展覧会・文化財を見てきました。

─展覧会鑑賞・文化財見学に関する勝手な感想─

最終更新日 5月21日


2019年度

4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月


4月30
中之島香雪美術館
 特別展 明恵の夢と高山寺
(3月21日~5月6日)

 自分の担当展覧会をオープンさせ、約2ヶ月ぶりの展覧会鑑賞。村山コレクションに収蔵される、明恵筆の夢記1巻(建仁4年〔1204〕ごろ)を結節点として栂尾高山寺の文化財を核としつつ自館コレクションを散りばめた明恵&鳥獣戯画展。樹上座禅像と夢記、そして仏眼仏母像を通じて明恵とまみえるありがたい機会。溢れる慈悲と真摯さ、そして明晰な思考、かくあるべしと背筋を伸ばす。鳥獸戯画も贅沢に参考出品。行列もほぼなく、かくあるべし。図録あり(176ページ、1800円)。

5月1日
東京国立博物館
 特別展 国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅-
(3月26日~6月2日)

 東寺宝物の東京出開帳展。風信帖(空海筆)、御請来目録(最澄筆)の国宝書蹟に始まり、真言七祖像、五大尊像、西院曼荼羅、京博十二天像の国宝絵画、唐請来密教法具、西院御影堂天蓋の国宝工芸品、そして講堂諸尊の数々と女神像の国宝彫像と、タイトル通りのラインナップ。東博平成館の強みである大空間を活かして広々と林立させた講堂諸尊像は、等間隔に配置された丸い台、そしてその間に多数参集する善男善女も一体となって、仏の充満する立体的な曼荼羅空間を実現しているかのよう。空海の意楽による特殊な羯磨曼荼羅であるので、いろんな再解釈や再構成も許されましょう。普段見られない背面のようすをたどりながらぐるり一周。図録あり(272ページ、2700円)。本館では特集「密教彫刻の世界」(3/19~6/23)を連動させて開催中。東博のおなじみの彫刻コレクションをうまく再配置。

 特集 2019新指定国宝・重要文化財
(4月16日~5月6日)

 恒例の新指定国宝重文お披露目展。彫刻主体に大阪・壺井八幡宮の頼円・実円作の神像をじっくり鑑賞(ちょうど自館で同じ頼円・実円作の広利時十一面観音立像を展示中)。ほか兵庫・朝光寺千手観音立像や新薬師寺地蔵菩薩立像、萬行寺阿弥陀如来立像といった、地域の中で地道に調査され評価されてきた作例をピックアップしているのが、素晴らしい方向性。和歌山県からは阿須賀神社の懸仏群が考古の分野で阿須賀神社境内(蓬莱山)出土品として指定。戦後、台風被害で倒れた社殿裏の木の根元から出土し、東博が発掘調査しているという珍しい事例。世が世なら東博収蔵品だったかも。

埼玉県立歴史と民俗の博物館
 特別展 東国の地獄極楽
(3月16日~5月6日)

 地獄極楽をテーマとしつつも、3章副題の「浄土宗第三祖良忠と関東三派の東国布教」を基軸として展覧会構成。白旗派・名越派・藤田派の浄土宗関東三派の教線拡大の状況を地道な資料調査と地域史研究の成果を踏まえて丁寧に提示。善光寺式阿弥陀三尊像は、下野国那須伝来の東博建長6年(1254)在銘像、栃木・円通寺(名越派)の作例、福島県いわき市所蔵の如来寺旧蔵嘉元2年(1304)修理銘を有する作例(伝良忠所蔵像)を紹介。ほか熊谷市東善寺の快慶風が顕著な阿弥陀如来立像も出陳。図録あり(128ページ、1000円)。

群馬県立歴史博物館
 企画展 大新田氏展
(4月27日~6月16日)

