国の学芸員のネットワークがなしえた大きな成果物。2007年2月28日
発行。発行元は(株)教育出版センター、1600円です。

6月10日
唐招提寺
金堂国宝三尊像(廬舎那仏・千手観音・薬師如来)修理所公開
(6月2日~6月10日)
薬師如来立像が奈良博から戻ってきて、改めて修理所での三躯の公開。奈良博本館では他を圧倒する大きさであっ
た薬師像も、千手観音像と並ぶと影が薄い・・。

興福寺国宝館
特別陳列 国宝乾漆八部衆像のすべて
(4月28日~6月10日)
八部衆像勢揃い。そして西金堂仏頭。

奈良国立博物館
特別陳列 古玩逍遥―服部和彦氏寄贈仏教工芸展―
(6月9日~7月8日)
寄贈された金属工芸を中心としたコレクションの展示。どれも掌に収まるような大きさであり、コレクターの好みが分か
る。図録あり(80頁・800円)。本館で西金堂飛天・化仏をみて、某研究会で運慶論拝聴。

6月16日
海南市海南歴史民俗資料館
特別展 新田長次郎と温山荘―日本の産業革命を支えた業績と社会貢献―
(6月1日~3月30日)
海南市・黒江湾に広大な庭園・温山荘園を築いた実業家、新田長次郎の回顧展。工業用の革ベルトで富をなした(現
ニッタ株式会社)。温山荘園は昨年度県指定名勝となる。建築物は登録文化財。リーフレット(10頁)あり。

和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 絵図を読む
(6月16日~7月16日)
 精密な測量に基づく現在の「地図」に対して、近代以前では絵画的要素の強い「絵図」が制作されました。特定の目
的のために制作された絵図はデフォルメされることも多く、こうした絵図から描かれた意味を探ります。

6月24日
橋本市あさもよし歴史館
企画展 注目!東家遺跡
(6月1日~?)
橋本小学校敷地内の発掘によって見いだされた、中世後期の館跡遺構等を提示。輸入陶磁器片もあり。

6月30日
河内長野市立滝畑ふるさと文化財の森センター
特別展 蘇える古建築
(5月1日~11月30日)
河内長野市内、天神社社殿(市指定文化財)の修理情報など展示。旧彩色を剥ぎ取りして保存している。興国6年
(1361)の棟札や、中世の湯釜など。だれもいない園内の茅葺き古民家(江戸後期)で、子といっしょに七夕飾り作り。

今月の感想
今月は寺院附属の宝物館、規模の小さな地域の資料館特集。ミュージアムの評価は入館者数ではなく、誰のための
施設か、誰が喜ぶのか、が大事。規模の小ささは、コンセプトを明確にできる点で有利。

7月8日
高野山霊宝館
企画展 染織の美―天野社と舞楽装束―
(4月28日~7月8日)
高野山の鎮守社、天野社(丹生都比売神社)で行われていた一切経会(のち舞楽曼荼羅供)の舞楽で使用された装束
を展示(重文・金剛峯寺蔵)。装束の裂は裁断されて宝簡集(国宝)の表紙などにも転用されている。最終日滑り込み。
図録なし。子といっしょに壇上伽藍散策。

7月9日
佛教大学アジア宗教文化情報研究所
特別展 アジアを通った仏教のさまざまな姿
(6月11日~7月9日)
高浜町正楽寺の兜跋毘沙門天像等や、福知山市の旧威徳寺観音堂仏像群のうち9躯など、京都府南部の仏像を中
心に展示。城陽市・三縁寺の菩薩立像は脱活乾漆技法の像。正楽寺の僧形神坐像を見ながら、我田引水にいろいろ
考える。最終日滑り込み。図録なし。

清凉寺
国宝・釈迦如来立像拝観。三国伝来の生身仏、読経の中でご開帳、ありがたやー×2。その他無量寿経曼荼羅など見
る。

松尾大社
宝物館で平安前期の重文男神像2躯、女神像を拝観。圧倒される。いろいろ気付く。境内で蕎麦食べて、急いで大学
へ講義しに。

7月14日
栗東歴史民俗博物館
企画展 近江の彫刻―金勝谷の天台彫刻―
(6月16日~7月22日)
栗東市内の古刹金勝寺の文化圏に残る天台系仏像を展観。善勝寺千手観音立像(重文)は、本面耳後ろに左右に脇
面をもつ三面千手。板状の手を多数あらわす真千手だが、大きな手は四十四臂。昨年和歌山県博で展示した補陀洛
山寺千手観音像も三面千手で四十四臂。何か関係がありそう。小冊子あり(8頁・100円)。紀要最新号(『栗東歴史民
俗博物館紀要』13、2007・3)では、諏訪神社神像の基礎的考察(松岡久美子「諏訪神社の神像について」)、辻村鋳物
師の作品論(佐々木進「辻村鋳物師の梵鐘・喚鐘について(一)―太田西兵衛・大田甚兵衛・太田庄兵衛―」)、伏見稲
荷大社本願所の廃仏毀釈の動き(溝口純一「愛染寺の仏像・仏具類移動についての考察」)ほかが提示される。松岡
論文は諏訪神社社殿内に納置される男女神像と如来形立像を同一の作者によるものとみなし、如来像が平安後期様
式を示すことから、やや素朴な造形である神像も同時期の制作であることを導く。神像の制作年代をいかに設定してい
くか、研究史上では模索が続くが、一つの解答を得た。佐々木論文は、従来の梵鐘研究の金石文・形式重視の研究手
法を踏まえながら、龍頭の様式変遷を視野に入れた新たな研究手法。モノ資料を扱う美術史の可能性・強みを実感す
る。

滋賀県立琵琶湖文化館
小企画展 滋賀県新指定文化財展
(7月3日~7月16日)
新たに指定された滋賀県指定文化財の御披露目。永和2年銘聖観音坐像(青岸寺)など。特別出品として、新たに重
要文化財に指定された、誓光寺十一面観音立像(平安時代後期・12世紀)も展示。像内に御衣木加持の儀礼に使用し
た観音像を墨書した木片が納入されていたもの。図録なし。

7月16日
奈良国立博物館
親と子のギャラリー 仏さまの彩り
(7月14日~8月19日)
仏教美術などに施された彩色・加飾に注目する。国宝・刺繍釈迦如来説法図、重文・絵因果経は、実物とともに、デジ
タル高精細画像によって細部の美しさに迫る。重文・四天王立像(海住山寺)の端正かつ量感に富んだ立体造形を360
度間近で確認できるうれしさ。重文・越前国坂井郡高串村東大寺大修多羅供分田図の展示ケースに踏み台を置いて
いるのがありがたい(車椅子使用者はいずれにせよ見ることができないが)。図録あり(56頁・200円)。巻末に協賛企
業の広告を載せ、児童・生徒が購入しやすい価格で提供する、とのことで驚きの価格設定。館内配布のカラー印刷の
子ども用クイズも図録と同じ協賛企業による提供。入館料が値上げされた状況下において、外部資金の獲得を来館者
サービスに直結させるこのような試みは重要。

特別陳列 新たな国民のたから―文化庁購入文化財展―
(7月14日~8月19日)
近年文化庁が購入した文化財を展示。重文・群仙図(曾我簫白筆)の大迫力。簫白が奈良博に並ぶのは初めて?。菩
薩半跏像は以前から本館で展示されていた像。ようやく側面と背面を見ることができてとてもうれしい。研究者の血が
騒ぐ。リーフレットあり。同室で「新指定 平城宮の木簡」(会期同じ)も展示。平常展では陸信忠銘十王図と初見の阿
弥陀如来像(南宋)をじっくり。

