展覧会・文化財を見てきました。

─展覧会鑑賞・文化財見学に関する勝手な感想─

最終更新日 1月17日


2021年度

4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月


4月10日
京都国立博物館
 凝然国師没後700年特別展 鑑真和上と戒律のあゆみ
(3月27日~5月16日)

 日本戒律の展開を古代から近代まで俯瞰する意欲的な展示。唐招提寺鑑真坐像、西大寺叡尊坐像(4/20~)はじめ、導御・俊芿・凝然・忍性ら鎌倉時代の律僧から慈雲ら近世の律僧まで、その肖像とともに幅広く事蹟を拾う。戒律の根拠となる経典・聖教を多数集めた硬派で真面目な展示は、誠実に仏法に向き合って生きた清僧たちへの敬意と憧憬のあらわれ。図録あり(336ページ、3300円)。

京都文化博物館
 特別展 よみがえる承久の乱-後鳥羽上皇 VS 鎌倉北条氏-
(4月6日~5月23日)

 鎌倉時代のダイナミックな政治史・文化史の動きを、承久の乱に焦点をあてて叙述する。「承久三、四年日次記」(仁和寺)など検討するための史料が限られるところを、東寺百合文書、諸日記、写本、古筆切、模写まで資料博捜して展示構築。80年ぶりに所在確認された承久記絵巻のお披露目とともに、ストーリーテラーとして有効活用。後鳥羽院追善供養の阿弥陀三尊像(峰定寺)、熊野懐紙、熊野本地仏曼荼羅をありがたく鑑賞。図録あり(240ページ、2800円)。

高麗美術館
 朝鮮の仏さま
(4月1日~8月17日)

 同館所蔵の統一新羅〜朝鮮時代の仏教美術をお蔵出し。統一新羅~高麗時代の鉄造如来坐像、木造菩薩立像(朝鮮時代後期)、康熙28年(1689)銘阿弥陀三尊仏龕や、隆慶3年(1569)熾盛光如来降臨図、大定4年(1164)の梵字銀象嵌香炉、貞右13年(1225)梵鐘など紀年銘資料や、高麗時代の六尊五鈷鈴など40点。図録なし。

東寺宝物館
 平安時代の東寺-真言密教の根本道場-
(3月20日~5月25日)

 平安時代の東寺について仏法僧の三宝に沿う形で章立てし寺宝紹介。聖僧文殊坐像(9c)、武内宿禰坐像(10c)、五大尊像(12c)や東寺定額僧等連署申状や真言院後七日御修法請僧交名案、善通曼荼羅両寺司等解など平安時代の古文書など。一般500円。リーフレット(8ページ)あり。

4月18日
浜松市美術館
 企画展 みほとけのキセキ-遠州・三河の寺宝展-
(3月25日~4月25日)

 遠江6か寺、東三河の1か寺の浜名湖文化圏の寺院に伝わる仏像を紹介。猪鼻湖北の微高地に位置する摩訶耶寺千手観音立像(10c)をはじめ、普門寺の興隆期を具体的に示す12世紀の仏像群など重要文化財多数出陳。浜名湖面に隣接する舘山寺から明治4年に移された応賀寺阿弥陀如来坐像(12c)は、本来湖を含めた景観を浄土に見立てて安置された可能性が示され、国境・弓張山地の東西に位置する普門寺と摩訶耶寺両寺の不動明王立像(12c)の表現に類似性があり図像継承があった可能性が指摘されるなど、仏像から地域の信仰史を浮かびあがらせており重要な成果。像内銘に二十五菩薩の名称を記す西楽寺の来迎形阿弥陀三尊像(12c)も浜名湖と浄土信仰の関わりを見たいところ。ほか南北朝時代の基準作例である方広寺釈迦三尊像(観応3・1352、院吉ほか作)は明治時代に茨城県から招請された移動する仏像。図録あり(114ページ、2000円)。

方広寺
 方広寺創建650年記念特別寺宝展
(3月13日~11月28日)

 奥山方広寺ご参拝。本堂では寺宝展開催中。応安6年(1373)の讃のある開山無文元選像ほか中世の無文元選の頂相、木喰の准胝観音立像・地蔵菩薩立像・吉祥天立像など。谷地の大伽藍内のあちこちに配された五百羅漢を巡り歩く。

4月19日
高野山霊宝館
 開館100周年記念大宝蔵展 高野山の名宝
(1期:4月17日~6月6日)

