展覧会・文化財を見てきました。

─展覧会鑑賞・文化財見学に関する勝手な感想─

最終更新日 8月23日


2020年度

4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月



4月12日
高野山霊宝館
 冬期平常展 密教の美術
(1月18日~4月12日)

 コロナ禍で閑散とする高野山に登り霊宝館の冬期展最終日を一人鑑賞。近時修復した資料を紹介。快慶作の執金剛神立像・深沙大将立像の像内納入品の宝篋印陀羅尼は、建久8年(1197)銘で、源阿弥陀仏や名阿弥陀仏の名あり。円通寺の十巻抄(鎌倉時代・重文)、白描不動明王二童子毘沙門天倶利伽羅龍像(鎌倉時代・重文)も修理後初公開。ほか、光台院毘沙門天像(平安時代・重文)のほか、西南院の熊野曼荼羅(南北朝時代)は兵庫・温泉神社と同系統の図像の作例、成福院の春日鹿曼荼羅(室町時代)は鹿の背に載せた鏡面中央に長谷寺式十一面観音が描かれる作例、親王院の三十番神像(南北朝~室町時代)は堅実な出来映えで、五坊寂静院伝来。同院には日蓮(是聖房蓮長)も遊学。彫刻では金剛峯寺の厨子入三宝荒立像が天正17年(1589)木食真山人作の銘が厨子にあり。図録なし。鑑賞後、参拝者の姿の見えないがらんとした壇上伽藍を巡って悪疫悉除を祈念。

5月19日
高野山霊宝館
 企画展 ほとけさまと動物たち
(4月18日~7月5日)

 仏教美術のなかに表される動物の表象を収蔵資料の中から紹介する。宝寿院六字尊像(重文・前期)、金剛峯寺両頭愛染曼荼羅(重文・前期)、竜光院屏風本尊(重文)、遍明院文殊菩薩及使者像(重文)や天野社伝来の舞楽装束(重文)、竜光院灌頂法具類のうち龍頭(重文)、大津絵の摩利支天像、親王院阿闍梨遍照尊像(昭和2年・福田恵一筆・帝展出品、250㎝×191㎝)などバラエティーに富んだ資料選定。ほか竜光院弘法大師二大弟子像は、大師と二弟子を中央に、左上に一身二頭像(伝奥砂子平尊、殊蛇死平尊)、右上に金剛薩埵、左下に両頭愛染、右下に不動明王を配し、中尊頭上に宝珠・日月・龍・内側に格子を描いた楕円形・白蛇を並べる特殊な修法の本尊像で、南北朝~室町時代前期の作。初公開の清高稲荷社関係品(地蔵寺蔵)の木札には寛文10年銘とともに真徳院の名あり。桃山期に活動した面打真徳院と関わるなら重要情報。動物という観点で間口を広く設定しながら、高野山の密教世界の奥深さを存分に伝える内容。図録なし。

6月
なし。

7月6日
八尾市歴史民俗資料館
 企画展 道鏡に出会う-木造道鏡禅師坐像造立記念-
(4月25日~7月13日)

 道鏡を知る会が発願し、彫刻家・東京芸大教授の籔内佐斗司氏に依頼して制作された道鏡坐像の完成お披露目展示。八尾市民を中心に40年前に設立された道鏡を知る会の歩みを、設立者である郷土史家の山野としゑ氏を中心に紹介することで、市民による歴史顕彰の情熱的な活動を広く共有する機会ともする。近年史跡指定された称徳天皇と道鏡ゆかりの由義寺跡から出土した軒瓦も展示(常設展示にも出陳中)。籔内氏により造像された道鏡像は、奈良時代末~平安時代初期の僧形像をモデルとした重厚な作風で、眉目秀麗な風貌は市川海老蔵をイメージした由。道鏡坐像はこの後10月に西大寺に奉納されるとのこと。道鏡の実像を追求する民間活動を基盤に、由義寺跡塔基壇跡の発見と史跡指定を好機として、広く寄附を募って(クラウドファウンディングも併用)道鏡像製作を成し遂げ展覧会を開催した流れは、住民と行政が協力して地域文化を掘り起こす理想的なあり方といえる。いつか由義寺跡に道鏡像安置できれば最高。図録なし。

7月25日
京都国立博物館
 特別展 聖地をたずねて-西国三十三所の信仰と至宝-
(7月23日~9月13日)

 会期変更し満を持しての開催。西国三十三所草創1300年を記念し各札所寺院から名宝を集めて展観。粉河寺・長谷寺・石山寺・総持寺ほかの観音の霊験を描いた縁起絵巻、数々の観音の姿を描いた中世仏画とともに、多数の参詣曼荼羅が並ぶ一角が本展の見どころで、展示替えも含めて那智山・紀三井寺・粉河寺・施福寺・葛井寺・清水寺・善峯寺・中山寺・成相寺・松尾寺・長命寺の各幅が出陳。
 その絵の中にいるのは「私」であると実感(錯覚)させることが参詣曼荼羅という唱導の道具の目的である。そのために絵解きも付随した。そのように見れば、参詣曼荼羅の中に描き込まれた聖地を巡錫する巡礼者と、京博展示室内を観音像を求めてへめぐる来館者は重なる存在である。堂塔造営の勧進状やご詠歌等の版木、そして納経帳や巡礼札といった民衆との接点となる信仰の道具がしっかり目配りされて集められており、そのことを強調する。収束の見えない疫病流行下での出開帳展示も、民衆の救済への渇望を受け止め続けてきた西国三十三所の歴史そのものを体現しているかのようである。困難の中に、信仰の花が咲く。
 ほか、一乗寺観音菩薩立像、岡寺菩薩半跏像、華厳寺毘沙門天立像などの仏像、青岸渡寺と東博に分蔵される那智経塚出土の羯磨曼荼羅の復元など出陳資料多数。図録あり(310ページ、2700円)。

