4月5日
龍谷ミュージアム
特別展 真宗と聖徳太子
(4月1日~ 5月28日)
親鸞生誕850年記念に、真宗における聖徳太子信仰の諸相を紹介。真宗では親鸞が六角堂にて聖徳太子の示現を得て専修念仏へと進んだことから聖徳太子を重視する。順照寺和朝太子先徳連坐像(至徳元年・1384)、佛道寺光明本尊(応永5年・1398)、豪攝寺南無仏太子像、頓受寺南無仏太子像、光照寺聖徳太子童形立像、西光寺童形立像(暦応4年・1341)、松岡寺聖徳太子孝養立像、常楽臺存覚像(応安5年・1372)、瑞泉寺聖徳太子絵伝、正雲寺聖徳太子絵伝、)などなど、中世の作例多数。真宗系絵伝や祖師像の多様なバリエーションを一望できるありがたい機会。出陳リストにないが、展示の最後にハーバード大学美術館所蔵の南無仏太子像の像内納入品の精巧な複製を紹介。科研「宗教テクスト文化遺産アーカイブス創成学術共同体による相互理解知の共有」の成果を反映。図録あり(152ページ、2000円)。
5月2日
奈良国立博物館
特別公開 奈良・不退寺本尊聖観音菩薩立像
(3月21日~5月14日)
保存修理が施された不退寺本尊非聖観音菩薩立像について、作風が共通し本来一具であったことが確実な文化庁観音菩薩立像とともに並び立たせて公開する貴重な機会。文化庁像の像内納入品にもと不退寺伝来像であることを示唆する文言がある由。両像の保存状態の違いに思いをはせつつ、同室安置の新薬師寺十一面観音立像とも比較しながらじっくり鑑賞。リーフレットあり(A4、両面)。
5月5日
香川県立ミュージアム
弘法大師生誕1250年記念特別展 空海-史上最強、讃岐に舞い降りた不滅の巨人-
(4月22日~5月21日)
弘法大師生誕1250年を記念し、空海ゆかりの重要資料と四国所在の関連文化財を集めて公開する。金剛峯寺諸尊仏龕(国宝)、仁和寺三十帖冊子(国宝)、京博・奈良博金剛般若経開題残巻(国宝)のほか、與田寺稚児大師像、虎屋秘鍵大師像、覚城院善通寺御影、圓通寺弘法大師像(三尊合行法と関わる図像)、極楽寺日輪大師像など大師像のさまざまなバリエーションを紹介。仏像では井戸寺十一面観音立像、願興寺聖観音坐像、行徳院六字明王立像、與田寺不動明王立像、工芸資料では善通寺錫杖頭、弥谷寺四天王五鈷鈴等々、重要資料多数紹介。図録あり(144ページ、1800円)。
5月9日
龍谷ミュージアム
特別展 真宗と聖徳太子
(4月1日~ 5月28日)
見学実習で再訪。天満定専坊本願寺聖人親鸞伝絵、四天王寺聖徳太子絵伝、勝鬘皇寺聖徳太子絵伝、福田寺聖徳太子勝鬘経講讃像・震旦和朝高僧先徳連坐像など後期展示の資料を確認。図録あり(152ページ、2000円)。
京都国立博物館
特別展 親鸞 生涯と名宝
(3月25日~5月21日)
親鸞聖人生誕850年を記念し真宗十派が連携して宗派の重宝を集約する大規模な記念展。教行信証はじめ聖教類から消息まで多数の親鸞自筆資料を展示室の各所に配置し、また本願寺聖人伝絵や親鸞聖人絵伝をストーリーテラー的に活用して、親鸞の生涯と思想・信仰、教団化及び分派の様相と祖師・派祖崇拝の諸相を紹介する。終章に親鸞の肖像(鏡御影・安城御影・熊皮御影の諸本を細かく展示替え)と名号(西本願寺本・専修寺本・妙源寺本を細かく展示替え)の2点のみを配置する会場レイアウトはよく練られた展示手法。図録あり(344ページ、3000円)。
5月16日
大阪中之島美術館
デザインに恋したアート・アートに嫉妬したデザイン
(4月15日~6月18日)
見学実習で訪問。デザインとアートの境界と重なりを1950年代から2010年代までの多数の作例から紹介。東京オリンピックポスター、ヤノベケンジ《アトムカー