 同館の開館100周年を記念して、11月28日まで会期を4つに分け、収蔵する国宝・重文のほとんどを公開。空海筆聾瞽指帰(国宝)、諸尊仏龕(国宝)、飛行三鈷杵(重文)の高野山三大秘宝をはじめ、運慶作八大童子立像(国宝)、快慶作孔雀明王坐像(重文)、大日如来坐像(西塔伝来・重文)などは通期展示。1期の目玉は阿弥陀聖衆来迎図(国宝)と澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃(国宝)。ほか蓮華三昧院阿弥陀三尊像(国宝)、丹生明神・高野明神像(重文)、南宋時代の如来像(重文)、元時代の阿弥陀八大菩薩像等々重要資料目白押し。展示に合わせて作製した収蔵品図録あり(214頁、4500円)。八大童子のうち当初像6体は独立ケースに安置されて間近に鑑賞可能。しばし運慶を独り占めさせてもらって幸せ。

4月28日
奈良国立博物館
 聖徳太子1400年遠忌記念特別展 聖徳太子と法隆寺
(4月27日~6月20日)

 聖徳太子1400年遠忌に、法隆寺の文化財及び東博法隆寺献納宝物を集約して、太子の仏教信仰と、太子ゆかりの品々を護持し伝世させた原動力となる太子信仰の諸相を浮かび上がらせる。御物聖徳太子二王子像、御物法華義疏、聖霊院本尊聖徳太子および侍者像、東院絵殿旧安置聖徳太子坐像と献納宝物・聖徳太子絵伝をはじめ枚挙に暇がないほどの重要資料が揃う空前の展示。彫刻資料では、金堂安置の薬師如来坐像を間近に鑑賞できる貴重な機会で、従来、釈迦如来坐像と比べて丸みを帯びていると見なされてきた風貌も実見するとすっきりとした印象であり、造像時期に大きな差をみる先行研究を見直す必要がありそう(図録解説でも指摘)。奈良博に引き続き東博へ巡回。図録あり(364ページ、2800円)。

5月4日

和歌山県立紀伊風土記の丘
 企画展 紀州の獅子と獅子頭
(3月20日~5月9日)

 和歌山県内に伝わる獅子頭と、獅子の芸能を紹介する。野上八幡宮の獅子頭は南北朝時代まで遡る古様のものが現役で使用され、赤・青の獅子飼面が付随する。紀州東照宮の獅子頭は東照宮祭礼である和歌祭所用品で、江戸初期の作。湯浅町顕国神社の獅子頭・オニ面・ワニ面、広川町広八幡神社の田楽所用品などのほか、日高地方の獅子頭と獅子の芸能(瀬戸内地方との関連)、熊野地方の獅子頭と獅子の芸能(伊勢大神楽の影響)を紹介して、紀州の獅子芸能の体系を明らかにする重要な展示。図録なし。

5月9日
和歌山市立博物館
 企画展 総持寺の至宝
(4月24日~6月13日)

 紀州に浄土宗西山派の教線を拡張した光雲明秀(1403~87)により建立された中核寺院・総持寺の文化財を公開。近時修理完成した当麻曼荼羅は南北朝時代の八分一曼荼羅で、西山派寺院にとっては特に重要視される作例。円光大師御絵伝、西山国師御絵伝、明秀上人像、浄音上人像などの祖師の事蹟をたどる資料のほか、桑山重春寄進の阿弥陀来迎図(高野山遍照光院伝来)や水野重孟自筆の阿弥陀来迎図(延宝8年・1680)、文禄4年(1595)の本末寺院の定書である万法度帳など紀伊の西山派の歴史をたどる上でも重要な資料多数。図録なし。

6月6日
6月6日
高野山霊宝館
 開館100周年記念大宝蔵展 高野山の名宝
(1期:4月17日~6月6日)

 同館開館100周年記念展の第1期最終日に再訪し、阿弥陀聖衆来迎図の前で1時間半ほどたたずんで名残を惜しむ。同図は今年度から5年かけて修理が施されるためしばしのお別れ。

6月14日
高野山霊宝館
 開館100周年記念大宝蔵展 高野山の名宝
(2期:6月8日~8月1日)