春日大社宝物殿
夏期特別公開 祭のいのちをうけつぐ 神楽と舞楽
(7月4日~8月29日)
平安時代の舞楽面を鑑賞。古い仮面の造形に、眼と感覚をならす。図録なし。急いで大学へ講義しに。最終回でほっ。

7月21日
和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 地獄と極楽―”あの世”のイメージ―
(7月21日~8月19日)
命あるものが避けることのできない「死」という現象。かつて人々は、死後の世界を“この世”から続く別の世界ととら
え、様々な死後の世界のイメージを作り上げてきました。お盆の時期に地獄の絵や極楽浄土の絵などを展示し、それ
らを通して昔の人々が抱いた“あの世”への恐れと憧れのあり方を、 ご覧頂きたいと思います。

特集陳列 紀州東照宮の仮面―平成18年度の調査成果速報―
(7月21日~8月19日)
東照宮(和歌山市和歌浦)の祭礼として毎年春に行われる和歌祭では、神輿のお渡りの際に様々な出し物が行列を作
ります。その中に、面掛(あるいは百面)とよばれる仮面行列があります。県立博物館では、和歌山県教育委員会平成
18年度文化財指定ランクアップ推進事業の一環で、その仮面行列の際に使用されている仮面の調査を行いました。こ
の特集陳列では、調査によって判明した成果を速報し、地域の歴史をものがたる貴重な文化財を保存・活用する重要
性についてお知らせしたいと思います

7月23日
高野山霊宝館
第28回高野山大宝蔵展 信仰マンダラの世界 高野山―神仏への祈り―
(7月14日~9月9日)
高野山の名宝を展示。前期(~8/20頃)の仏画では善女龍王像(国宝)、両界曼荼羅(血曼荼羅・重文)など、後期では
五大力菩薩(国宝)、阿弥陀聖衆来迎図(国宝)など。宋代の如来像(伝薬師如来・重文)、宝寿院地蔵菩薩像(祐円
筆、重文)などは通期。彫刻では八大童子のうち制多伽童子像(国宝)。聾瞽指帰(国宝)は前期上巻、後期下巻。図
録あり(42頁・1200円)。終了したはずの企画展「染織の美―天野社と舞楽装束―」は展示継続中。

7月24日
なにわの海の時空館(大阪市立海洋博物館)
企画展 海を巡った薬種―江戸時代のくすりと海運―
(7月14日~9月2日)
外国産の薬種の輸送を軸に、海運についてと、大阪・道修町の薬問屋について展示。見る限り、この館は企画展示を
行うことを想定していなかったようで、文化財を展示する環境が整っていない。そのため複製資料を多数作るなどいろ
いろ工夫の跡はうかがえるが・・。雄大なロケーションや巨大な菱垣回船(実寸)を中央に配した建築の構成美など、実
はこの施設の魅力は大人にこそ伝わるように思うが、展示は子ども向け。

今月の感想
展示へのスタンスは、展示する場との相関関係にある。寺社の宝物館で教育的配慮を講じる必要性は薄いし、公共の
博物館で宝物のご開帳でよしというわけにはいかない。展示と鑑賞者のマッチングがうまく図られているかどうかという
ところに、本当の館の個性が現れるように思う。 

8月1日
和歌山市立博物館
特別展 歴史のなかの鉄炮伝来
(7月14日~8月26日)
戦国時代に伝来した鉄炮と戦法の変化、流派の発生、製法、幕末期の再度の「鉄炮伝来」など、鉄炮の歴史的位置づ
けを多数の珍しい資料から叙述する。鉄炮研究の最前線を共有できてありがたい。図録あり(2000円)。

8月2日
和歌山県立近代美術館
関係―藤本由紀夫展
part 1 FUJIMOTO and
(7月14日~9月24日)
part 2 ハッピー・コンセプチュアル - 杉山知子 + 藤本由紀夫  
 (7月14日~9月2日)
藤本由紀夫の音の出る作品など。観者が実際に接して、観者の内面になんらかの影響を与えることで作品が成り立つ
点が、「関係」ということなのだろう。杉山知子作品は、時間を展示する。小冊子(300円)あり。

8月18日
天理参考館
常設展
台湾先住民族の資料を見に行く。古そうに見えても、20世紀の資料なのね。

奈良国立博物館
親と子のギャラリー 仏さまの彩り
特別陳列 新たな国民のたから―文化庁購入文化財展―
(7月14日~8月19日)
再訪。

8月20日
国立民族学博物館
開館30周年記念企画展 世界を集める-研究者の選んだみんぱくコレクション
(7月26日~3月4日)
民博所蔵のバラエティに富む資料を、所属の「教官」(By監視職員さん)の思い出とともに展示。PSP(プレイステーショ
ンポータブル)を使って鑑賞の誘導を図っているものの、解説文など情報はキャプションとほぼ同じで、クイズのあるな
しぐらいの違いか。PSPを借りるときに登録されたID、パスワードを、専用ページ(http://museum-media.net/
minpakunavi)に入力すれば展示室での足跡が表示される。今回の利用では特にすごいと思うようなことはなかったが
(正直な感想では、とりあえず作ってみた、という感じがした)、今後コンテンツ内容の充実を図ることで可能性がふくら
むだろう。音声ガイド機としても使えるかも。訪問の本題はテーマ展示「台湾原住民族の文化―ナチュラリスト鹿野忠雄
の収集資料―」のチェック。子どもはバイクを改造したリキシャとジープを改造した乗り合いバスに釘付け。ずっと乗っ
てる。

8月25日
和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 尊経閣叢刊 ―レプリカの歴史と意味―
(8月25日~9月24日)
 加賀・前田家の尊経閣文庫に伝わった古典籍を、天変地異等によって失われることに備えて、四半世紀にわたり作
られたレプリカ(複製)が尊経閣叢刊です。このたびの企画展では、当館が所蔵する「尊経閣叢刊」54種を初めて全て
そろって公開するとともに、当館所蔵の実物資料とその複製を対比展示することなども行い、一般的に価値を低く見ら
れがちな複製(レプリカ)の果たす役割について考えます。

8月26日
滋賀県立近代美術館
慈覚大師 円仁とその名宝
(8月11日~9月24日)
栃木、宮城と巡回してきた円仁展を鑑賞。浅草寺経・久能寺経・慈光寺経・中尊寺経などお経の優品がみどころ。輪王
寺の男神・女神像は10~11cか。お膝元での展覧会であるが、日曜日にしては来館者が少ないようで・・。図録あり
(224頁、2200円)。

滋賀県立琵琶湖博物館
企画展 琵琶湖のコイ・フナの物語~東アジアの中の湖と人~
(7月14日~11月25日)
琵琶湖の鯉や鮒に関して、その生物学的な情報や、人との関わりに関する歴史学的な情報などを展示。歴史展示で
は、なんと宮内庁書陵部の山科家礼記の原本を展示。子どもむけのフリースペースの作り方が参考になる。図録あっ
たようだが、買い忘れ。水族展示で魚みる。夏休み最後の日曜日で、子ども連れのお客さんが多く活況を呈している。
ここは知事部局管轄で、研究者の総数は30人を超える。教育委員会管轄で、指定管理者制度による財団運営に移管
された琵琶湖文化館が苦しんでいるのがありありと見えるだけに、「親子の関係」ともいうべき両館で、なぜここまで待
遇の差が広がらないといけないのかという思い。淡水魚の世界的研究も大事だが、地域の中で繰り広げられてきた
人々の営みを再構築する人文系の学問を軽視しすぎではないか。行政の管轄の違いだけによって、一方は栄え、一
方は瀕死の状態となる現実に、暗い気持ちになる。せめて琵琶湖博物館は、前身である琵琶湖文化館をもう少し支援
してあげてほしい(事業案内を掲示するとか、せめてウェブサイトにリンクを付けるとか)。一蓮托生。