 新田義貞を巡る研究の大幅な進展を、実物資料を集約して展覧会として共有化を図る意欲的な内容。昨年発見された足利尊氏像(神護寺の肖像と似るもの)や福井・藤島神社の新田義貞像、太田市総持寺の伝儀貞像(本来は怖い顔の随身像)など肖像を集めるとともに、長楽寺文書など多数の中世文書を集約して、堅実な歴史叙述に努めて新田一族の鎌倉~南北朝期の動向をあきらかにする。地域史研究の観点から仏像・神像の調査も行われ、その成果も反映。太田市十二所神社の神像は正元元年(1259)造像。神仏分離で隣の円福寺から神社に移されたという、普通とは逆のパターンで、重要な新資料。その円福寺からは南北朝時代とされる毘沙門天立像も出陳。総持寺の不動明王立像は10世紀の重量感あふれる作例で県指定文化財指定。迫力満点。世羅田の長楽寺の文化財も多数出品され、新田荘の中世をモノ資料から見つめる。図録あり(152ページ、920円)。

5月5日
弘法寺(岡山県瀬戸内市牛窓)
 弘法寺踟供養(岡山県指定無形民俗文化財)

 阿弥陀如来と菩薩・天童の仮面をかぶった聖衆が来迎を再現する迎講のうち、現在唯一阿弥陀如来について鎌倉時代の被仏を用いて行われる貴重な事例。聖衆は菩薩6人、地蔵2人、天童2人の10人からなり、往生者は中将姫。脇を支えられながら、ゆっくりと移動し、またお辞儀を行う阿弥陀の姿は、来迎の光景を臨場感をもって再現するもので感動。昭和42年に主要堂宇の火災により中断されていたが、平成9年から復活。『千手山弘法寺踟供養』(關信子著、1000円)に詳細が記される。

5月9日
石川県立歴史博物館
 特別展 いしかわの神々-信仰と美の世界-
(4月27日~6月2日)

 石川県内の資料を中心に神像・本地仏像・垂迹画・懸仏・神社奉納品及び祭祀に関わる考古資料を集める。七尾市・久麻加夫都阿良加志比古神社の男神坐像(木心が二つあり神木を使用したか)、珠洲市・須須神社の男神坐像5軀のうち3軀など重要文化財を含む約20軀の神像の中では、能登半島の突端、珠洲市・白山神社の男神坐像、同・古麻志比古神社の男神坐像がともに10世紀に遡る法量も大きな作例で重要。ほか志賀町・龍護寺薬師如来坐像(県指定)は少彦名社本地仏、羽咋市・正覚院阿弥陀如来坐像(重文)は気多神宮寺講堂本尊。冒頭ごあいさつに過疎化・高齢化による文化財継承への危惧が開催動機とされていて、共感。図録あり(172ページ、2000円)。会期中無休。

石川県埋蔵文化財センター
 春季公開 
(4月27日~5月26日)

 同センター収蔵の「重要文化財 加賀郡牓示札(津幡町加茂遺跡出土)」(4/27~5/6)と「県指定文化財 野々江本江寺遺跡出土品(珠洲市)」(4/27~5/26)の展示公開。加賀郡牓示札は嘉祥2年(849)銘を有する現存する唯一の古代の牓示。本江寺遺跡出土品からはこれも現存最古の木製笠塔婆と木製板碑。笠塔婆は梵字バンを表した額が残存。歴博展示の神像も含め、宗教文化を考える上で能登半島先端の珠洲市の資料が極めて重要であることをしっかり把握。手作りリーフレットあり。

5月14日
奈良国立博物館
 特別展 国宝の殿堂 藤田美術館展-曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき-
(4月13日~6月9日)

 現在休館中の藤田美術館コレクションの優品を、指定文化財の全件を含んで網羅的に紹介。曜変天目茶碗(国宝)を展覧会のアイコンとして押し出しつつ、奈良に伝来し明治期の混乱の中で流出した仏教美術・宗教文化に関わる資料群を重厚に選定。興福寺大乗院伝来の玄奘三蔵絵、内山永久寺伝来両部大経感得図(前期)、快慶作の地蔵菩薩立像、千体聖観音菩薩立像(興福寺千体仏)、伝西大寺旧蔵の仏像彩画円柱、灯明寺旧蔵四天王像扉絵、東大寺戒壇院伝来十六羅漢図、薬師寺休ヶ丘八幡宮伝来の花蝶蒔絵挾軾、手向山八幡宮伝来の唐鞍などなど。仏教美術の再発見・再評価と、「国宝」保護の営みへの啓発的視点を通底させることで、他機関コレクション展でありながら文化財保護法に基づき設置された仏教美術の殿堂という奈良博の特徴が存分に発揮されていて違和感がないのはさすが。図録あり(286ページ、2300円)。