 開館100周年記念展の2期目。仏画総入れ替え。紫雲殿正面と左右壁表裏には有志八幡講五大力菩薩像(金剛吼・竜王吼・無畏十力吼、平安時代、国宝)と普賢院五大力菩薩像(雷電吼・無量力吼、鎌倉時代、重文)の、それぞれ本紙縦3mを超える巨幅5幅を配して象徴的な空間を作る。有志八幡講像は東寺伝来、普賢院像は住吉大社伝来。正智院八字文殊菩薩曼荼羅図(鎌倉時代、重文)は構図・描写・梵字の筆致まで全く隙の無い鎌倉時代密教絵画の頂点をなす一作。天変地異の息災修法の本尊。竜光院両界曼荼羅図(鎌倉時代、重文)はあまり見る機会の少ない堅実な作例、金剛峯寺愛染明王像(鎌倉時代、重文)は身色の赤黒い発色が鮮やかな大幅。泉涌寺伝来資料。竜光院の大字法華経(奈良時代)、紫紙金字金光明最勝王経(奈良時代)、細字金光明最勝王経(平安時代)の国宝経典も勢揃い。聾瞽指帰(国宝)、諸尊仏龕(国宝)、八大童子立像(国宝)など通期展示の資料も何度も何度でもじっくり鑑賞。収蔵品図録あり(214頁、4500円)。

7月19日
高月観音の里歴史民俗資料館
 特別陳列 子どもと川で遊んだホトケたち 西黒田・安念寺の「いも観音さん」
(5月12日~7月19日)

 延長された会期最終日に滑り込む。黒田安念寺の「いも観音」と通称される大きく朽損した平安時代の仏像群10軀を展示。クラウドファンディングを活用した安置堂宇の修理期間中の特別公開。9世紀ごろの菩薩立像、10世紀の如来立像・菩薩立像(本尊像)、10~11世紀の如来立像2軀、11~12世紀の如来立像・天部立像、破損甚大な像3軀からなり、かつてはさらに7軀あったが盗難被害を受け所在不明。当地において平安時代を通じて伽藍が拡大、維持されてきたことを偲ばせる仏像群であり、未指定であるが地域の仏像様式を考える上で、また地域の歴史を考える上で重要な作例。クラウドファンディングを利用した経緯についての説明パネルも設置して、展示がいかに構築されたかを共有化していることも重要。図録なし。
 鑑賞後、安念寺の現地も訪れ、ちょうど草刈り作業中の地区住民の方にお声がけしてお参りさせてもらう。堂改修は最終段階で、来月仏像をお戻しして落慶式催行とのこと。地域の人びとが守り伝えたお堂と仏像を、行政とサポート役(對馬佳菜子さん〔観音ガール〕)が連携しながら全国の方々と繋ぎ、そして支える「長浜方式」の文化財保全活動の実践であり、、注目される重要な取り組み。

長浜市長浜城歴史博物館
 企画展 藤岡和泉-ユネスコ無形文化遺産・長浜曳山祭を造った大工のすべて-
(6月12日~7月31日)

 長浜城下で江戸時代から現代まで活動した大工・藤岡家に伝わった大工資料を通じて、歴代棟梁の仕事を編年的に通覧する。展示されている建物や仏壇の縮小完成図やその細部の絵様、刀掛けから前机など細々とした什器の絵図面まで、その膨大な指図の数々は、平面に筆書きされたものであるにも関わらず、堂舎や社殿、仏壇仏具、そしてなにより絢爛豪華な曳山までをも手がけた宮大工のダイナミックかつ堅実な仕事の足跡が、展示室内に「立体的」に立ち上がる。図録あり(76頁、1400円)。曳山博物館でも同時開催(うっかり気づかず見逃してしまい残念)。

7月25日
奈良国立博物館
 特別展 奈良博三昧-至高の仏教美術コレクション-
(7月17日~9月12日)

 館蔵品をフル活用して仏教美術の諸相を網羅的に紹介。刺繍釈迦如来説法図、最澄筆久隔帖、地獄草紙、若王子社伝来薬師如来坐像、龍田新宮伝来十一面観音像、日本書紀巻十等々、惜しみなくコレクションを披露。新たな利用者層への来館喚起を促すべく統一デザインをアメコミ調のポップなものとして、また全点を撮影可能にして利用者の利便性に配慮し、かつSNS等での広報効果の向上へとつなげることなど、普段の重厚かつ森厳な「殿堂」での「拝観」というイメージを、大胆に軽やかなものとする。かつての親と子のギャラリーにも見られたように、思い切った振り切れ方が許容されるのは奈良博の健全なところ。館蔵品のみとしてリスク管理も万全。図録あり(354ページ、2500円)。今までにありそうでなかった奈良博館蔵品図録であることも貴重。

7月31日
高野山霊宝館
 開館100周年記念大宝蔵展 高野山の名宝
(2期:6月8日~8月1日)