(黒)》(国立国際美術館)、奈良美智《どんまいQちゃん》(和歌山県立近代美術館)、深澤直人 《INFOBAR》(KDDI株式会社)等。図録あり(2980円)。
中之島香雪美術館
企画展 修理のあとに エトセトラ
(4月8日~5月21日)
香雪美術館が所蔵し、順次修理が施されている文化財について、その修理工程や成果を丁寧に紹介する。上畳本三十六歌仙絵 猿丸太夫、岩佐又兵衛筆堀江物語絵巻、長谷川等伯筆柳橋水車図屏風、一字金輪像、聖徳太子絵伝、薬師如来立像、南無仏太子立像等々さまざまな形態・材質の優品がずらりと並び、それぞれ修理過程の情報を画像を多数用いてパネルで示して、資料に応じた文化財修理のあり方を丁寧に伝える。台帳類や誂えた表装裂など収集者である村山龍平による修理への取り組みも紹介。図録はないが、『書物学』23号(勉誠社、1980円)が「特集 文化財をつなぐひと・もの・わざ-香雪美術館書画コレクションを支える装?修理の世界」と題して作例及び修理内容について特集。
5月20日
和泉市久保惣記念美術館
特別陳列 日本美術の名品-和泉の文化財とともに-
(4月9日~6月4日)
同館所蔵のコレクション及び和泉市内の仏教美術を紹介。山崎架橋図(重文)、法華経巻第一方便品第二(重文)、胎蔵旧図様、山王霊験記絵巻(重文)、歌仙歌合(国宝)など館蔵指定品を中心に選定し、館外からは松尾寺孔雀経曼荼羅図(重文)、槙尾山経塚出土の経筒や青磁・白磁類、納花町会と万町町内会の十六羅漢像を紹介。図録なし。
5月23日
福田美術館・嵯峨嵐山文華館
橋本関雪生誕140周年 KANSETSU-入神の技・非凡の画-
(4月19日~7月3日)
共通の運営体制である両館と白沙村荘橋本関雪記念館の3館合同で開催する関雪の大回顧展。青年期から晩年期まで、さまざまな画風・画題の作品を集約。京都国立近代美術館《失意》、橋本関雪記念館《琵琶行》《猟》《木蘭》、福田美術館《後醍醐》など屏風の大画面作品から、《玄猿》ほか動物を描く小品まで、いずれも優れた画技で破綻なく整うとともに、漢詩を重視して書にも優れ、オールラウンドに才能を発揮した近代期の巨匠であることを、多数の作品により語る構成。図録あり(224ページ、3300円)。村田隆志「紙碑としての橋本関雪論-『橋本関雪先生之碑』を巡って-」をはじめコラム・特論多数掲載された力の入った一書。
松尾大社神像館
同社伝来の平安時代前期三神像ほか神像群21軀を拝観。康治2年(1143)銘男神坐像や笑相老翁の男神坐像など。
5月25日
和歌山県立博物館
特別展 きのくにの小浪華-湯浅ゆかりの文人の書画-
(4月29日~6月18日)
江戸時代、商業都市として栄えた湯浅における文芸活動の足跡を明らかにする初めての機会となる展覧会。漢詩をよくした豪商菊池海荘の肖像や関連資料、海荘が中心となって活動した詩社・古碧吟社の活動を示す資料、馬上清江や平林無法ほか湯浅ゆかりの絵師の作品など書画や典籍を集める。文人画ではほかに柳川星巌、大江霞岳、黄仲祥、上辻木海、野呂松蘆、浜口灌圃など。図録あり(90ページ、1200円)。
5月27日
高野山霊宝館
宗祖弘法大師御誕生1250年大法会記念展 お大師さまから・お大師さまへ 1期
(4月15日~5月28日)
弘法大師生誕1250年を記念して、大師ゆかりの手蹟や唐請来品と御影堂への寄進資料を展観し、あわせて空海伝を絵巻や肖像ほかを活用して紹介。国宝聾瞽指帰、金念珠、四天王独鈷鈴、高野大師行状図画、厨子入倶利伽羅竜剣、宝寿院文殊菩薩像等々。弘法大師像としては善通寺御影、秘剣大師、瑜祇大師、稚児大師、弘法大師及び四社明神像、弁才天十五童子に弘法大師が併せ描かれる作例など豊富な事例を紹介。図録なし。
5月28日