高野山霊宝館
 企画展 高野山と不思議な話
(4月20日~7月15日)

 山内伝来の数々の文化財を展示し、高野山における祖師や先師、神々、聖地や神器にまつわる伝承や神話を紹介。地蔵院本高野大師行状図画(重文)は大師と狩場明神出会いの場面を展示。竜光院厨子入倶利伽羅竜剣(重文)、伝船中湧現観音像(国宝)、成福院天河弁才天像、影向した姿を描いた宝寿院高野明神像・丹生明神像のほか、正智院道範大徳像、浄菩提院の覚海尊師像、金剛峯寺の応其上人像、豊臣秀次の辞世の句を書いた直筆短冊、江戸時代に雷に打たれて割けた大塔心柱などなど。図録なし。ついでに壇上伽藍の御社にお参り。

5月17日
龍谷ミュージアム
 企画展 因幡堂 平等寺-京に飛んできたお薬師さん-
(4月20日~6月9日)

 因幡堂平等寺の伝来資料と関連資料を集約して展観。東京国立博物館所蔵の因幡堂縁起(重文)のほか、因幡堂縁起の諸本を徹底集約。本尊薬師如来立像(重文)は因幡堂縁起に長保5年(1003)に因幡国から橘行平邸に飛来したと語られる「飛んできたお薬師さん」。造像時期を検討する上でも縁起の「飛来」時期は示唆的。やはり因幡国から飛来と伝承される延算寺薬師如来立像(重文)も関連資料として出陳。ほか平等寺伝来の中近世仏像が多数公開され、中でも元和7年(1621)康正作の弘法大師坐像はその最晩年の作で、近世仏像研究の上で重要な発見。平等寺近隣西念寺の阿弥陀如来坐像は、湛慶あるいはそのごく周辺の有力仏師の手になる洗練された鎌倉時代の作例で、ありがたい出陳。仏教文化をテーマとする博物館として、京都の寺院の文化財を新規調査を踏まえて水準高く紹介するこうした活動は重要で、大学ミュージアムの地域貢献のありうべきかたちをも体現している。図録あり(104ページ、1800円)。

京都国立博物館
 特別展 時宗二祖上人七百年御遠忌記念 国宝 一遍聖絵と時宗の名宝
(4月13日~6月9日)

 真教上人700年遠忌の西国での先行展示。時宗本山清浄光寺と、七条道場金光寺を引き継ぐ長楽寺の資料群を中心に時宗(時衆)の歴史を紹介し、真光寺・清浄光寺・金蓮寺ほかの遊行上人縁起絵の諸本を集約して二祖他阿真教を顕彰する。目玉の一遍聖絵(国宝)12巻の全巻公開にあたっては、その美術史的鑑賞の便に留まらず、各巻模本も活用しつつ多数の場面を展開して一遍と時衆の(縁起的)歴史の紹介にも目配りする。また長楽寺・蓮台寺・常称寺の真教像、長楽寺・西郷寺・迎称寺の一鎮像をはじめ、鎌倉~南北朝期の遊行上人像を集める貴重な機会。各地の時宗道場伝来の仏像仏画も取り上げ、阿弥陀寺・聞名寺の行快作例ほか鎌倉時代彫像や、金蓮寺阿弥陀如来像(南宋)や阿弥陀浄土変相図(南宋~元)の宋元仏画など、時宗の幅に留まらないラインナップ。図録あり(282ページ、2500円)。

東大寺ミュージアム
 特集展示 華厳経の絵画
(4月24日~5月28日)

 華厳経にまつわる経典と絵画を展示。紺紙金字華厳経(重文)は建久6年(1195)の大仏殿落慶供養会に際して書写された後鳥羽天皇奉納品。華厳五十五所絵断簡は、勝熱婆羅門、大願精進力救護一切衆生主夜神、堅固解脱長者の3面。貴重な平安仏画。図録なし。同行の皆さんと多聞天立像・持国天立像をじっくりと鑑賞。

6月

7月

8月

9月

10月

11月


12月

1月

2月

3月