4月22日
奈良国立博物館
開館130年記念特別展 超・国宝-祈りのかがやき-
(4月19日~6月15日)
仏像館での仏像供養(東大寺出仕)に学生40人と参列し声明を拝聴してから本館へ。開館130年の節目に、奈良と奈良国立博物館ゆかりの仏教美術の精華を一堂に集約して紹介。壬辰検査、奈良博覧会開催から明治27年の同館開館までの経緯を示しつつ、開館以来、主に南都諸大寺から寄託・借用され展示された仏教美術を中心に、博物館と所蔵寺社の関係史を踏まえながら古代・中世日本美術史の基軸資料を7章に分けて示す。法隆寺百済観音像、中宮寺菩薩半跏像(5/20~)、中宮寺天寿国繍帳(~5/15)、清凉寺釈迦如来立像(5/20~)などなど書き切れない優品名品143件。展示全体に奈良国立博物館の歴史と存在意義を通底させた、同館ならではの「国宝展」を構築。世界平和とよりよい未来への希求を伝える最終章は、現代を見つめ、未来をまなざす新時代の博物館活動への意欲的な一歩。図録あり(372ページ、3300円)。
なら歴史芸術文化村
特別公開 修理完成記念 野迫川村平区の仏像
(4月19日~6月1日)
文化村内修理工房にて修理された(施行:美術院国宝修理所)野迫川村平区釈迦如来坐像を公開。鎌倉時代前~中期の慶派仏師作例で奈良県指定文化財。像表面の補彩除去とともに台座の古材を組み直して復元し安定を図るもの。修理過程について詳細なパネルを多数作って紹介し、修理工程を示す映像も付置。同地区伝来の地蔵菩薩坐像(鎌倉初期ごろか)も展示し、野迫川村の歴史的・文化的環境や平区のオコナイなど民俗行事なども紹介。美術的価値・修理情報だけに留めずその伝来環境を示すことでより深い鑑賞につなげる構成は地域博物館としてあるべき堅実で誠実な態度。リーフレットあり(A3・両面、無料)。
4月30日
高野山霊宝館
重要文化財指定記念特別展 大伽藍
(4月2日~6月29日)
高野山壇場伽藍(大伽藍)諸堂が重要文化財に指定されたことを記念し、伽藍諸堂の歴史と伝来した文化財を紹介。西塔旧本尊の大日如来坐像(平安初期)、大会堂伝来の阿弥陀如来坐像(平安末)、六角経蔵旧本尊の康正作宝冠釈迦如来坐像(天正18年)や善女龍王像(久安元年)、龍光院弘法大師像(鎌倉、後期展示)、などの優品のほか、御手印縁起写(室町か)、灌頂堂旧材の明算像(江戸)、木食応其像(慶長6年)、不断経使用の青磁大香炉(元~明)、荒川経、細字金光明最勝王経などなど多数展示。初見の高野山伽藍図(江戸時代)は伽藍と奥之院、霊験像安置堂舎のみを配して子院を描き込まない珍しいタイプの高野山図。やっぱりこういうのがあったのねと膝を打つ。根本大塔心柱破損部材は延享3年(1746)に大塔に雷が落ちた際、心柱が割れ落ちた高324㎝の部材片。寺務櫻池院伝誉、年預寂静院快融、年預代日光院英信が連名で、心柱欠損の事情を部材に墨書して残されたもの。本展を象徴するよい資料。図録なし。
5月2日
和歌山市立博物館
企画展 出版文化とわかやま-本を刷り、絵に刷られ-
(4月26日~6月29日)
江戸時代の和歌山で花開いた本屋・貸本屋と出版の文化の様相を、城下の書肆の尽力により集積された一大コレクションと館蔵品を活用し、146件の資料(前後期展示替え)から紹介。藩校と儒学、本居宣長と国学、松尾塊亭と俳諧、博物学と医学、画人とそのサロン、和歌山が舞台の浮世絵、和歌山の名所と、その幅広いトピックスのそれぞれに出版が関わり文化の普及に寄与していたことを示す。岸熊野の熊野先生南山紀行、本居宣長・大平・内遠の肖像、松尾塊亭雷公子誤浴図、岩瀬広隆鬼念仏図、坂本浩雪菌譜、塩路鶴堂隺堂画譜など。図録なし。
和歌山県立博物館
特別展 仏像のプロフィール-わかやまうまれ、わかやまそだち-
(4月26日~6月1日)
信仰・造形・歴史の重層性から生じる仏像・仏画の魅力とその見方を、平易にポップにそして真面目に読み解く仏教美術入門展。仏像の世界、仏像のなまえ、仏像のからだ、仏像のふるさとに章を分け、寄託資料を有効に活用しつつ、新資料も紹介。仏像では正平8年頼円ら作広利寺十一面観音立像、貞和3年康俊作海雲寺釈迦如来及び迦葉・阿難像、妙法寺大日如来坐像など、仏画では南北朝時代の初公開作例である蓮開寺仏涅槃図や虚空蔵菩薩像(館蔵)を紹介。前者は正徳4年に高野山で修理され、後者は寛永21年に無量光院から駿府城下の寺院に譲られたもの。文化財の魅力は外形だけに留まらず、その思想的背景や関係する人々の記憶の蓄積(=プロフィール)を体現するところにあることを丁寧に示す。子ども向け展示として構築することで総ルビとしたりサブパネルを多数用意するなど、鑑賞体験のハードルを下げる工夫を凝らす。図録あり(90ページ、1300円)。図録デザインのポップさ(内容は真面目)と展示室の重厚さのギャップが両立するのも仏教及び仏教美術の懐の深さ。