 同館開館100周年記念展第2期終了間際に再訪。有志八幡講五大力菩薩像をじっくり。八大童子像も何度も何度でも味わう。

8月28日
高野山霊宝館
 開館100周年記念大宝蔵展 高野山の名宝
(3期:8月3日~10月3日)

 開館100周年記念展の3期目。再び仏画総入れ替え。紫雲殿左右壁に平清盛寄進の巨大な両界曼荼羅(血曼荼羅、平安時代、重文)の原本展示。正面は阿弥陀聖衆来迎図の高屋肖哲模本。ほか善女龍王像(平安時代、国宝)、龍光院伝船中湧現観音像(平安時代、国宝)、西禅院阿弥陀浄土曼荼羅(平安時代、重文)、西南院五大虚空蔵菩薩像(鎌倉時代、重文)、善集院八宗論大日像(鎌倉時代、重文)、成福院阿弥陀如来像(南宋時代、重文)など見どころいっぱい。彫刻では諸尊仏龕(唐時代、国宝)とともに板彫両界曼荼羅(唐時代、重文)、胎蔵界板彫曼荼羅2面(唐時代、重文)と唐代彫刻が集約。ほか天弓愛染明王坐像(平安時代、重文)、奥之院護摩堂伝来不動明王坐像(鎌倉時代、重文)や、もちろん運慶作八大童子(国宝)も。聾瞽指帰(平安時代、国宝)は下巻が原本展示。収蔵品図録あり(214頁、4500円)。

9月11日
京都国立博物館
 特別展 京の国宝-守り伝える日本のたから-
(7月24日~9月12日)

 近現代の文化財保護の足跡とその意義を伝える目的のもと、京都ゆかりの国宝をずらりお披露目。展示冒頭に、資料の掘り起こしが進みつつある明治時代の「国宝」保護に関わる行政文書を、京博所蔵資料・京都府所蔵資料からチョイスし展示の方向性を明示。国宝類は種類別に分けて展示し、宮内庁管轄の資料も特別出品し、最後に現在の国による文化財保護の取り組みの基本活動を紹介。文化庁共催。図録あり(278ページ、2800円)。

9月14日
大和文華館
 祈りと救いの仏教美術
(8月27日~10月3日)

 仏教美術に関する館蔵品のなかから、一字蓮台法華経(国宝)、金胎仏画帖、笠置曼荼羅(重文)、柿本宮曼荼羅(重文)、子守明神像など同館を代表する優品や、浄瑠璃寺阿弥陀如来像や中川寺毘沙門天像ほか多種多様な像内納入印仏をずらり展観。図録なし。

9月29日
龍谷ミュージアム
 特別展 アジアの女神たち
(9月18日~11月23日)

 古代アジアの女神信仰の諸相を示しつつ、仏教に組み入れられた女神の展開と、東アジアにおける観音の女神化という観点から展示を構成。紀元前5500年のシリアの土偶から明清のマリア観音、20世紀のインド彫刻まで幅広い資料を集約しつつ、龍谷大学図書館所蔵の多様で豊富な版本経典を各所に用いて、信仰の背景や形の意味を解説する。実光院十羅刹女(十種供養菩薩)立像(平安、重文)、東大寺訶梨帝母坐像(平安、重文)、仁和寺菩薩坐像(南宋)、清荒神清澄寺千手観音像(鎌倉・重文)、蓮乗寺宝塔絵曼荼羅(長谷川等伯ら筆、室町)など仏像仏画も多数。弁才天にサラスヴァティーとドゥルガーの両方が重なっているという指摘(図録論考・森雅秀「サラスヴァティーから弁才天へ」参照)は目からウロコ。経典には見られない東アジアにおける観音の女性化という現象を、女神信仰を観音へと投影・集約した「新しい女神」の形成と捉えることも重要な提起。図録あり(260ページ、2500円)。

10月11日
高野山霊宝館
 開館100周年記念大宝蔵展 高野山の名宝
(4期:10月5日~11月28日)
 
開館100周年記念展の最終第4期目。仏画総入れ替え。紫雲殿正面に応徳3年(1086)銘を有する仏涅槃図(国宝)、左右の壁に血曼荼羅の当初彩色復元図。桜池院薬師十二神将像(重文)と普門院勤操僧正像(国宝)を目と鼻の先で間近にじっくり鑑賞。諸尊仏龕(国宝)、釈迦如来及諸尊像(枕本尊・重文)、浮彫九尊像(重文)の唐代檀像の重要作例とともに、親王院阿閦如来立像(重文)、宝亀院十一面観音像(重文)、竜光院厨子入倶利伽羅竜剣(重文)とバラエティに富む彫刻資料。運慶作八大童子も何度もじっくり。収蔵品図録あり(214頁、4500円)。1期~4期まで無事にコンプリート。