今月の感想
昨年度の名簿によれば国立民族学博物館は研究者56人・事務方37人、滋賀県立琵琶湖博物館は研究者34人・事務
方5人。超大型館で、研究職として先端研究を行う環境があることは大事なことだ。たいていの館の学芸員は研究職で
すらない(かくいう私も)。是非そういう館は、そうでない館を救済しうる理念や展示方法の開発に力を入れて欲しい。経
営体力のある館が「気は優しくて力持ち」であらねば、MUSEUM業界は先細りだ。

9月8日
奈良国立博物館
特別展 美麗―院政期の絵画―
(9月1日~9月30日)
院政期(平安時代後期~鎌倉時代前期)に描かれた、繊細・華麗な日本絵画の美の極地を提示。仏画だけでなく、絵
巻物や料紙装飾のほか、仏像・工芸品の彩色・加飾にも目配りする。京博「王朝の仏画と儀礼」展が平成10年だが、こ
ういう良い機会が十年スパンぐらいであるのはありがたいし、研究者養成という観点ではこれを見て仏画研究を志す人
もきっとあるだろう。前期(~17日)・後期(19日~)で大幅に展示替えを行うため、後期のチケットを半額(500円)で販
売ということなので購入。お得、というよりは万難を排して行くための動機付け(いけるだろうか・・)。一点一点をじっくり
見ることができる入館者数で、仏画を見るには好都合。博物館の評価は本来、入館者数による定量評価と、鑑賞者の
満足度による定性評価の両軸が必要。来館者を無作為に抽出して満足度をアンケートするシステム(アンケート項目と
アンケートのとりかたのマニュアル)を開発して、多くの館で共有することができれば、データとしての有効性を図れるだ
ろう(自館の評価を他館の評価と同列で比較できる)。子どもが途中で騒ぎだしたので、残念ながら最後の部屋はさら
っと。図録あり(256頁・1500円)。

9月16日
和歌山県立紀伊風土記の丘
企画展 考古学で見る仏教の変遷
(7月31日~9月17日)
会期に余裕があったのに、結局ぎりぎりで訪問。古代~中世、一部近代のものも含んで、考古学的調査の成果を用い
て紀伊国の仏教の変遷を提示。大同寺銅製蔵骨器は奈良時代の優れた出来映えの蓋付骨蔵器(県指定)。名古曽中
世墓地出土の古瀬戸瓶子は鎌倉時代の優品。その他粉河産土神社第2・第3経塚出土資料など。図録なし(展示解
説資料あり)。

9月22日
奈良国立博物館
特別展 美麗―院政期の絵画―
(9月1日~9月30日)
再訪。展示替え後の後期展示を鑑賞。入館料、夫婦(22日)の日で夫婦なら半額!とのことでしたが、前回買った500
円券を利用する場合適用されないとのこと。残念。金剛寺の弘法大師像をじっくりと鑑賞。弘法大師像の絹本の最古
本を間近に見られるありがたさ。永久寺旧蔵絵画をまとまってみられることもありがたい。地獄絵では、沙門地獄草紙
のうち剥肉地獄を初見。いたたた。・・・・。いたたたたたた。その他、伴大納言絵巻、頴川美術館の阿弥陀曼荼羅、桜
池院薬師十二神将像、後鳥羽天皇像など見て満喫。

今月の感想
結局のところ、意味ある資料選定を行い、学問上の正しさや意義を問う「当たり前」のことを土台として、さらにその上で
鑑賞者の満足度を高める工夫をいかに凝らすかというところに、展示という行為の進化形はある。展示空間を充実さ
せるため、資料・施設・演示具・パネル・照明と配付資料を、行き交う人とその視線を意識しながら組み合わせていく能
力の獲得に、意識的でありたい。昨年の那智山展では、ガラスへの映り込みをも利用してみた(滝=仏=神というイメ
ージの表現として)。勉強勉強。

10月6日
金峯山寺蔵王堂
本尊蔵王権現立像特別開帳
(10月4日~10月8日)
役行者霊蹟札所会の吉野山出開帳イベントにあわせ、本尊蔵王権現像(重文、像高728cm、615cm、592.5cmの三躯)
の特別開帳。最近この像について検討し、下御門仏師宗貞・宗印一門によって、うち1体が天正15年・16年に造像が進
められていることを主に『多聞院日記』を用いて論証しました。そして、従来天正14年からの造像と見なされてきた京
都・方広寺大仏の造像は、実は天正16年から行われた事業であることも『多聞院日記』から論証しました。豊臣秀長を
願主として進められた蔵王堂復興造営で巨像制作を行うことのできる実績を示したこの仏師を、秀長が方広寺大仏造
像仏師として「召し具した」という仮説を、提示することができました(「熊野那智大社十二所権現神像と下御門仏師」
(『和歌山県立博物館研究紀要』13、2007・3)。出開帳の方は主に各寺が役行者像を持ち寄る。古いものもあり。大峯
山寺は平安時代の銅製蔵王権現像。

和歌山県立博物館(宣伝)
世界遺産登録記念特別展 熊野本宮大社と熊野古道
(10月6日~11月25日)
 平安時代以来、皇族から庶民まで多くの人々が、熊野をめざして難行苦行の道を歩き続けました。現代よりもはるか
に交通が未発達だった時代、人々は何故あえて険しい道のりを越えて熊野へと向かったのでしょうか。この特別展で
は、紀伊路・中辺路と呼ばれた熊野参詣道沿いに残された数多くの文化財を紹介するとともに、熊野詣の最初の目的
地であった熊野本宮大社に伝えられた宝物から、人々が熊野に込めた思いとその歴史を明らかにするものです。世界
遺産登録から3年目を迎えた今年、改めて人々を惹きつけてやまない熊野の魅力の源泉を探ります。図録あり(296
頁・1700円)。

10月9日
高野山霊宝館
企画展 仏に祈りをこめた法具
(9月15日~12月9日)
高野山に伝来した法具の優品を展観。唐将来のものを始め、古様な密教法具など。独鈷杵を持っているということで、
国宝八大童子像のうち矜羯羅童子像も展示。本館紫雲殿では朝鮮仏画を複数展示。図録なし。

10月10日
八幡市立松花堂美術館
開館5周年記念特別展 石清水八幡宮展―時空をこえる秘宝―
(10月5日~11月25日)
石清水八幡宮の宝物類を展示。神像は、重文の童形神像4躯以外の府指定神像4躯(南北朝~室町時代)が展示。
石清水八幡宮の宝塔院から伝来した奈良博の毘沙門天立像(鎌倉時代)も。典籍類は重要なものがずらり。石清水八
幡宮護国寺略記、貞永元年(1232)田中宗清願文は世尊寺行能筆。鎌倉後期の八幡愚童記、叡尊によるモンゴル来
襲防御の祈祷目録である、異国襲来祈祷注録(南北朝)など。図録あり(58頁・1600円)。

10月15日
宗隣寺
山口県宇部市宗隣寺の国指定名勝庭園(龍心庭)鑑賞。干潟様という浅瀬を造った南北朝期の庭園。本堂の縁側で
ごろり。

10月16日
北九州市立いのちのたび博物館
特別展 修験の歴史と自然―西日本の山の信仰―
(10月12日~11月11日)
展示のメインは、求菩提山修験に関する資料だが、その他九州各地の修験の拠点の資料や、白山など西日本の修験
にも目配りする。求菩提山修験と関係する、豊前市如法寺の仁王像は、像高2m80㎝を越える平安時代後期のもの。
画像。その他求菩提山と聖護院道興についてのパートなど、参考になる。那智参詣曼荼羅は財団法人鍋島報效会
本。白山ヒメ神社の重文獅子・狛犬や、聖護院本熊野曼荼羅(重文)も。これだけ力を入れているのに、図録がないの
は残念。ミュージアムショップでは福岡県求菩提資料館のガイドブックを販売。

