展覧会・文化財を見てきました。

─展覧会鑑賞・文化財見学に関する勝手な感想─

最終更新日 5月18日


平成30(2018)年度

4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月


4月16日
金剛寺
 金堂落慶記念 新国宝三尊特別拝観
 (3月28日~4月18日)

 平成21年(2009)から行われていた金堂修理が完成し、同じく修理が施されて国宝指定された大日如来坐像・不動明王坐像・降三世明王坐像の三尊が復位して落慶。大日如来は金剛寺創建の治承2年(1178)ごろ造像、不動明王は今回発見された像内銘により天福2年(1234)行快の作と判明、降三世明王も同作。修理の成果として、大日如来の台座・光背が本体完成後も未完成のまま半世紀ほどをかけて順次整備されたこと、頭部背面側部材の上端に螺髪が刻まれ、薄板材を貼り回して隠されていることが判明。造像時に他像の部材を転用したのだろうとのこと(奥健夫「天野山金剛寺金堂三尊像の保存修理と国宝指定」『月刊文化財』650、2017・11)。結縁。

4月22日
四天王寺宝物館
 国宝「懸守」納入の仏像-科学調査による新知見速報-
 (4月21日~5月6日)

 京博国宝展出陳時に行ったCTスキャンで、現存最古の懸守(国宝)7懸のうち桜折枝文分の内部に円筒形の仏龕が納められていることが判明。仏龕そのものは懸守を解体しないと出せないが、スキャンデータを元に3Dプリンターで出力したレプリカを展示。極小サイズであるが、平安後期、12世紀(前半か)の如来立像で精緻な台座・光背を伴う。檀龕の蓋部分には案上に香炉・供華が表され、地には截金で菱繋文を施す。院政期小檀像の新資料(見れないけど)。檀像つながりで千手観音及び二天箱仏(平安後期・重文)を参考展示。企画展「地より湧出した難波の大伽藍-四天王寺の考古学-」(図録あり、40ページ、無料)、特集陳列「四天王寺の春」も開催中(3/11~5/6)も開催。

4月25日
東京国立博物館
 平成30年新指定 国宝・重要文化財
 (4月17日~5月6日)

 恒例新指定展。高野山領大田荘(広島県世羅町)の鎮守・丹生神社の丹生明神坐像・高野明神坐像に張り付いて鑑賞。高野山鎮守天野社祭神像の木型と推定される和歌山・三谷薬師堂女神坐像との類似は、そのかたちの先後関係とともに、鎌倉時代初期の高野山における地域支配と神像図像の整備・造像のあり方を考える上でも重要。ほかに鎌倉初期慶派様式を示す、絢爛豪華な彩色・截金の西光寺地蔵菩薩立像、「巧匠法眼快慶」銘を有する圓常寺阿弥陀如来立像、康俊の手になることが確実な大光寺乾峯士曇坐像、奈良仏師の手になる本山慈恩寺の釈迦如来坐像・文殊菩薩坐像・普賢菩薩坐像などなど、彫刻の優品をありがたく鑑賞。

 創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年特別展 名作誕生-つながる日本美術
 (4月13日~5月27日)

 國華創刊130年記念展。日本列島に伝わった美術資料のうち、人々の心を揺さぶる「名作」が、いかなる「つながり」によってかたち作られたのかを作例の分類と比較によって提示する、まさしく美術史のアカデミックな研究手法を展示室内に立ち上げる。彫刻では、檀像→代用檀像→木彫像の隆盛という、木彫論の四半世紀の成果を提示。宗教美術ではほかに、法華経と女人救済と普賢菩薩像、縁起と儀礼の場と祖師絵伝を、それぞれテーマとしてピックアップ。ほか雪舟・宗達・若冲、伊勢物語・源氏物語などを取り上げ、正統としての中国美術、正統としての古典との関わり方(模倣、転写、転用、意匠化などなど)の諸相を提示。形式化や硬直化についても触れると「写し」のイメージは理解しやすいが「名作」展では難しいか。図録あり(320ページ、2500円)。