10月17日
和歌山市立博物館
 特別展 加太淡島神社展-女性・漁民の祈り-
(10月9日~12月12日)
 膨大に奉納された人形類で著名な加太淡島神社所蔵の書画と加太沖海揚がり陶磁器が同館に寄贈されたことを受け、そのお披露目を兼ねて同社の歴史と信仰史を紹介。鎌倉時代の大円山形星兜(重文)、南北朝時代の金銅造丸鞘太刀(重文)の周知の指定文化財のほか、海獣葡萄鏡(唐)や瑞花双鳥八稜鏡(鎌倉)など事前調査で見出された資料も紹介。加太沖の海揚がり陶磁器の中核をなすのが中国明代・15世紀の大量の龍泉窯系青磁で、香炉、稜花盤、広口壺、双耳瓶のほか、大量の青磁碗(蓮弁文碗・雷文帯碗)がずらりと120個ほど並んで圧倒的 。重文級。漁民が拾得するたび神社に納めたもので、完形品の美品が多い一方で、焼成不良品が含まれていることから明から堺へ輸送途中で難破した船の積荷と推定される。図録あり(116ページ、1500円)。

10月19日
大阪市立美術館
 千四百年御聖忌記念特別展 聖徳太子-日出づる処の天子
(9月4日~10月24日)

 聖徳太子信仰にまつわる重要資料を広汎に集成。聖徳太子絵伝は元亨3年(1323)遠江法橋筆四天王寺本をはじめ、縦長・横長の掛幅装から、絵巻、断簡、略縁起まで総覧するように多数集める。聖徳太子像も二歳像、十六歳像(本展では童形像と表記)、摂政像、勝鬘経講讃像や、二王子を従えた三尊像まで彫像・画像をずらり展示。四天王寺本尊に関連してその模刻像や古代の金銅仏を、太子・観音同体信仰に関連して如意輪観音像を集めるほか、四天王寺の寺史にも目配りしてその重宝や舞楽関連資料までバラエティに富む内容。図録あり(370ページ、2800円)。本展はこの後サントリー美術館に巡回。

 コレクション展 社寺縁起-聖なるファンタジー
(9月4日~10月24日)

 施設改修による休館前に、寄託・館蔵の縁起絵巻を多数お蔵出し。堺市・長谷寺の長谷寺縁起絵巻(府指定)、開口神社の大寺縁起(重文)、大念仏寺本の融通念仏縁起絵巻、館蔵の犬寺縁起絵巻、佐太天神宮の文安3年(1446)芝観深筆北の天神縁起絵巻などなど。図録なし。

四天王寺宝物館
 秋季名宝展 四天王寺聖教の世界
(9月11日~11月17日)

 四天王寺伝来の聖教に関する最新の調査成果を公開。四天王寺勝鬘院で正安3年(1301)に書写された密教儀軌、高山寺旧蔵の顕戒論巻中(11c)、元永元年(1118)三井寺増恵書写の虚空蔵求聞持法、承安元年(1171)に皇慶本を全玄が書写した胎蔵儀軌、大御輪寺経蔵伝来の奈良時代の十一面神呪心経など、重要資料多数。リーフレットあり(19ページ、無料)。宇都宮啓吾「四天王寺の聖教」、同「ヲコト点とは」収載。有益。

国立民族学博物館
 特別展 ユニバーサル・ミュージアム-さわる!“触”の大博覧会-
(9月2日~11月30日)

 資料に触れて情報に接する手法を推進し、その理論化を進めている同館広瀬浩二郎氏とユニバーサル・ミュージアム研究会の実践的取り組みの集大成を展示。博物館的常識にとらわれず、触ることで「触常者」と「見常者」の垣根を越えた異文化コミュニケーションを促進する、開かれた新しい博物館像を提示する取り組み。展示資料は全て触ることができ、現代美術の作品や、研究会のワークショップ作品などのほか、興福寺仏頭、薬師寺聖観音像ほか仏像の原寸大複製もさわって鑑賞できる貴重な機会。図録あり(248ページ、2500円)。図録というよりは、図版の充実した事例報告及びコラム集で、展示のユニバーサルデザインを考える上での道しるべとなるもの。

和泉市いずみの国歴史館
 希う-いのりのかたち-
(10月16日~12月12日)