福岡市美術館
大応国師七百回忌記念特別展 大応国師と崇福寺
(9月30日~11月4日)
臨済禅の高僧、大応国師に焦点をあてて、その法脈や関連寺院、人物などをクローズアップする。大応国師の師、大
覚禅師(蘭渓道隆)関係では、建長寺大覚禅師像(国宝)など。お目当ては崇福寺本尊釈迦三尊像。南北朝時代、院
什の作。中尊像の面相部の造形は、生気があって上手。中尊と脇侍の出来映えが異なり、工房内での仏師の腕の差
があることを思わせる。その他、室町~江戸期の頂像彫刻がいくつか。図録あり(240頁、2000円)。

九州国立博物館
親鸞上人750回大遠忌記念 本願寺展―親鸞と仏教伝来の道―
(9月22日~11月18日)
西本願寺及び宗門の名宝をずらりと並べる。親鸞像は、奈良博の熊川御影のほか、西本願寺の等身御影も。親鸞聖
人絵伝の善本も複数。唯信抄、教行信証、親鸞書状、恵信尼書状、正信偈、歎異抄、御文章といった、真宗教学上の
超重要史料が並ぶ。慕帰絵、本願寺本三十六人家集、熊野懐紙や、襖絵、茶道具、大谷探検隊関係資料なども。図
録あり(274頁・2200円)。

修理完成記念特集陳列 釈迦誕生図―受け継がれる朝鮮仏画の名品―
(10月10日~11月18日)
修理を行った朝鮮仏画の本岳寺釈迦誕生図を展示し、あわせて修理のあり方について提示する好企画。同じ内容の
絵が江戸時代に版本で流布しているので、その原型を見られたのは勉強になる。修理行程の写真なども、国レベルで
の修理の水準の高さを知ることができ有益。二年間かけての修理で、費用は880万円。このレベルの修理が望ましい
のは言うまでもない。ただし、地域には、今すぐに、何らかの手を打たなければならない仏画が山積している。この修理
水準でなければいけないとなると、救われない仏画が続出するのも事実。現場の苦悩は続く。図録あり(24頁・300
円)。

観世音寺
帰りのフェリーの乗船時刻と、港までの距離を考えると、鑑賞時間は10分しかない。でも、素通りするわけにはいかな
い、ということで、とにかく10分見る。あー、新たな感動。 


10月21日
尼信博物館
尼崎市文化財保護条例施行25周年記念 尼崎の指定文化財展
(10月6日~11月11日)
尼崎市教育委員会主催事業。仏教美術では、長遠寺の天正16年(1588)奥書がある日蓮大聖人註画讃、鰐口、永禄
8年(1565)の年紀がある仏涅槃図など。古代・中世文書では、尼崎市所有の元亨3年(1323)杭瀬庄雑掌申状案や、
東大寺領荘園文書など。リーフレットあり。

明石市立文化博物館
生誕290年 木喰展―庶民の信仰・微笑仏―
(10月6日~11月4日)
林立する木喰仏にまずは圧倒され、そしてひきこまれる。木喰の生涯とその作風変遷を、段階的に変化する名乗りの
違いで4期に区分し展示。初期の生硬な表現から、晩期の柔和な笑い顔への展開に、個人様式の成熟を実感できる
構成。知らないことをたくさん知ることができ、精神の高揚を得た。今後、大阪(京阪ギャラリー、3/13~4/1)、山梨(山
梨県博、4/5~5/6)、愛知(豊橋美術博物館、5/16~6/22)、神奈川(そごう美術館、6/27~7/24)に巡回。図録あり
(228頁・2000円)。

加古川総合文化センター
特別展 東播磨の文化財―加古の流れの中で―
(10月6日~10月28日)
加古川市内の文化財を各種展観。鶴林寺からは、小振りな仏像などを展示。大日如来坐像は鎌倉後期。行基菩薩坐
像は天文3年(1534)銘あり。報恩寺釈迦十六善神像は県指定、鎌倉末~南北朝。その他経典、近世絵画、絵馬、絵
巻物、考古遺物など。図録あり(56頁・1000円)。

鶴林寺
国宝建造物を見て、宝物館で重文観音像、平安前期の恵便法師像、平安後期の二臂如意輪観音像、釈迦三尊像な
ど鑑賞。充実。

10月30日
滋賀県立安土城考古博物館
特別展 戦国・安土桃山の造像Ⅱ―神像彫刻編―
(10月13日~11月18日)
従来注目されることの少なかった、標題の時期の神像を集成。冒頭には古い時期の神像も展示。佐賀県・掘江神社神
像群などは体部の造形を省略した「こけし」のような形状だが、そこに円空仏のルーツを見て、岐阜県・六角堂護法神
立像も展示。個人所蔵の和式の武装形神坐像も珍しいもの。中世の紀年銘のある三十番神像も。良い勉強になる。
図録あり(104頁・1500円)。

野洲市歴史民俗博物館(銅鐸博物館)
 近江富士 三上山
(10月13日~11月18日)
琵琶湖のランドマークの一つである三上山にまつわる伝承・歴史を提示。仏教美術では御上神社伝来の懸仏や応永
27年(1420)銘狛犬、両界曼荼羅。竹生島宝厳寺の重文毛抜形太刀もあり。図録あり(46頁・1000円)。

御上神社
三上山の麓を通って、御上神社にも立ち寄る。国宝社殿拝観。

栗東歴史民俗博物館
  特別展 修法の美術―別尊法と別尊曼荼羅―
(10月27日~12月2日)
密教の修法の際に用いる本尊像としての仏画・仏像に着目。園城寺黄金剛童子像(鎌倉時代・重文)、大清寺千手観
音二十八部衆像(鎌倉時代・重文)、長寿寺聖観音曼荼羅図(鎌倉時代)など仏画の優品多く参考になる。慈雲尊者の
書き入れがある版本両界曼荼羅も(安養寺蔵)。展示替えあり。図録あり(88頁・1000円)。

滋賀県立琵琶湖文化館
 特別展 女性と祈り―信仰のすがた―
(10月6日~11月18日)
女性と仏教の関わり方を、滋賀県内の仏教美術を通して提示。園城寺の吉祥天立像(鎌倉時代・重)、訶梨帝母倚像
(鎌倉時代・重文)、護法善神立像(平安時代・重文)など。仏画では、成菩提院の普賢十羅刹女像は大幅の優品(鎌
倉時代)。熊野観心十界図(個人)、繍仏などあり。図録あり(104頁・1200円)。

大津市歴史博物館
企画展 戦国の大津―天下統一の夢、坂本城・大津城・膳所城―
(10月6日~11月18日)
大津市域の戦国時代史を展観。焼き討ちを逃れた仏画として、西教寺戒壇釈迦如来像展示。ほか、神影像としての豊
臣秀吉、徳川家康の画像や、織田信長画像など。慈眼寺の明智光秀の彫像(江戸時代)も。聚楽第や伏見城出土の
金箔瓦なども。図録あり(128頁・800円)。

 ミニ企画展 園城寺の慶長期の復興と金堂の再建
(10月23日~11月25日)
三井寺金堂の修理事業にあわせ、秀吉による闕所が解かれた後に復興造営された園城寺伽藍にまつわる歴史を提
示。唐院本尊釈迦三尊像は、元和9年(1624)七条仏師康温の作。後陽成天皇七回忌の宮中法華八講本尊が寄進さ
れたもの。その他、闕所時に寺外へ流出したと想定されている、南北朝時代の地蔵菩薩坐像、平安時代の阿弥陀如
来鉄仏といった珍しいものも。常設展示では西教寺那智参詣曼荼羅あり。リーフレットあり。