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
特別展 神宿る島 宗像・沖ノ島と大和
(4月22日~6月18日)
宗像・沖ノ島祭祀の資料群と大和盆地の祭祀やまじないに関する資料とを対比しその共通性を示すことで、沖ノ島の祭祀が大和王権による海上交通祈念の性格を有することを紹介する。宗像大社の杏葉と藤ノ木古墳の杏葉が並び、かつ藤ノ木古墳資料の出来映えがより優れていることなどモノに雄弁に語らせる。同館でこそ実現できる巨視的かつ意欲的な内容。図録あり(88ページ、900円)。
歴史に憩う橿原市博物館
博学連携企画展 これ、おもろ。知らんけど。
(3月25日~6月18日)
同館が引き受けた博物館実習生による展示。考古資料の魅力を幅広く捉えることを目的に、さまざまな入り口を示して資料への興味を喚起する内容。土器に残る焼成不良の黒い煤染みをゴリラに見立てたり、焼成時の赤斑を夜空の星に見立てたりと、自由な発想で遺物を楽しむ。手作り触図を用意して展示のユニバーサルデザインを目指した点も博物館の先端事例の把握に基づくもので好感。図録なし。
5月30日
長谷寺
見学実習で長谷寺参拝。宗宝蔵では春季特別寺宝展(~7/9)鑑賞し、本堂では本尊十一面観音立像の内陣ご拝観。
6月6日
新薬師寺
美術史実習で薬師如来坐像と十二神将立像をご拝観。
6月7日
円成寺・浄瑠璃寺・岩船寺
大学院ゼミで見学。円成寺では運慶大日如来像、本尊阿弥陀如来坐像のほか、脇間の十一面観音立像をしっかり拝観。浄瑠璃寺の九体阿弥陀(2体は修理中)の作風を比較しながら拝観。岩船寺の本尊像の実年代と作風との差を考えつつ拝観。
6月9日
法華寺・海龍王寺
出勤前に法華寺本尊十一面観音立像をご拝観。海龍王寺にもお参り。
6月10日
東北歴史博物館
東日本大震災復興祈念 悠久の絆 奈良・東北のみほとけ展
(4月15日~6月11日)
東日本大震災復興を祈念し、南都の寺社の仏教美術が東北で結集。学術協力として奈良国立博物館が参画し、東北と奈良の仏教文化の関わりとつながりを仏教美術を主体にして紹介する意欲的な展示。奈良と東北の奈良〜平安時代前期の仏像がずらりと居並ぶ空間は圧巻で、東北地方を代表する勝常寺薬師三尊像、四天王立像、十一面観音立像、十八夜観世音堂観音菩薩立像、宝積院十一面観音菩薩立像、勝常寺像の風貌に似た吉祥天立像と、優れた出来映えの仏像群に間近にまみえることのできるありがたい機会。新宮寺文殊菩薩五尊像、新宮熊野神社文殊菩薩騎獅像、龍宝寺釈迦如来立像もじっくり鑑賞。一つ一つの名を挙げるのも難しいほどの奈良の名宝の数々が出陳されることも稀有なことであるが、なにより鑑真、叡尊、行基、忍性と仏法求通と衆生救済に生涯をかけた高僧たちの肖像がはるばる来錫したことこそ、本展開催の意義(心の救済)を象徴的に示すもの。図録あり(204ページ、2750円)。巻頭の長岡龍作「悠久の想像の物語-美術が伝える大乗仏教の世界-」は本展構成と造像の背景を詳述、ほか内藤航「会津の仏像-出陳作品を中心に」はじめ充実したコラム多数。
新宮熊野神社
福島県喜多方市の新宮熊野神社参拝。平安時代末期の長床、中世末~近世初頭ごろの三社殿、宝物館の多数の文化財群を拝観。車走らせ本宮熊野神社、那智熊野神社にも参拝。
6月12日
有田市郷土資料館
有田市と青木梅岳-仏画を中心に-
(4月1日~6月18日)
近代期に活動した南画家青木梅岳、妻の玉鱗、弟子の小野寺梅邱ほかの作品を展示。巻贈品の十六羅漢図袈裟や、千人針に描いた白虎図など。海南市歴史民俗資料館、南方熊楠顕彰館、南方熊楠記念館、田辺市立美術館と連携した画期的な青木梅岳展。リーフレットあり。