北区飛鳥山博物館
 企画展 徳川家光と若一王子縁起絵巻
 (3月17日~5月6日)

 徳川家光が寛永18年(1641)に制作した若一王子縁起絵巻、上中下巻の模本を極力長ーく広げて展示するとともに、巻頭から巻末までの図版と詞書全文もあわせて掲示する丁寧さ。寛永期幕府寺社政策と詞書編纂に当たった林羅山の思想など原本(幕末期焼失)の制作背景に迫りつつ、模本群の制作者についても精緻な検討を行って、資料の歴史的位置づけを明確にしており有益。図録(108ページ、800円)にも、全紙の図版(画面が分断されないよう配慮)、詞書、関連資料、論考を掲載。

5月3日
滋賀県立安土城考古博物館
 特別展 武将たちは何故、神になるのか-神像の成立から天下人の神格化まで-
(4月28日~6月17日)

 神像表現と肖像表現の諸相を踏まえ、戦国~安土桃山時代における武将の神格化についてクローズアップする。主題部分(Ⅳ章)では織田信長・豊臣秀吉(豊国大明神)・徳川家康(東照大権現)の画像と彫像、秀頼筆の豊国大明神神号を集め、Ⅰ~Ⅲ章で仏像・神像・垂迹画をぎっちり展示。本隆寺僧形神坐像、地主神社僧形神坐像、山門鳥居堂男神立像、玉祖神社男神・女神坐像、市比賣神社女神坐像、壺井八幡宮女神坐像・童子形神坐像、談山神社藤原鎌足像、菅山寺天神坐像、大田神社僧形天神坐像、摠見寺織田信長像、理智院豊国大明神坐像、大樹寺東照大権現坐像、徳川記念財団東照大権現霊夢像などなど。神像とは何かという難解かつ重要な研究課題に対して、展覧会という形でモノ資料をもって体系化する意欲的な取り組み。図録あり(146ページ、1500円)。所収の山下立「日本の神とその造形をめぐって」は18ページにわたる大論文。 
 

5月4日
奈良国立博物館
 創建1250年記念特別展 国宝 春日大社のすべて
(4月14日~6月10日)

 藤原氏の氏社である春日社の創建1250年記年展。国宝古神宝類と武器・武具などの神宝、および多様な春日曼荼羅と春日本地仏の遺宝を紹介。昨年初頭の東京国立博物館「春日大社 千年の至宝」に引き続いての大規模展示であるが、何より、バリエーション豊富な春日曼荼羅(春日宮曼荼羅・春日補陀洛山曼荼羅・春日浄土曼荼羅・春日社寺曼荼羅・春日南円堂曼荼羅・春日若宮曼荼羅・春日鹿曼荼羅・春日本迹曼荼羅・春日本地仏曼荼羅・春日名号曼荼羅)を徹底的に集成しているのは、これまで継続して春日信仰展を開催してきた奈良博の膨大な研究蓄積によるもので、図録(376ページ、2500円)所収の谷口耕生「春日曼荼羅の成立に関する覚書」とあわせ、現時点での春日曼荼羅研究の到達地点が提示される。古神宝、春日曼荼羅とも、前後期で(後期:5/15~)大半が展示替え。

春日大社国宝殿
 御創建1250年記念展Ⅱ 聖域 御本殿を飾る美術
(4月1日~8月26日)

 春日大社本殿修理に伴って剥ぎ取り保存された御間塀障壁画四面など、神の住まう空間を荘厳する調度や護衛する霊獣を集めて展示。四社殿それぞれに安置された鎌倉時代(一部室町時代)の獅子・狛犬4対、瑠璃灯籠、花菱螺鈿八足案など。

5月14日
法隆寺大宝蔵殿
 法隆寺秘宝展
(3月20日~5月31日)