今月の感想
木喰仏、神像と、群像を林立させる展示手法の有効性を体感。

11月2日
鎌倉国宝館
特別展 鎌倉人の地獄と極楽
(10月5日~11月11日)
地獄と極楽をテーマに、鎌倉地域に残る関連する仏像・仏画を集める。鎌倉時代の地蔵菩薩像がずらりと並ぶ。鎌倉
地域の鎌倉時代彫刻様式を体感。教恩寺阿弥陀三尊像は鎌倉時代初期の作例。中国将来の十王図の諸本が参考
になる。金戒光明寺山越阿弥陀図はごく間近で見られてありがたい。図録あり(88頁・1000円)。

神奈川県立金沢文庫
特別展 鎌倉北条氏の興亡
(10月4日~12月2日)
執権北条氏の成立から滅亡までを主に古文書から提示。桑原区の実慶作阿弥陀如来及び両脇侍像をじっくりと鑑賞。
同像は北条時政息三郎宗時の供養像として建仁2年(1202)までに造像された可能性が示されている。北条時政造像
の願成就院諸尊の像内納入木札も展示。図録あり(80頁・1200円)。

神奈川県立歴史博物館
開館40周年記念特別展 宗元仏画
(10月13日~11月25日)
日本にもたらされた中国宋代・元代の仏画を多数集成。それら仏画は、中国では作品も絵師の名前も残らないが、日
本では本様として尊崇され、残され、継承され続けた。中世美術を考える上で、「宋風」「唐様」などと言われてきた中国
風受容をいかに意味づけるか、古くて新しい大事なテーマを考える上で、重要な作例に身近に接する貴重な機会。館
蔵の十六羅漢像も修理完成後初披露。修理経過もパネル展示。図録あり(192頁・1350円)。

特別公開 重要文化財 他阿真教坐像
(10月13日~12月9日)
先に重文指定された、無量光寺所蔵の時宗二代遊行上人他阿真教像を公開。文保2年(1318)の銘がある寿像。清
浄光寺所蔵の他阿真教の持蓮華、絹本着色他阿真教像なども展示。

東京藝術大学大学美術館
東京藝術大学創立120周年企画 岡倉天心―芸術教育の歩み―
(10月4日~11月18日)
岡倉天心が東京美術学校(現東京芸術大学)で目指した指導とその門下の諸活動を、「天心と東京美術学校」「天心
の理想」「芸術教育の現場」「芸術と社会」の枠組みから提示。芸大所蔵の貴重な資料を存分に活用している。明治期
の国家と美術の関係は文化財保護の原点となるものであり、地域の中にも中央権力の影響が及んだ痕跡が散見され
る。よい勉強になる。図録(258頁・2200円)の関連人物略歴は今後重宝しそう。

東京国立博物館
大徳川展
(10月10日~12月2日)
徳川宗家、御三家、東照宮などに残される徳川家に関する資料を集成。家康関連の資料を、たとえば各種の東照権
現像など、一度に多数見られて勉強になる。室内デザインは、天井の高い室内空間を活かして丈高い仮設ケースと
し、武威を示す部屋では黒で統一した重厚な印象とする。大規模館ゆえにできる展示空間における色の効果を追求す
る試みとその効果を、いかに少ない費用で選択的に利用するか、である。図録あり(312頁・3000円)。高い。

11月6日
京都国立博物館
特別展 狩野永徳
(10月16日~11月18日)
桃山時代の画家狩野永徳をテーマに、一門の作品も集成し、当該時期の狩野派の特徴と魅力を伝える内容。1時間
待ちで入館。中も人が多く、上杉美術館洛中洛外図(国宝)は三重の人垣。聚光院花鳥図襖(国宝)、東博檜図屏風
(国宝)、宮内庁三の丸尚蔵館唐獅子図屏風をしっかりみてよしとする。図録あり(324頁・2500円)。

特集陳列 能楽と美術
(10月11日~11月11日)
個人所蔵で、登録美術品として登録された能装束や謡本、能面、楽器のコレクションを展示。特に装束は加賀前田家
伝来のもの。常設展示の絵画室では、明恵の小特集。ありがたや。

11月11日
知多市歴史民俗博物館
 仏像調査記念 知多に伝わる信仰仏展
(10月20日~12月2日)
知多市内調査によって見いだされた仏像を展観。大興寺大日如来坐像は後補彩色で覆われているものの、像内墨書
に永久2年(1114)の火災、延応2年(1240)の修理の情報あり。法海寺毘沙門天立像は平安時代後期の等身大の
像。法海寺からは中世の仏画も展示。カタログに準じるものとして、『知多市文化財資料第39集 知多市の仏像』を販
売(40頁・1200円)。

松本市美術館
 松本平の神仏 百柱をたてる─空即是色・千住博─
(9月29日~11月11日)
最終日夕方近くに滑り込み。松本市の仏像を集め、千住博作品とコラボレーション。別々に見ればよいと思うが、経営
上の戦略だろうから是も非もない。弾誓寺観音堂の観音菩薩立像は平安時代前期の不思議な、魅力的な像。観松院
菩薩半跏像(重文)、覚音寺千手観音立像(重文)なども。何より、弾誓派と呼ばれる造仏僧たちの活動を知り得たこと
は収穫。木食山居など彼らの作品群は、やや素朴なものから、町仏師作と見紛うほどの丁寧な仕上げのものまであ
り、抱いていた造仏僧のイメージを覆す。あるいは湛海と清水隆慶のような仏師僧と町仏師の協力関係もあったのだろ
うか。図録あり(200頁・2000円)。会場では売り切れ(事前に郵送購入した)。

11月17日
大神神社宝物収蔵庫
 七五三のお参りついでに見学。大国主大神像(大黒天立像、県指定、平安時代)、朱漆金銅装楯(重文、鎌倉時
代)、禁足地出土資料など。

奈良文化財研究所飛鳥資料館
重要文化財指定記念 奇偉荘厳 山田寺
(10月19日~11月25日)
山田寺出土遺物が重要文化財指定されたことを受け、その歴史や研究史を振り返り、遺物の分析の最新情報を提示
する内容。仏像では、銅板五尊像、押出仏、セン仏があり。図録あり(62頁・1000円)。

11月21日
三重県立美術館
特別展示 三重の熊野観心十界曼荼羅
(11月21日~11月25日)
三重県内では現在13点の熊野観心十界図が確認されており、そのうち8幅のほか、那智参詣曼荼羅、浄土双六など、
熊野信仰に関わる重要資料が一堂に集められる。熊野観心十界図が多数集まった、多分初めての展覧会。その図様
が、近世になって変容していく状況にも目配りしていて、その地平の広がりが大きいことを実感する。所蔵者たちが実
行委員会を作り、協賛を集め、美術館の県民ギャラリーを借りての展示であり、会期も短いが、重要な活動である。来
場者も多い。こういった宗教美術を鑑賞したいという県民ニーズは確実にあるはずで、県立美術館としても今後事業を
行って欲しいところ。図録あり(16頁・500円)。

大阪市立美術館
特別展 BIOMBO―屏風 日本の美―
 (10月30日~12月16日)
屏風のある場、機能を踏まえながら、その芸術作品としての多様なありかたを提示。見たいと思う資料(京博・山水屏
風、高野山水屏風、当麻寺十界図屏風、金剛寺日月山水屏風、サントリー美術館四天王寺住吉大社図屏風)のどれ
もがことごとく展示されていない空白の週であった。しまった。図録あり(312ページ・2500円)。