6月17日
大阪大谷大学博物館
椿井文書をめぐる人々-拡散する偽文書-
(4月3日~6月19日)
江戸時代後期に偽作され、現代においても各地の地域史叙述に影響を及ぼす事例もある偽文書群「椿井文書」について、作成した椿井政隆とその一族との関わり、偽文書の流通・拡散のあり方を紹介。偽文書中でも最も著名な興福寺官務牒疏と連動して制作されたとみられる金勝山大菩提寺八宗教院四至封疆之絵図や、河州石川郡磯長山寺伽藍全図会など中世成立として偽作された古伽藍絵図や、染めたり汚して時代を出した紙に中世らしくはないやや傾いた書き癖のある複数の筆致で記された系図や寺社縁起類などを紹介。絵図は古いものを後世に写したと画中に記すことで偽作を隠す巧妙さで、空想の古伽藍図が優れたビジュアルイメージにより今なお受容されてしまうことも理解できる。いつか現場で出会う可能性もあるので、いろいろ特徴を目に焼き付けておく。展示内容を詳述した博物館だよりあり(8ページ)。
7月1日
和歌山県立博物館
夏休み子ども向け企画展 きのくにのかたな-和歌山県立博物館の赤羽刀-
(7月1日~8月27日)
紀州の文珠鍛治と石堂鍛治、そして大和守安定ほかの刀剣を、和歌山県立博物館に収蔵された赤羽刀43口を通じて紹介。メインの解説文は極力わかりやすい内容にし、あわせて大人向け解説として刀剣鑑賞上級者向けの解説分を用意するほか、用語解説や刀剣にまつわる慣用句を紹介するなど、かたなをめぐる歴史と文化を示す好企画。刀剣入手時や未登録刀剣発見時の対応方法まで紹介。図録なし。
7月2日
大津市歴史博物館
ミニ企画展 大津の文化財調査中!-未指定文化財調査速報展示-
(6月9日~7月2日)
市域の文化財調査を継続的に行ってきた同館が、令和4年から新たに開始した約1050か所の寺社の悉皆調査の最新成果を速報展示する。大正寺地蔵菩薩立像(平安時代)、西光寺阿弥陀如来坐像(鎌倉時代)、関蝉丸神社獅子頭(室町時代)、教誓寺方便法身尊像(大栄3年[1523])など14点。あわせてパネルで文化財調査のようすや梱包・輸送、燻蒸について紹介する。各資料の解説を記したリーフレットあり。ホームページに公開。
7月4日
東大寺ミュージアム
美術史実習で見学。戒壇堂へのお帰りが間際となった四天王立像をしっかり鑑賞してもらう。法華堂日光菩薩・月光菩薩像とともに6体が林立している空間のありがたさ。今世紀中にはもうないなあ。8月27日まで。特集展示「戒壇院の夏安居」(6/2~7/18)では対の表具仕立てとなる鑑真和尚像(天境霊致讃)と南山大師像(中巌円月讃)をじっくり。鎌倉時代の重要作例ながら未指定。
7月8日・9日
密教図像学会見学会
学会見学会で松阪から熊野をめぐる。松阪市薬師寺(薬師如来坐像・天部立像ほか)、多気町霊山寺(十一面観音立像)、那智勝浦町大泰寺(阿弥陀如来坐像・不動明王立像・十二神将立像ほか)、補陀洛山寺(千手観音立像ほか)、那智山青岸渡寺(那智経塚出土曼荼羅壇ほか)、熊野那智大社(那智経塚出土品ほか)、熊野速玉大社(古神宝類ほか)、東仙寺(熊野三所権現本地仏像)、新宮市歴史民俗資料館(阿須賀神社出土懸仏)。疲れた。
7月11日
奈良国立博物館
浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念特別展 聖地 南山城-奈良と京都を結ぶ祈りの至宝-
(7月8日~9月3日)