5月4日
京都国立博物館
特別展 日本、美のるつぼ-異文化交流の軌跡-
(4月19日~6月15日)
大阪万博開催にあわせ、日本文化における外国文化との憧憬・融合の諸相を絵画・工芸資料を軸として提示。時宜に合わせたポップで総花的な名品展とはせず、各章各作品とも近時の研究の先端的な着眼が堅実に示され、アカデミックなスタンスが通底した美術史展。萬福寺の范道生作羅怙羅尊者像と韋駄天立像をあちらこちらからありがたく眺め、ボストン美術館吉備大臣入唐絵巻をじっくりと鑑賞。図録あり(272ページ、3080円)。
京都文化博物館
令和7年 新指定国宝・重要文化財
(4月19日~5月11日)
文化庁京都移転に伴い本年より京都文化博物館を会場に開催。新指定文化財のお披露目にありがたく馳せ参じる。東京国立博物館伎楽面、圓照寺康俊作地蔵菩薩立像、松尾大社神像、三の丸尚蔵館絵師草子、人物写真帖ほか、じっくり鑑賞。図録あり(88ページ、1,700円)。
5月7日
奈良県立美術館
コレクション展 新・古美術鑑賞-いにしえを想いて愛せる未来かな-
(4月5日~5月18日)
美術史実習で見学。同館の優れた日本美術コレクションを有効活用し、屏風の開き方を変えたりするなどさまざまな展示の工夫によりかつての作品受容の場と環境にコミットしていく攻めた展示。室町時代の秋冬山水図屏風(伝雪舟)、高士探梅図、菊池容斎筆五百羅漢図、浮世絵も多数。展示作品を題材に短歌をよむワークショップは、作品のより深い鑑賞につながる優れた手法でナイスアイデア。図録なし。
5月10日
奈良国立博物館
開館130年記念特別展 超・国宝-祈りのかがやき-
(4月19日~6月15日)
公開講座「文化財の今、国宝の未来-文化財受難の時代を超える-」を担当。15分押しでなんとかお役目果たした後、展示室一周。展示替え前の作品を中心に鑑賞。
5月13日
京都国立博物館
特別展 日本、美のるつぼ-異文化交流の軌跡-
(4月19日~6月15日)
美術史実習の見学会でさっそく再訪。安祥寺の蟠龍石柱をぐるぐる囲繞する。
龍谷ミュージアム
企画展 大谷探検隊 吉川小一郎-探求と忍耐 その人間像に迫る-
(4月19日~6月22日)
大谷門主の側近で大谷探検隊第三次調査を主導した吉川小一郎の遺族宅から近年新たに確認された資料を公開。古写真や手紙類による大谷探検隊の動きを明らかにする資料とともに、二楽荘の造営と閉鎖にも深く関与しており、本願寺(西本願寺)と大谷門主の動向も把握できる重要資料群。龍谷大学図書館収蔵の大谷探検隊コレクションから伏羲女媧図(7~8世紀)、朱地連珠天馬文錦(7世紀)、死者の紙製靴(延寿15年[638]周隆海買田券を転用)や、吉川家所蔵の金剛般若波羅密多経断簡(8世紀)など。仏教史研究上意義ある新資料群を共有する貴重な機会。図録あり(132ページ、2000円)。
5月20日
大和文華館
特別展 没後50年 矢代幸雄と大和文華館-芸術を愛する喜び-
(4月12日~5月25日)
美術史実習で見学。大和文華館の創設を構想してそのコレクション形成を行った初代館長矢代幸雄の美術史家としての生涯と美術資料へのまなざしを紹介。原三渓との深い関わり、欧州留学とボッティチェリ研究、中国美術との接近と学び、東洋美術への深い造詣とコレクション形成をそれぞれ示すことで、館のなりたちを活写する。原山渓旧蔵の優品(一字蓮台法華経、寝覚物語絵巻、笠置曼荼羅、伝周文筆山水図屏風、扇面貼交手筥、光琳筆銹絵山水文四方火入など)を館蔵品とそれ以外(孔雀立葵図屏風・アーティゾン美術館ほか)も含めて並べ壮観。1935年から翌年にかけロンドンで開催された中国芸術国際展覧会に外国委員として矢代が加わっており、その日本からの出陳品(永青文庫銀人立像、静嘉堂文庫美術館三彩貼花文壺、東京藝術大学金銅菩薩立像(北周)ほか)を追跡して展示している点は重要な学術成果でもある。ほか館蔵品の作品解説には各資料の収集過程が詳述。図録あり(124ページ、1980円)。
5月22日
高野山霊宝館
重要文化財指定記念特別展 大伽藍
(4月2日~6月29日)
前期に続き、展示替え後の後期展示訪問。竜泉院弘法大師像(重文)をじっくり拝観。裱背に建治2年(1276)銘とともに弘福寺常住と記され、もと川原寺伝来資料。金剛峯寺金銅水神像(重文)の制作時期をいろいろ思案。銀製の双身歓喜天像が展示室に並ぶ奇跡。ほか寛元3年(1245)銘を有する大日如来像(重文)も展示替えで公開。図録なし。本館の平安時代初期不動明王坐像をぐるぐる回ってその表現をじっくり鑑賞。
6月5日
7月日
8月日
9月日
10月日
11月日
12月日
1月日
2月日
3月日