11月23日
和歌山市立博物館
特別展 南海の鎮 和歌山城―その歴史と文化―
(10月20日~11月25日)
そばだからいつでもいけると思っていると、こんな時期。申し訳ない。和歌山城の歴史を、文献資料、絵画・工芸、絵
図、考古資料などなど、多角的な視点から解きほぐす内容。歴代藩主に関する資料や、集められる限りの城下の絵図
がずらりと並び、参考になる。図録あり(100頁・800円)。

11月25日
河内長野市立郷土資料館
特別展 高野詣―河内長野のにぎわい―
(10月27日~12月9日)
高野山への参詣道である、東高野街道、中高野街道、西高野街道は、河内長野市内で合流して高野街道となり、紀見
峠を越えて紀伊国へと連なる。市内に残る、高野山と関わる寺院や史跡などを取り上げる。近代における南海による
沿線開発なども目配りし、有益。和歌山県内で研究しているとついつい聖地としての高野山そのものに視線を集中させ
がちだが、参詣者・街道の存在にも常に意識を向けておくことが肝要と、再認識。当然、熊野も同じこと。図録あり(28
頁・500円)。

今月の感想
宋元仏画展に並んだ、中世の日本仏画に強く影響を与えた作品群、岡倉天心展で見た近代美術の出発点、熊野観心
十界曼荼羅展という基礎的作業。今月もたくさんの学恩を賜りました。このご恩は、私の学問的活動を通じてさらに多く
の方々へ返していくというかたちで、「義務」を果たしていかねばなりません。

12月8日
和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 国宝・古神宝の美―熊野速玉大社の神々―
(12月8日~1月14日)
神社にまつられている神々のために奉納されたさまざまな宝物のことを、神宝と呼びます。こうした神宝は、神社を造り
替える遷宮や神事のときにあわせて新しく作られ、古いものと入れ替えられました。「古神宝」とは、新たな神宝を奉納
したときに、神殿から下げられた古い神宝のことです。和歌山県の南東、三重県との県境を流れる熊野川の河口近く
に位置し、古くから熊野三山の一つとして篤い信仰を集めてきた熊野速玉大社には、およそ1000点もの古神宝が伝え
られており、全て国宝に指定されています。これらの古神宝の大半は、明徳元年(1390)の遷宮に際して、天皇・上皇・
足利義満と諸国の守護の支援によって奉納された貴重な資料です。この企画展では、こうした熊野速玉大社の古神宝
を展示し、その隠された魅力に迫ります。

12月9日
和歌山県立紀伊風土記の丘
特別展 祈りの民具と郷土玩具
(10月6日~12月24日)
会期終盤に、ようやく来訪。すいません。地域性豊かな郷土玩具という表象に注目した展示。同展では郷土玩具の現
代的意義を「教育資源」「観光資源」「伝統工芸」に見て、和歌山県の民俗を知る素材として扱う。これまで意識してこな
かった資料群ばかりで、地域の歴史をみるものさしを新たに獲得した気分。展示資料の多くが、昭和初期に郷土玩具
が注目された時期に形成されたさまざまな人物によるコレクションからの出陳で、こういった収集活動の歴史的意義に
も思いをはせる。しかし、湯峰温泉の土産が狸の土鈴なのはなぜだろうか。図録あり(33頁・400円)。

12月15日
京都府立堂本印象美術館
企画展 印象のかたち-表現いろいろ-
(12月14日~3月9日)
堂本印象の手による絵画や陶器、木彫など、多様な作品を展示。《維摩》、《乳の願い》などの大作は圧倒的。過去の
図録を購入。

佛教大学アジア宗教文化情報研究所
大本山清浄華院学術調査速報展
(11月5日~12月17日)
浄土宗大本山・清浄華院の寺宝を展観。泣不動縁起(狩野永納筆)や不動明王立像(平安時代後期)、山越阿弥陀図
(室町時代)や、江戸時代の仏像、古文書、工芸資料など。資料あり。

12月21日
奈良国立博物館
特別陳列 おん祭と春日信仰の美術
(12月8日~1月20日)
春日若宮の祭礼・おん祭の歴史をながめ、春日信仰に関わる作品をあわせて展示。祭礼の光景を描く絵巻の諸本を
集める。ほかに南都絵所座の作例や、春日曼荼羅など。こういった展示の蓄積の上で、いつかどこかで、大和国人衆
らの動向を踏まえた大和の中世史の歴史展示をみることができればうれしい。図録あり(80頁・1500円)。

特集展示 奈良で甦る縄文の世界~小野忠正コレクション~
(12月8日~2月11日)
東北地方の縄文時代の遺物を展示。昨年新たに収蔵されたもの。コレクションの多様性が確保されるのは、組織とし
てとても健全。

12月23日
大和文華館
 日本の仏教美術―祈りの形象―
(11月16日~12月24日)
大和文華館のコレクションの中から、宗教美術とその周辺の資料を展示。女神坐像(平安時代)の持物の持ち方に注
目してみる。文殊菩薩像(鎌倉時代)はきりりと凛々しい。子が少し騒いでしまい警備員さんにマークされてしまったの
で、あまり粘らず退散。図録なし。

薬師寺
車で横を通りかかったので、立ち寄る。光背がはずされた金堂薬師三尊像に、眼福至福幸福。東博の薬師寺展では、
どんな展示空間を作りあげるのか、今から楽しみ。

今月の感想
展覧会めぐりをする気力が、ちょっと落ちてきたかも・・。

1月7日
熱田神宮宝物館
特別展 神様の息吹―姿をあらわした神々―
(1月1日~1月29日)
神像や神宝、儀式具など、神道美術の優品を集めて展観。熊野速玉大社・速玉大神坐像(国宝)、松尾大社・男神坐
像(重文)、伊奈富神社・男神坐像(重文)、大将軍八神社・大将軍神像(6号、79号・重文)、日牟禮八幡宮・男神像(重
文)などなど。神像研究上著名な作例をまとめて見る機会があることのありがたさ。熱田神宮の踏歌神事面3面をしっ
かり見る。図録あり(64頁・1000円)。

paramita museum
南川三治郎展―熊野古道 巡礼の道―
(1月2日~1月31日)
熊野古道の光景を、8×20という超大型カメラで撮影。巡礼の道というテーマでカミーノ・デ・サンティアゴを撮影し、日本
編として熊野古道を選んだ由。常設展示は池田満寿男が晩年に手がけた陶彫・般若心経シリーズ。館名もこれにちな
んでいる。子はワークシートで遊んで鉛筆もらって喜ぶ。

1月19日
大阪府立弥生文化博物館
発掘された日本列島2007地域展 発掘された大阪2007 水都大阪の国際交流史
(1月19日~3月2日)
大阪府内で出土した、外国との貿易・交流の証しとなる古代から近世までの考古資料を展観。ポスター等に使用されて
いる2点の西洋人をかたどった水滴は、別々のところで出土したものだが、同一の工房で作ったものらしい。壁面のパ
ネルに発光ダイオードを仕込み、太陽電池を取り付けて光らせたり、ガラスの破片の下に紙状で光るシート(端に電極
があり通電させている)をおいて目立たせたりと、見たことのない展示具に出会う。アイデアマンがいらっしゃるようで
す。図録(116頁・1000円)にもコラムだけでなく余録、あとがきなども収め、内容に遊び心がある。学芸員の顔が見える
図録を目指しているのだろう。なお、入館券に、大阪府立近つ飛鳥博物館で開催の「発掘された日本列島2007[全国
展]」(1/26~2/24)の無料入館券がつく。両館が同じ指定管理者(財団法人大阪府文化財センター)ならでは。