浄瑠璃寺九体阿弥陀の修理完成を記念して、南山城地域の寺社の仏教美術を一堂に集約して公開する。海住山寺十一面観音立像、禅定寺十一面観音立像、常念寺菩薩形立像、寿宝寺千手観音立像、神童寺不動明王立像。川合京都仏教財団所蔵の旧灯明寺仏像群、浄瑠璃寺阿弥陀如来坐像2体、西明寺薬師如来坐像、現光寺十一面観音坐像等々、挙げきれないほどの彫刻の重要資料がずらり並ぶ。浄瑠璃寺薬師如来坐像と浄瑠璃寺旧蔵の静嘉堂文庫美術館・東博分藏十二神将立像12躯はおよそ140年ぶりの再開。仏画も含め寄託の優品も活用。南都に隣接する近隣地で南都僧の山林修行地や隠遁地としても歴史的に関係の深い南都文化圏であり、同館での展示の意義は大きい。新規調査により近世の南都と南山城にも目配りする点も重要。図録あり(288ページ、3000円)。
7月19日
大和文華館
特別企画展 追善の美術-亡き人を想ういとなみ-
(7月7日~8月13日)
亡くなった人の死後の安穏を願い行う追善供養に着目して資料を集約。館蔵の代表作である笠置曼荼羅図(重文)を追善の機能から読み解き、仏像像内に納められた印仏を多数展示。館蔵婦人像(重文)、妙蓮寺渡辺浄慶妙慶夫妻像、西教寺前田菊姫像など俗人肖像の系譜も本展文脈にこそ合致。追善の文脈構築のために死のさまざまなイメージも提示し、極楽寺六道絵(重文)や、病草子や平治物語絵巻ほか断簡類の小品を多数選択。武人俑や埴輪など中国・日本の副葬品を並べるなど、コレクションの有効活用を図る。借用資料を中心に一部資料を掲載した図録あり(32ページ、800円)。
7月27日
中之島香雪美術館
企画展 唐ものがたり 画あり遠方より来たる-香雪美術館所蔵の中国絵画-
(6月17日~7月30日)
同館所蔵コレクションの中から、中近世の段階で日本に伝来していた唐絵(中国・朝鮮の絵画)を選んで展示するとともに、そうした唐絵に影響を受けた日本の作品をあわせて紹介。因陀羅筆維摩居士図(重文)、明・正徳8年(1513)賛ある魚籃観音図(君裾が揺れる表現あり)、伝呂紀筆花鳥図、伝除煕筆蓮池水禽図、伝笵安仁筆魚面図、祥啓筆楼閣山水図、狩野元信・狩野永徳筆四季山水図屏風など。伝夏珪筆蟹図・鯰図は高野山宝亀院旧蔵、伝呂紀筆花鳥図は高野山常喜院旧蔵で、高野山上の子院が世俗画も含めた唐絵(と見なされた作品)の集積地であることをうかがわせる(中国・朝鮮の仏画も多い)。図録なし。全資料写真撮影OK。
8月1日
高野山霊宝館
宗祖弘法大師御誕生1250年大法会記念展 お大師さまから・お大師さまへ 3期
(7月15日~8月27日)
弘法大師生誕1250年を記念して、大師ゆかりの手蹟や唐請来品と御影堂への寄進資料を展観し、あわせて空海伝を絵巻や肖像ほかを活用して紹介。諸尊仏龕(国宝)、飛行三鈷杵(重文)、崔子玉座右銘断簡(重文)、遍照光院一字金輪曼荼羅図(重文)など。丹生・狩場明神像(重文)、山水屏風(重文)は露出で間近に鑑賞でき眼福。ほか五大尊幷千体不動明王像(室町時代)は初見資料。図録なし。
8月4日
なら歴史芸術文化村
企画展 すごいぞ!レプリカ-文化財を未来に伝える-
(7月15日~10月15日)
同館が作製・保管する文化財レプリカや模型類を軸に、文化財の維持継承や情報伝達手段などさまざまな場面で活用されるレプリカの多様な目的と可能性を紹介。奈良県立大学地域創造研究センター作製の長谷寺本尊十一面観音立像の全身計測データを元に出力された3Dプリンター製レプリカは(約30分の1ほどの縮尺)、現地では膝上から下が見えないため、その全身像の初めての公開で、同像研究をする研究者として感動のご対面。金峯山寺所蔵の仁王門安置金剛力士像の縮尺模型も3Dプリンター製(東京芸術大学作製)。美術院による修理に際して検討するためのモデルとして作製、活用。会場内では和歌山県立博物館と県立和歌山工業高校他の連携によるお身代わり仏像作製事業を紹介する動画も紹介。展示鑑賞をサポートする『ワークつき!ハンドブック』(A5判、22ページ)を無料配布。会場内掲示のコラムパネルも収載。