8月9日
高野山霊宝館
 企画展 如来-NYORAI-
(7月11日~9月27日)

 高野山霊宝館収蔵資料の中から、「如来」にスポットを当てて優品や稀品を選定。絵画では清浄心院九品曼荼羅図(重文)、高屋肖哲模写の阿弥陀聖衆来迎図、成福院阿弥陀如来像(南宋・重文)、金剛峯寺釈迦誕生図(鎌倉・未指定)など。後期(8/25~)には応徳3年銘仏涅槃図(国宝)が出陳。彫刻では、普門院釈迦如来及び諸尊像(重文)、壇上伽藍御社伝来の大型の大日如来懸仏(鎌倉・未指定)、五坊寂静院阿弥陀三尊像(重文)を間近に拝観。経典では中尊寺経、荒川経、高麗経をチョイスして見返絵を展示。初見資料として桜池院の十三尊像(室町)は、上段に薬師、2段目に金剛薩埵・阿弥陀・釈迦、3段目虚空蔵・愛染・文殊、4段目龍猛・如意輪・空海、5段目に毘沙門・弁才・高野明神を配列する用途不明の一幅。宝寿院の十二所権現垂迹尊写と十二所権現本地尊写は、江戸時代に熊野曼荼羅の尊像配置を、貼り継いだ紙に簡単な枠線と尊名のみで写したもの。元本は不明(西南院本ではない)。宝寿院は無量寿院・宝性院の合併寺院であるが(大正期)、ともに学侶方であり、江戸時代の高野山の学僧が熊野十二所権現の神名や本地に関する基本情報を学習・把握している実態が分かる重要資料。展示のたびに必ず新資料があらわれ、毎回新鮮な気持ちで学ぶ。図録なし。

8月22日
京都国立博物館
 特別展 聖地をたずねて-西国三十三所の信仰と至宝-
(7月23日~9月13日)

 再訪して後期展示鑑賞。狩野信光の壺坂観音縁起絵巻、狩野永納の穴太寺観音縁起絵巻、伝住吉如慶の播州書写山縁起絵巻や、華厳寺の三十三所観音曼荼羅図、長谷寺法華一品経など展示替え資料を重点的に。和歌山の資料では、出光財団の補助による修理後初公開の紀三井寺参詣曼荼羅と熊野観心十界図の2幅は、本展終了後、和歌山市立博物館の特別展「紀三井寺展」(10/31~12/13)で公開。やはり修理完成後寺外初公開の粉河寺千手観音立像は、和歌山県立博物館の特別展「国宝粉河寺縁起と粉河寺の歴史」(10/17~11/23)で公開。両寺とも本年が開創1250年の区切りの年で、それにあわせての修理事業。西国巡礼の周年記念特別展で先にお披露目をしてもらい、国・県・市の博物館が協力しつつ、引き続きの公開に向け事業進行中。

吹田市立博物館
 ミニ展示 新型コロナと生きる社会-私たちは何を託されたのか-
(7月18日~8月23日)

 同館が「100年後の人々への情報源」として収集を開始している、新形コロナウイルス感染症との対峙・対応の諸相を示す生活資料と写真資料を紹介。感染防止対策と市民生活・経済活動・政治動向・世界情勢が複雑に重なりあう今般の事態は、渦中にある当事者にその全貌は見えにくい。地域社会の防疫・感染症対策と市民生活の推移を示す資料を維持する(本庁の公文書も保管期限で廃棄せずピックアップして移管できれば最善)ことの重要性を、展示にて共有する。
 新聞折り込みチラシ、行政の広報物、店舗の掲示物、手作りマスクや配布マスク、医療関連資料等々、資料は多岐に亘る。千里寺門前に4月15日設置された「千里山・小さな食品庫」のクーラーボックスは象徴的で、中に缶詰やレトルト食品等を入れて自由に持って行ってもらっていたもの。給食と子ども食堂の休止で満足に食事を取れない子、アルバイトが減り実家にも帰れない大学生、ぎりぎりの経済状況で困窮状態となった人に思いを致して副住職が設置し、その後インターネットを活用した寄附者の協力で5月31日まで活動を継続した。モノ資料として、この歴史の一断面を伝える「物語」を背負ったクーラーボックスを確保、保管することは、博物館の可能性を体現するもの。
 博物館による同様の注目される活動としては、福島県立博物館が精力的に進めている震災関連資料の収集がある。現代をいかに資料化し収蔵して発信できるか。世界の博物館情勢を把握し交流する近現代史研究者である担当学芸員による、博物館の可能性を未来へ開く最先端の取り組み。図録なし。 


9月

10月

11月


12月

1月

2月

3月