和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 きのくにのやきもの―御庭焼を中心に―
(1月19日~2月11日)
 江戸時代後期から明治初期にかけて、和歌山では陶磁器生産が盛んに行われました。この時期、陶磁器生産が盛
んになった背景として、民間の需要の増大に伴って、国産陶磁器の育成を積極的に行おうとする紀伊藩の姿勢があり
ました。同時に、十代藩主治宝・十一代藩主斉順という個性のある藩主の登場も見逃すことはできません。今回の企
画展では、館蔵品や寄託品の“やきもの”のなかから、治宝や斉順と深く関わる御庭焼(偕楽園焼や清寧軒焼)の優品
を紹介します。同時に、これらの御庭焼がどのように展開していったのか、関連資料も含めながら考えてみます。

今月の感想
弥生文化博物館の演示具への工夫のあり方に関心(パネルにダイオードを組み込んで、電源を使わずに太陽電池で
発電)。それが効果的かどうかはケースバイケースとして、その発想が浮かばなかった。世界は広い。

2月2日
大阪府立近つ飛鳥博物館
発掘された日本列島2007
(1月26日~2月24日)
近年全国で行われた発掘調査の成果のなかから、51遺跡約470点を選び展示。長野県の社宮司遺跡六角木幢がお
目当て。複製だった。現品は展示できる状態ではないのかもしれない。静岡県中屋遺跡出土の鞍(鎌倉時代)は祭祀
に用いられたとのこと。不思議。図録あり(104頁・1500円)。

2月10日
大阪市立美術館
常設展示 密教絵画
(1月11日~2月11日)
館蔵品、寄託品の仏画を展示。個人蔵の大威徳転宝輪曼荼羅は正平10年(1355)、文観が絵仏師法眼厳雅に北朝呪
詛のため描かせたもの。同じく個人蔵の千手観音像は、粉河寺式。ほか華厳寺の三十三所観音像など。解説シートあ
り(6頁)。

四天王寺宝物館
四天王寺新春名宝展
(1月1日~2月17日)
重文細字法華経修理完成記念とのこと。国宝懸守、四天王寺縁起、平安初期の阿弥陀三尊像(重文)などおなじみの
もののほか、鎌倉時代の当麻曼荼羅の善本など。図録なし(チラシ裏に各作品の解説文あり)。

2月16日
和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 高僧の姿―きのくにゆかりの僧侶たち―
(2月16日~3月16日)
宗教が人々の生活に大きな影響を及ぼした前近代の社会において、僧侶は人々を救済する宗教家としての一面をは
じめ、学者として、あるいは文化・芸術に関わる知識人として、さまざまな側面を持って活動していました。高野山など数
多くの寺院がある和歌山県でも、日本の歴史に名を残した僧侶がたくさん輩出されています。この企画展では、和歌山
県にゆかりのある僧侶の中から、日本密教の祖・弘法大師空海とその師や弟子たち、華厳宗の僧・明恵上人、禅僧・
法燈国師無本覚心にスポットをあて、その肖像を展示します。総勢37人の肖像を通じて、描かれ刻まれた僧侶の姿
が、なぜ作られ、用いられ、伝えられてきたのか、その背景に迫りたいと思います(図録なし)。

2月17日
和歌山県立近代美術館
美術百科「色・いろいろ」の巻
(前期12月22日~2月24日 後期3月4日~4月6日)
「色」に着目して全館規模で展示を構成。「美術にとっての「色」の意味を見直し、「色」をきっかけにした美術の世界の
楽しみ方を提案する」内容。先日読んだ茂木健一郎『思考の補助線』に人間の色覚は文脈依存的、相対的な性質を持
つ(色の恒常性)とあった。人間の眼が見る限り、誰が見ても同じ確固たる色はないということだろう。仏教用語の「色」
はあらゆる形あるものや現象をさすが、これもまた「色」どうしの相互依存で「色」と認識されるもので確固たる実態はな
い。モノクロームも色と考えたとき、仏教用語の色が意味する概念の大きさが理解できる。いまさらながら、色=
COLOR、ではないということ。

2月24日
徳島県立博物館
特別陳列 徳島城下町の世界
(1月17日~3月2日)
館蔵資料から、近世(~近代)徳島城下の絵図と、庸八焼を選び展示。阿波国大絵図は縦275㎝、横280㎝の大画面。
展示室内に設置したコンピューターで細部も確認できる。明治期の徳島城図と古写真も。図録なし。
 
部門展示 レントゲンでのぞいた博物館の資料たち
(1月22日~3月30日)
徳島県博には保存科学担当学芸員が配属される。館蔵のX線撮影装置で撮影した資料の写真。内部が透ける木偶の
頭のX線写真は、現代美術の作品を見ているよう。図録なし。

徳島県立近代美術館
IWANOMASAHITO 現代アートによる徳島再見
(2月9日~3月23日)
徳島出身の造形作家岩野勝人らの作品を展示。あかいふといはりがねで人体を形作った椅子<MENTAL CHAIR>な
ど。図録の有無は未確認。常設展示には「みるみるカード」という子ども向けワークシートが多種類あるが、ある種の絵
本めいていて、幼稚園児~小学校低学年用に特化させているのだろうか。

徳島県埋蔵文化財センター
発掘へんろ―遺跡でめぐる伊豫・土佐・讃岐・阿波―
新発見考古速報展の四国版。近年の調査で見いだされた遺跡や遺物のほかに、「四国の装飾品」というテーマ設定
で、縄文~平安の時代ごとの装飾品も展示。規模はそんなに大きくはないが、4県の埋文センター共催事業の意義は
大変大きいと思う。リーフレット(8頁)あり。

松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館
常設展示
人形浄瑠璃に関する資料を興味深く鑑賞。彫刻史という立場からは視野に入れて行かねばならない。お七人形は、ほ
んとうにあどけなくかわいらしい。その頭は、抽象表現(人体の各パーツと記号としては同じパーツは配されるが決して
同じ形状としては現れない)の中に微細な感情を含ませ、洗練の極み。

月見ヶ丘海浜公園ビジターセンター
第4回四国ミュージアム研究会
「観仏三昧的生活」の記事をご参照下さい。

2月29日
京都国立博物館
特集陳列 仏師 清水隆慶―老いらくのてんごう―
(1月2日~3月30日)
江戸時代の仏師清水隆慶制作の小彫刻を10件ほど展示。この仏師の研究・紹介は杉山二郎・小林剛などが手がけて
のち断絶がある。近世町仏師の活動のあり方・多様性を考える好個の事例であり(世襲・仏像制作・人形制作・あと多
分文化人的側面など)、国立館で問題提起することの意義は大きい。宝山寺湛海プロデュース造仏事業の実際の担当
者と見られること、あるいは奈良の山間部に幾つか作例が残ることなど、近世史研究の上でもおもしろい人物(たち)だ
と思う。図録なし。

特別展 憧れのヨーロッパ陶磁―マイセン・セーヴル・ミントンとの出会い―
(1月5日~3月9日)
せっかくなので見ておく。鑑賞者の9割は女性だった。見てみて初めて、この展示が日本人の外国製文物への憧れの
眼差しとその受容や模倣をテーマとしていることに気付く。唐物受容の前史とアメリカ大衆文化受容の後史の狭間がヨ
ーロッパ礼賛ということ。

滋賀県立琵琶湖文化館
 琵琶湖文化館収蔵品特別公開 近江の美術 
第2期 か・ざ・り KA・ZA・RI
(2月5日~3月2日)
琵琶湖文化館の収蔵品を大きなテーマ設定によってお蔵出し。洞照寺阿弥陀如来坐像光背(重文)や浄厳院銀造阿
弥陀如来立像などあまり見る機会のないものが見られてうれしい。曾我蕭白の叡山図も。図録なし。小企画展「青の造
形」(2月19日~3月23日)、テーマ展示「風俗画の世界」(2月13日~3月30日)も開催中。