8月5日
天理大学天理参考館
インドのヒンドゥー世界
(7月12日~9月4日)
同館に収蔵される世界の民族資料群のなかから、ヒンドゥー教にかかわる資料を集約して紹介。マトゥラー伝来の仏頭(3c)、弥勒菩薩もしくはジナ頭部(2c)、仏坐像(3c)など初期の仏像群から近現代の宗教画や信仰道具まで約50件を展示。10世紀のサプタ・マートリカー(七母神)、13~14世紀のラクシュミーほか時代も地域もさまざまな重要なコレクション。常設展示の北魏の獅子や、興福寺伝来慶長17年(1612)銘獅子優填王絵馬なども見て回る。図録あり18ページ、550円)。
8月8日
石川県立歴史博物館
特別展 いしかわの霊場-中世の祈りとみほとけ-
(7月22日~9月3日)
石川県内の聖地や霊場を、仏像や古文書、考古資料など信仰に関わる資料を用いて復元的に提示。明泉寺秘仏本尊千手観音立像(10c)、石動山天平寺地蔵菩薩立像(10c).翠雲寺弥勒菩薩坐像(11c)など古様で風格のある仏像を間近に拝めるありがたさ。承元2年(1208)銘を有する志賀町高爪神社薬師如来坐像も、聖地高爪山についての情報とともに見るとその重要性が際立つ。常設展示に同じ志賀町の意冨志麻神社(宗像三神祭祀)の、宝徳2年(1450)銘本地仏菩薩形坐像2躯・不動明王坐像も展示(図録未掲載)。羽咋市福永ヤシキダ遺跡出土資料(三鈷鐃、錫杖頭ほか)や金沢市千田北遺跡出土の笠塔婆も興味深い資料。論考多数の図録あり(146ページ、2200円)。
国立工芸館
所蔵作品展 水のいろ、水のかたち展
(7月7日~9月24日)
館蔵資料から水に関わる作品を集約して夏にふさわしい涼やかなテーマを構築。水そのもののさまざまなデザイン化にとどまらず、水を入れる機能、水のある風景など、テーマーを広範に捉えて焼物、ガラス、織物から人形までバラエティに富む内容。ガラス製品を露出展示(テグス固定)するのもヒヤッと涼しい。図録あり(16ページ、無料)。
金沢能楽美術館
企画展 面に酔う-後藤祐自・能面の宴-
(4月22日~8月27日)
現代を代表する面打の1人であり、能面修復も広く手がける後藤祐自氏の作品と、金沢市域の神社に所蔵される近世の装束ほかを紹介。本面の写しは、元面の彩色再現に優れて風格をも写している一方で、各解説に付けられた自らの言葉を見ると、とてもかなわない、難しい、といった抑制的なコメント。誠実。図録なし。
福井市立郷土歴史博物館
特別陳列 福井の里山・文殊山ゆかりの神仏
(7月27日~9月3日)
古代の東大寺領糞置荘に接し、福井市と鯖江市にまたがる文珠山の聖地のあり方と周辺地域の信仰史を、考古資料と多数の仏像・神像から浮かび上がらせる意欲的な展示。ずらり仏像神像が並んだ圧巻の展示室の中で一際目を引く鎌倉初期の十一面観音坐像は奈良仏師の作(HP・チラシ等に図版なし)。重要資料。県指定の鎌倉中期ごろの弘法大師坐像も凛々しく堂々とした優作。先般ご開帳が行われた二上観音堂の十一面観音立像(重文)はパネルで紹介。A4・4ページの解説シートあり。
8月9日
福井県立若狭歴史博物館
若狭・麗しの密教世界一ようこそ密厳浄土へ
(7月29日~8月27日)
若狭地域の寺院に伝わる仏画を多数集めて密教美術を詳しく紹介。重文3件、県指定10件を含む中世資料25件31点を展示。萬徳寺の弥勒菩薩像(鎌倉時代・重文)や、画面上部に九曜を描き文殊と四天王を配した珍しい文殊菩薩像(鎌倉時代、県指定)、羽賀寺の一具同作の両部曼荼羅、四大明王、十二天像(室町時代後期、県指定)をずらり並べて灌頂の堂内空間をイメージするなど、密教を体験的に伝える。仏像では円通寺観音菩薩立像は胴を絞って裙裾をあげた軽やかな立ち姿の10世紀彫像。若狭を密教から見るという視点を提示する意欲的な展示。図録なし。