 和泉市域の文化財の中から、信仰に関わる縄文時代~江戸時代の資料を選んで展示。天授院の銅造如来立像(飛鳥時代)、郷荘神社の狛犬(室町時代)、森光寺大般若経(平安末~鎌倉時代)のほか、仏並・池辺家伝来の資料として、池辺氏出身の10世紀の比叡山僧覚超自筆の修善講式(複製)と、鎌倉時代写本、江戸時代写本を並べるなど、地域の宗教文化に関わる資料を拝する貴重な機会。リーフレットあり(12ページ、無料)。

11月4日

元興寺法輪館
 特別展 ならまちの地蔵霊場 十輪院の歴史と信仰
(10月23日~11月14日)

 南都・十輪院の歴史を、地蔵信仰を軸として古代から近代まで丹念に紹介。奈良時代の釈迦誕生仏立像、境内出土の平安時代の常滑焼大甕、下御門仏師の手になる理源大師坐像や、平城十輪院記や南都十輪院記の縁起、尊勝曼荼羅など、多様な資料の悉皆調査の成果を反映。本尊地蔵石仏龕をタペストリーで再現。仏画では真言八祖像(展示は弘法大師像のみ)は永禄元年(1558)の裏書きある中世仏画の新資料で、彩色主体の画風や侍者像の風貌は南都絵所の典型的作風を示す重要資料。図録として同名の書籍を十輪院と元興寺文化財研究所の共編で出版(184ページ、1400円+税、京阪奈情報教育出版)。

奈良県立美術館
 特別展 生誕200周年記念 森川杜園展
(9月23日~11月14日)

 奈良の一刀彫りで有名な森川杜園の、一刀彫りに留まらない多様な事蹟の全貌を紹介する好企画。奈良人形の制作のみならず、絵師であり、狂言師であり、また書もよくした才能溢れる文化人としてのその人物を、多数の作品を通じて紹介。なにより本展を重厚なものとするのが、明治時代初期の壬申検査における正倉院宝物の多数の模写資料とその模造作品、あるいは法隆寺九面観音像ほかの模造作品を集約した3章で、明治時代の古器旧物保護を巡る在地の動向を追跡し続ける同館の展示の蓄積を踏まえ、近世の職人的工人が近代の「美術」の制度に接して昇華していくその遍歴をも展示室内に視覚的に構築する。図録あり(160ページ、2400円)。

東大寺ミュージアム
 開館10周年記念特別公開 華厳五十五所絵巻
(10月1日~11月16日)

 東大寺所蔵の華厳五十五所絵巻を、前後期に分けて全巻公開。後半部分をじっくり鑑賞。戒壇堂四天王立像、法華堂日光菩薩・月光菩薩立像の林立する空間のなんと贅沢なことか。東京芸大文化財保存学保存修復彫刻研究室寄贈の執金剛神模刻像2軀の特別公開(~3/21)も、まさに今この展示室内にこそふさわしい時宜にかなった展示。

11月6日
大津市歴史博物館
 企画展 西教寺-大津の天台真盛宗の至宝-
(10月9日~11月23日)

 天台真盛宗総本山、法勝寺の法灯をも引き継ぐ古刹西教寺について、同館による山内文化財調査の成果を反映して、その歴史と信仰の重層性を紹介。中興真盛上人関連資料や法勝寺聖教、比叡山西塔伝来の正教蔵聖教など天台宗の重宝の公開を基軸に、鎌倉初期の優品である法勝寺伝来の薬師如来坐像、平安時代後期の本尊丈六阿弥陀如来坐像の化仏、10世紀の観音像や山内子院の本尊像、画面の縦が2メートルを超える鎌倉時代の阿弥陀如来像や、頭巾を被った行者が座る特殊な熊野本地仏曼荼羅など仏像・仏画も多数展観。天正9年(1581)造像の真盛上人坐像は、像内に「面ウチ出目次郎左衛門尉」(出目満照か)の造立銘を有し、面打が肖像を造像したことのわかる珍しい作例。図録あり(144ページ、2000円)。常設展示室内のミニ企画展「真盛上人の六字名号と絵伝記」(10月12日~11月28日)も特別展の一部として開催。天台宗の重要拠点の悉皆調査の成果をただちに共有する内容で、学術的な進展とともに、地域文化に厚みと広がりをもたらす博物館のかけがえのなさを体現するかのような展示。

11月9日
高野山霊宝館
 開館100周年記念大宝蔵展 高野山の名宝
(4期:10月5日~11月28日)