 恒例、春の秘宝展。飛鳥~鎌倉時代の仏像のほか、建長6年(1254)絵仏師尭尊作の聖皇曼荼羅、貞治3年(1364)の法隆寺縁起白拍子、紺絹地金銀泥両界種子曼荼羅(鎌倉時代)、七大寺巡礼私記(展示部分は法隆寺条)など。西院伽藍で金堂諸尊と講堂諸尊、大宝蔵院のきらめく仏像群、東院伽藍の救世観音像もご拝観。

當麻寺
 練供養会式

 来年から4月14日(中将姫命日)に日程が変わるので、旧暦による最後の練供養(来迎会)を見学。平日ながら善男善女が大参集。来迎のリアリティを体験することは、(死後の)救済の確信を得るための行為。道具立てとしては、視線の集中する観音が奉持する往生者像が重要。しっかり写真撮る。

5月16日
東寺宝物館
 東寺の菩薩像-慈悲と祈りのかたち-
(3月20日~5月25日)
 食堂本尊千手観音立像の修理完成から50周年とのことで、菩薩をめぐる資料を集める。月輪内に結跏趺坐する聖観音を中央に描き、その周囲に八葉の蓮弁上の8駆の阿弥陀如来が取り囲む様子を斜め上から俯瞰する特殊な観音曼荼羅(阿弥陀曼荼羅)、9世紀の聖僧文殊坐像など。鎌倉時代とされる菩薩坐像(平成4年(1992)発行『東寺の菩薩像』16番の像)は、高髻(ただし大部分亡失)上部正面に髪束で花弁形を表し、背面臀部の横皺のある腰帯表現があって、平安時代末期の奈良仏師作例のよう。図版では全然分からなかったので、やはり展覧会はありがたい。リーフレットあり(8ページ)。

龍谷ミュージアム
 特別展 お釈迦さんワールド-ブッダになったひと-
(4月21日~6月17日)

 仏教総合博物館を表明する龍谷ミュージアムで、仏教の開祖であるガウタマ・シッダールタを真正面から紹介し、釈迦への思慕(信仰)の系譜をたどりながら、仏教芸術の基本たる仏伝の表象を紹介する好企画。奈良博仏伝浮彫はストゥーパを模した台上にぐるりと展示して効果的。鹿王院の伝顔輝筆釈迦三尊像や伝牧谿筆出山釈迦図、西来寺出山釈迦図、中之坊寺の周四朗筆仏涅槃図、叡福寺涅槃変相図といった宋元仏画の数々、そして涅槃図の周囲に釈迦の事蹟を配した涅槃変相図や釈迦八相図など仏伝の芸術を集め、現存唯一の写本である金剛寺十二問経や七寺釈迦譜など仏伝諸経典も充実。手塚治虫『ブッダ』の直筆原画も各所に効果的に展示。テーマの深さ、徹底した作品収集は龍谷ミュージアムの開館以来のよき伝統。展示室内のシアターでは展覧会に合わせたコンテンツを上映(釈迦の生涯を紹介)。図録あり(288ページ、2000円)。

京都国立博物館
 特別展 池大雅-天衣無縫の旅の画家-
(4月7日~5月20日)
 文人画家、池大雅の大回顧展。絵と書がぎっちり。文化庁前後赤壁図屏風、遍照光院山水人物図襖、瀟湘勝概図屏風など大作の代表作はもとより、李珩筆腕底煙霞帖、張端図筆秋景山水図など手本とした中国画や画譜、指墨(頭)画のいろいろを集めて、その生涯の画風と書風の形成をたどる。祇園南海の跋文(展示なし)のある楽志論図巻、自賛に「奉以龍門祇園先生」とある浅間山真景図といった紀州関連の作品と、不思議にダイナミックな運筆の絵と書の騰雲飛濤図、横長で雄大な構図の四季山水図4幅(冬景のクリアーに見晴るかす遠景!)をじっくり。図録あり(304ページ、2500円)。

6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月