愛知県美術館
企画展 幻の愛知県博物館
(6月30日~8月27日)
明治時代初期、各地の博覧会ブームのなか設立され、その後展示機能を引き継げず忘れられた「愛知県博物館」について、その時代相とともに復元的に紹介する。民間からの寄附金を集めて当初会社として建て、のちに県立としたもので、殖産興業に比重をおいた物産館・商品陳列観の性格を有する博物館であったことを、関連書籍や旧蔵資料を集めて紹介。図録あるが予約販売で会期末ごろに刊行予定(ページ数不明、1500円)。
8月11日
かつらぎ町笠田公民館佐野分館
み仏のおめしもの
(8月9日~8月13日)
町内に伝わる仏像の魅力を身近に知ってもらうことを目的に、服装に着目して仏像仏画を公開。無量寺阿弥陀如来坐像(県指定、12c)、真明寺観音菩薩立像(11c)、愛染明王坐像(17~18c)、釈迦十六善神像、両界曼荼羅を展示。またあわせて公民館すぐそばの佐野寺跡の紹介として、出土したセン仏や瓦、石製鴟尾など紹介。佐野寺は日本霊異記中巻11話の狭屋寺の可能性ある飛鳥時代後期建立の古代寺院。図録なし。
8月19日
紀の川市歴史民俗資料館
企画展 戦前・戦中の記録
(7月19日~8月20日)
第二次世界大戦時に徴兵され戦地に赴いた青年の資料などから、戦前の教育や軍事教育、戦地でのようすや銃後のくらしを紹介。軍事郵便はがきの文面や、戦死した友人を悼む手紙を同行した娘と読解しながら読み込む。
8月25日
神戸市立博物館
特別展 神戸の文化財Ⅲ -今伝えたい、私たちの宝・街・心・技-
(7月22日~9月10日)
神戸市域所在の重要資料を多数集約し、文化財継承の意義を語りかける内容。太山寺四天王立像、温泉寺黒漆厨子の後壁と扉の平安仏画、綱敷天満宮の伎楽面を堪能。図録あり(80ページ、2000円)。同時開催のコレクション展示「信仰と美を伝えるもの-聖なる文化財-」では破損甚大ながら美麗な截金が残る平安末期の太山寺不動明王像や、本紙部分のみがまくりで残る須磨寺の両部種子曼荼羅など展示。
8月30日
川原寺
おかえりセン仏-夏期特別公開-
(8月1日~8月31日)
終了間際に滑り込み。川原寺裏山遺跡より出土した、川原寺創建期の堂内に張り詰められていた7世紀のセン仏を、意外なことに初めて寺内で公開する貴重な機会。遺物の中に含まれていた平安時代初期の銭貨から、そのころに大規模な火災が発生し、焼けた仏体やセン仏のうち原型を留めたものを選別して拾い上げ、埋納したとみられるもの。展示では出土した塑像片や銭貨、金具類も紹介。向かいの橘寺経堂内のケースに展示されたセン仏断片も拝観。
9月3日
岡山県立博物館
特別展 慈悲のほとけ-観音と古寺の名宝-
(7月28日~9月3日)
最終日に滑り込み。中国観音霊場会の特別協力による展覧会で、観音信仰に関わる資料を軸に、岡山県だけでなく中国地方の仏教美術を集約し公開する。鳥取・大山寺の白鳳時代銅製観音像2躯、特徴的な髻の岡山・法界院聖観音菩薩立像、鳥取・三佛寺の十一面観音立像や蔵王権現立像、広島・浄土寺南無仏太子像、山口・般若寺聖僧坐像などなど、彫刻多数。絵画では山口・龍蔵寺の四天王図鎗金絵扉は元時代にチベット密教由来の図像により沈金技法により描かれたもので、作者銘を伴う。頂相では島根・雲樹寺の三光国師孤峰覚明像は正平25年(1370)の賛あり。ほか広島・西国寺の梵釈四天王五鈷杵鈴、錫杖頭など舶来の工芸品も紹介。図録あり(104ページ、1500円)。
おのみち歴史博物館
新指定文化財公開展-調査してみたら・すごいぞ尾道の仏様!