 開館100周年記念展第4期を2回目の鑑賞。応徳涅槃、八大童子、諸尊仏龕を見回りながら名残を惜しむ。先日の森川杜園展会場で明治9年奈良博覧会に出陳されていたことに気づいた竜光院厨子入倶利伽羅竜剣も改めてじっくり。

11月11日
道成寺
 万寿丸生誕七百年祭 秘仏千手観音中開帳
(9月20日~11月28日)

 道成寺本堂の背面側に現本尊像と背中合わせに安置される秘仏北向千手の特別開張。昭和62年(1987)、本堂修理に伴い本像を移動する際、像内に朽損した奈良時代の千手観音像部材が多数納入されていることがわかり、その後復元された(現本尊像)。大破した創建期千手観音立像を納入する鞘仏として造像された像高341㎝の巨像で、本堂建立(正平12年[1357]ごろ建立開始、天授3年[1377]に「遷本堂」)と同時期の南北朝時代、14世紀半ば頃の作例。ありがたくご拝観。京都妙満寺から釣鐘(正平14年[1359]の旧鐘銘を写す)が里帰り中(公開期間は11月18日まで)。
 拝観後、御坊市民文化会館で「一陽来復祈願能 IN 和歌山御坊」鑑賞。翁と道成寺という豪華な組み合わせ。翁は分林道治、三番三が茂山逸平、頭取大倉源次郎、道成寺シテ片山九郎右衛門、ワキ宝生欣哉、アイ茂山七五三・茂山宗彦。

11月19日
東京国立博物館
 特別展 最澄と天台宗のすべて
(10月12日~11月21日)

 東京・九州・京都の国立博物館連携による伝教大師1200年大遠忌記念展の第一会場。最澄関係資料はもとより、天台教学の継承と展開、そしてその表象としての美術作品を多数集めて展観。祖師像では観音寺伝教大師坐像、園城寺智証大師坐像(御骨大師)、そしてなんといっても像高2mの深大寺慈恵大師坐像の大迫力。拝するものを畏怖させる迫真的な風貌は、唇がわずかに開かれ像内に貫通していて、微音の真言が聞こえてくるかのよう。法界寺薬師如来立像、伊崎寺不動明王坐像、願興寺薬師如来坐像、法用寺金剛力士立像、明王寺聖観音立像、寛永寺薬師如来及び両脇侍立像など、全国天台宗寺院の仏像をありがたく鑑賞。図録あり(416ページ、3000円)。3館共通で他会場の出陳資料も把握。九博が来年2月8日~3月21日、京博が4月12日~5月22日。

 特集 浅草寺のみほとけ
(9月28日~12月19日)

 天台展と連動して、円仁中興と伝えられる天台宗寺院浅草寺の仏像を紹介。唐~五代十国時代の僧形坐像は、瞳に練物を嵌入した目には笑みを浮かべ、頬にえくぼもあらわした青年僧。昭和13年の売立目録に載り、昭和53年に寺に長野幸彦氏から奉納されたものと判明。鎌倉時代の大仏殿様四天王立像も同氏奉納品。室町時代の阿弥陀如来坐像は、その個性的な風貌の特徴などから、室町時代の奈良仏師、椿井次郎作と推定して公開。同意。リーフレットあり(無料、8ページ)。

東京長浜観音堂
 聖観音立像(長浜市余呉町川並 地蔵堂蔵)
(11月17日~1月10日)

 東京駅近くのビル4階の小さな1室に、来年2月27日までの期間で設営されている東京長浜観音堂の第3期展示。川並集落地蔵堂より出開張の観音像は、厚みが薄く、穏やかで円満な平安時代後期の典型的な作風で、天冠台から地髪部へと彫り窪める表現など古像の影響を受けたところも見うけられる。比叡山文化圏の薫風を林立するビル群と雑踏の中に漂わせる、施設内外のギャップが心地よい別天地のような空間作りは、前施設(びわ湖長浜KANNON HOUSE)以来の長浜方式。資料解説カードあり。

12月4日
城陽市歴史民俗資料館
 特別展 神のすがた・仏のかたち-城陽・井手を中心に-
(10月30日~12月19日)

 帝塚山大学附属博物館と同館による城陽市・井手町の寺社文化財調査の成果を紹介。平川廃寺・神雄寺跡出土の塑像断片や久世廃寺出土誕生釈迦仏など白鳳~奈良時代の作例から平安時代後期の旦椋神社大将軍神像、高神社の鎌倉時代の獅子頭、水主神社の獅子・狛犬(台座裏面に嘉禎4年[1238]の墨書銘あり)など、幅広く資料を集める。西福寺聖観音立像は高く太い髻としなやかな体躯の10世紀彫像、同寺不動明王坐像はがっちりと組んだ膝に厚みのある古様を伝える11世紀彫像。仏像・神像から地域の信仰史を浮き上がらせる大切な取り組み。図録あり(17ページ、390円)。