今月の感想
滋賀県立琵琶湖文化館、大阪府立の博物館と、世間は博物館をいらないものと見なし始めたかのよう。以下は覚え書
き。博物館はなぜ必要か。人は過去との関係性でしか時間の概念(あるいは枠組み)を獲得できない。時間の概念が
なければ未来を想定することはできない。未来を担保にしないと人間性も獲得できない。「過去」を残すことは「未来」の
ため。博物館は過去を蓄積する。「温故知新」という故事成語は、はかなり長い思索の射程を含む思想のようだ。ちゃ
んと調べてみよう。以上。

3月1日
高野山霊宝館
平常展 密教の美術
金剛峯寺・諸尊仏龕(国宝)のほか、金剛峯寺・如宝愛染曼荼羅図、奥院六祖像、宝寿院・秘記高野山三鈷松(高野
山蓮華曼荼羅図)など珍しい資料が並ぶ。快慶作四天王のうち広目天だけ眺める。

3月7日
奈良国立博物館
特別陳列 お水取り
(2月2日~3月16日)
仏教美術資料センターでの用事にあわせて来館。恒例のお水取り展。 二月堂本尊光背(奈良時代・東大寺)、類秘抄
(承久2年(1220)・奈良博)、東大寺縁起(鎌倉時代・東大寺)、中臣大祓(江戸時代・東大寺)など。図録あり(80頁・
1000円)。

特集展示 涅槃
(2月14日~3月16日)
涅槃をテーマに優品や珍しい資料を展観。劔神社八相涅槃図(鎌倉時代)や達磨寺仏涅槃図(平安時代)のほか、元
興寺町共和会仏涅槃図は阿弥陀・地蔵来迎をともに描くもの。 浄光寺仏涅槃図(室町時代)は判刷のもの。涅槃図の
多様なバリエーションを見られて勉強になる。 明恵の高弟喜海書写の涅槃会法式(鎌倉時代・高山寺)をじっくり。

3月9日
滋賀県立琵琶湖文化館
琵琶湖文化館収蔵品特別公開 近江の美術 第3期 仏教美術の精華
(3月4日~3月30日)
琵琶湖文化館、休館前最後の展示。仏像・仏画・工芸の優品をお蔵出し。特に仏画に見どころが多い。新知恩院六道
絵(南宋・重文)、法蔵寺如意輪観音像(鎌倉・重文)、大清寺千手観音二十八部衆像(鎌倉・重文)、長命寺勢至菩薩
像(南宋・重文)、西明寺十二天像(鎌倉・重文)、舎那院三月経曼荼羅図(鎌倉・重文)、成菩提院不動明王二童子像
(鎌倉・重文)といった感じ。図録なし。文化館は休館後の計画が立っていないので、是非この機会をお見逃し無く。

栗東歴史民俗博物館
 小地域展 上砥山の歴史と文化
(2月9日~3月23日)
旧金勝地区・上砥山(かみとやま)の歴史を、多角的に取り上げる。白鬚神社板絵著色三十番神像(永享5年(1433)、
ただし展示は裏面の墨書)など。濁酒祭(どぶろくまつり)に関する民俗資料や直会(なおらい)の写真パネルも。参加し
て濁酒飲んでみたい。リーフレットあり(200円)。

長浜市長浜城歴史博物館
企画展 竹生島 弁才天信仰と名宝
(2月9日~3月9日)
竹生島と弁才天信仰の歴史を展観。弘治3年(1557)銘弁才天坐像や毛抜形太刀(平安時代・重文)、空海請来目録
(平安時代)、竹生島宝厳寺文書など。図録あり(20頁・700円)。図録は館職員が版下作成ソフトで版下を作って、印
刷・製本を外注しているもよう。しかし、正直、高いという印象。内容が展示解説文と同じなので、実感としては入館料
(400円)ぐらい。刷り部数が少なく制作費にそれぐらいかかっているのかもしれないが。

3月14日
京阪ギャラリー
生誕290年 木喰展 庶民の信仰―微笑仏―
(3月13日~4月1日)
守口市の京阪百貨店ギャラリーでの木喰の巡回展。昨年の明石文博での展示が楽しかったので、もう一度。……あ
れ、あの感動が甦ってこない。残念。展示空間の使い方・ライティングで印象が変わってしまった。親しみやすい作風で
はあっても、重厚感と空間の余白が必要。20分ほどで退去。湿度調整のため加湿器がいくつか設置されているが、あ
まり高くない天井の空調ダクトから風が強く吹き込み、乾燥による干割れの進行が心配。このあとは山梨県博へ巡回。
図録あり(228頁・2000円)。

京都文化博物館
特別展 乾山の芸術と光琳
(3月8日~4月13日)
研究発表の前に足を延ばして立ち寄る。尾形乾山の鳴滝窯発掘調査による研究成果を踏まえ、作品を集成。巡回展
の最後。金炭窯での数点ずつの低温焼成と知り、作陶の具体的イメージを得られた。楽焼と同じ、ね。図録あり(2300
円)。

3月15日
了法寺
和歌山市坂田の了法寺。寛永21年(1643)銘の釈迦涅槃像(像高162㎝)を中心に約100躯の群衆像からなる立体の
涅槃像。

紀三井寺
松本明慶作、像高12メートルの大千手観音像公開。開眼供養がある5月21日には、秘仏本尊十一面観音立像(重文)
も開帳予定。

和歌山県立博物館
企画展 根来寺の今と昔
(3月22日~4月20日)
 覚鑁上人が現在の岩出市根来の地に寺院を建立して以来、根来寺は、衰退と復興を繰り返しながら現在に至るまで
その法灯を受け継いできました。最近、国の史跡に指定された根来寺の現在へ至る変遷を、さまざまな資料から紹介
します。

3月26日
リーブスギャラリー小坂奇石記念館
不動の智火展
(3月19日~3月28日)
出張の途次、途中下車して立ち寄る。法楽寺境内に立地し同寺の運営。不動明王二童子像(鎌倉時代、重要文化財)
は飛鳥寺玄朝様の忠実な転写本(ただし半跏像)。赤外線写真が並べてあるので図像理解が容易。十巻抄は正平13
年(1358)実舜筆。橋寺伝本を書写したもの。平安時代後期の銅造蔵王権現像(大阪府指定)も。図録無し。

3月29日
東寺宝物館
 東寺鎮守八幡宮と足利尊氏
(3月20日~5月25日) 
足利尊氏没後650年にちなんで、関係の深い東寺八幡宮の資料を展示。八幡三神像のうち、女神坐像1躯と武内宿禰
坐像を展示。女神坐像の大きさに圧倒され、感動する。平安時代初期の神像の立体造形を、心に焼き付ける。八幡神
像、いつか拝観する機会があることを願う。図録無し。絹本着色弘法大師像(談義本尊)も展示。

醍醐寺霊宝館
 特別公開 世界遺産醍醐寺展―やすらかな白描の世界と醍醐の春―
(3月22日~5月11日)
醍醐寺所蔵の白描粉本の優品がずらり。円心の不動明王像、長賀の不動明王像、信海の毘沙門天像、深賢の善女
竜王像や、諸菩薩像8幅、十二天像12幅、十二神将図像上下巻、金翅鳥及大輪明王像などなど。図録無し。残念。

法界寺
時間があったので、思い立って立ち寄る。阿弥陀堂(国宝)内の阿弥陀如来坐像(国宝)を久しぶりに鑑賞。定朝の次
世代(遺風の継承期)において、既に立体感覚は変化している。定朝は、平等院阿弥陀に見られる立体への微細な感
覚を、いかに獲得したのだろうか・・・。

今年度訪問した館・寺院はのべ119ヶ所、鑑賞した展覧会は115本でした(うち和歌山県博分10本)。