(9月2日~11月5日)
おのみち歴史博物館に初訪問。平成28年度より継続して進めている、新たな尾道市史の「文化財編(下巻)」編纂のための美術工芸品調査によって把握された多数の重要資料の中から、彫刻・絵画資料を紹介。11世紀の西国寺吉祥天立像、12世紀の正念寺聖観音菩薩立像、14世紀の持光寺阿弥陀如来立像など彫刻5体と、類例のない特殊な図像の宝冠阿弥陀三尊来迎図(13~14世紀)を紹介。尾道の仏教美術は本当に水準が高い。市史文化財編は建築等を収載する上巻が刊行中。下巻の刊行が待ち遠しい。彫刻資料5件を紹介したリーフレットあり(無料)。館を後にして浄土寺を訪れ、境内丹生高野明神社にて高野山と尾道のつながりに思いをはせる(高野山領大田荘の倉敷地)。
9月6日
和歌山県立博物館
企画展 法燈国師−きのくに禅僧ものがたり−
(9月2日~10月1日)
法燈国師無本覚心とその弟子たち(法燈派)の紀伊国による活動や痕跡を示す、最新の研究成果に基づく多数の新資料を含む54件の文化財を展示公開。法燈国師の展示としては50年ぶり。法燈国師像としては新出の三重・大通寺本(南北朝時代)、興国寺の慶長2年銘版木など。新資料や重要資料はパネルでも紹介。彫像では観福寺二十体羅漢像が、宋代と想定される特徴的な表現の羅漢群像であり注目される。法燈国師が入宋時に入手し、帰国時に風難に遭った際、20人の羅漢により救われたとする伝承あり。担当する坂本亮太氏の科研「鎌倉末~室町期における臨済宗法燈派の動向に関する基礎的研究」の報告書兼図録(96ページ、無料)あり(ただし配布は小部数で館内のみ)。
9月9日
高島屋史料館
万博と仏教-オリエンタリズムか、それとも祈りか?-
(8月5日〜12月25日)
万博における仏教的要素の取り扱われ方の展開を紹介。万博や各種博覧会における日本の仏教文化紹介のあり方(オリエンタリズム)と、1970年大阪万博における仏教国のパビリオンにおける信仰要素の提示を対比し、アジア初の大阪万博で仏教表象が信仰と切り離さず提示されたこと、戦争死者への祈念があったことを指摘。ラオス館及び本尊釈迦如来立像(現・長野県昭和寺に移築・移座)ほか大阪万博の仏教系施設のその後の継承についても紹介。図録なし。和光大学君島彩子氏の監修。同じく監修の「陶の仏-近代常滑の陶彫-」は高島屋史料館TOKYOにて9月16日から開催(~2月25日)。
9月17日
靖国神社遊就館
教育懇談会(学資出資者向け講演会+相談会)の校務のため上京。校務開始より早く市ヶ谷に着いたのですぐそばの靖国神社に行き遊就館初訪問。武器・武具・戦争資料及び戦没者顕彰・追悼展示施設としての位置づけを把握。帝国主義国家による東アジア解放というプロパガンダに基づき構築された戦争史展示に面くらいながら、心の中で切り離して膨大な戦争犠牲者の遺影を拝する。時間なくて特別展見られず。
静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
あの世の探検−地獄の十王勢ぞろい
(8月11日~9月24日)
校務が予定より30分はやく終わり、タクシー拾って駆け込む。豊富に所蔵する館蔵仏教美術の中から近時修復した仏画を中心に選んで展観する。元〜明の十王図・二使者図は、高麗時代の被帽地蔵を中幅として13幅をずらり並べる。表具は13幅とも共通し、近世段階では現在の取り合わせになっていたもよう。圧巻の空間は撮影可で、ありがたく表具のようすを一部撮影。高麗仏画ではほかに水月観音像と、雲中より半身を湧出させる苦行釈迦像も高麗と位置づける。美麗な千手観音二十八部衆像、普賢菩薩騎象像(重文)をじっくり鑑賞。初公開の兜跋毘沙門天立像は10世紀作例。地天女と雲気文をあらわす台座も古いもの。なんと曜変天目(国宝)も並ぶ。図録あり(48ページ、1500円)。
東京ステーションギャラリー
春陽会誕生100年 それぞれの闘い−岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ
(9月16日~11月12日)
「各人主義」のもと画風さまざまな著名作家の集まりである同会の足跡を作品からたどる。岸田劉生《近藤医学博士之像》(神奈川県立近代美術館)、中川一政《駒ヶ岳》(真鶴町立中川一政美術館)、三岸節子《自画像》(一宮市三岸節子記念美術館)、木村荘八《私のラバさん》(愛知県美術館)、鳥海青児《セリスト(B)》(平塚市美術館)、岡鹿之助《観測所》(静岡県立美術館)などなど、各地の美術館の目玉作品が集まって見応えあり。タイトルの「闘い」には展示構成上は特に踏み込んでいないもよう(見落としただけかもしれない)。図録あり(235頁、2750円)。
高島屋史料館TOKYO
陶の仏−近代常滑の陶彫
(9月16日~2月25日)
コンパクトな室内に常滑の職人たちの手になる陶器の仏像がずらり並ぶ。鯉江方寿が開設した常滑美術研究所、その後設立された常滑陶器学校(現愛知県立常滑高等学校)にて学んだ多くの陶彫家のなかから特に柴山清風に注目し、その生涯を通じての観音像制作を紹介。清風の普賢菩薩騎象像や十一面観音立像には著名な(写真のある)仏像を本歌取りしていることが見受けられ、作家性(個人様式)が前に出ないところがある。祈念や鎮魂を目的に観音像制作を続けた「陶の仏師」。和光大学君島彩子氏監修。図録なし。
10月
11月
12月
1月
2月
3月