京都国立博物館
 特別展 畠山記念館の名品-能楽から茶の湯、そして琳派-
(10月9日~12月5日)

 終了直前に滑り込み。現在施設改築中の畠山記念館が所蔵する、近代数寄者畠山即翁蒐集の名品を一堂に展示。柿の蔕茶碗銘毘沙門、伊賀花入銘からたちや伝牧谿筆煙寺晩鐘図など茶道具や茶掛けの名品を中心に、伝日光作の延命冠者(室町時代)、万媚(桃山~江戸)や加賀前田家伝来の装束など能の資料も充実。近世の大名家から近代の実業家へと遷移した茶道・能楽愛好と名品所持愛玩の近代史といったおもむき。図録あり(408ページ、2800円)。

12月5日
和歌山県立紀伊風土記の丘
 特別展 海に挑み、海をひらく-きのくに7千年の文化交流史-
(10月2日~12月5日)

 和歌山における海民の生業の七千年史を紹介。海を通じた人の動きと交流を豊富な考古資料と民俗資料から展示室内に立ち上げる。圧倒的な資料量。紀州漁民が房総半島や五島列島はじめ各地へと出漁する旅網の具体的状況をしっかり勉強。図録あり(158ページ、1500円)。

12月11日
神奈川県立金沢文庫
 特別展 密教相承-称名寺長老の法脈-
(12月3日~1月23日)

 国宝称名寺聖教中の密教資料を活用して、真言僧の法脈伝授のようすを紹介する。西院流、勧修寺流、三宝院流の伝法灌頂図は、それぞれ壇の位置や方向、十二天の配列さえも異なって複雑で、流派ごとの違いが一目瞭然。三宝院流の伝法灌頂に関する灌頂受者日記は堂内荘厳や阿闍梨への謝金などを受者たちで応分して用意していることが分かる史料。負担のないもの、受者でないのに負担しているものも混じっていてリアル。益性起請文は、流派の秘法を受けた受者は臨終に際して作法や口伝を記したものを返さないといけないところ、懇望に折れていくつかの聖教を他者に伝授するのを許可した置文。などなど、どれをとっても難解ではあるけれど、法脈伝授の種々相を具体的に史料を通じて提示するという、金沢文庫でしかなしえない意欲的な展示。図録あり(112ページ、2000円)。

12月14日
相国寺承天閣美術館
 企画展 禅寺の学問-継承される五山文学/相国寺の歴史と寺宝Ⅱ
(11月23日~1月23日)

 漢籍や墨蹟、頂相などから禅僧の修学と文芸伝授の足跡を紹介。一山一寧墨蹟金剛序(重要文化財)、無学祖元頂相(春屋妙葩賛)など初公開資料多数。図録なし。「相国寺の歴史と寺宝Ⅱ」では印陀羅筆出山釈迦図や周文筆十牛図、春景山水図(謝時臣画賛)など優品多数。

12月15日
田辺市立美術館
 特別展 きのくにの三画人 第二部 桑山玉洲
(11月13日~12月19日)

 近世和歌山の文人画家、桑山玉洲の初期から晩年までの作品を紹介。同館所蔵の脇村義太郎コレクション及び脇村奨学会所蔵の優品を核に、和歌山県博・和歌山市博の資料で構成。旭日群鶴図(個人蔵)、花卉霊石図(同館)、玉津島輿窟図(同館)、雪山唫客図(脇村奨学会)など。図録なし。

1月16日
奈良国立博物館
 特別展 名画の殿堂 藤田美術館展-傳三郎のまなざし-

(12月10日~1月23日)
 藤田美術館所蔵の絵画資料に関する奈良博との合同調査の成果を公開。中国画・近世絵画・近代日本画が中心。玄奘三蔵絵、華厳五十五所絵巻残闕、黄公望筆天地石壁図とその野呂介石による模本、永久寺伝来両部大感得図、冷泉為恭所持の阿字義・古絵巻模本をじっくり鑑賞。図録あり(182ページ、2000円)。なら仏像館では尾添区阿弥陀如来立像、玉峰寺薬師如来坐像、個人蔵で吉野山伝来の普賢菩薩坐像と不動明王及び二童子立像の初見資料をありがたく鑑賞。

2月

3月